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2章: 騎士団長の娘
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物盗りが物色した跡。
部屋の惨状を一言で表現すれば、そういうことになるだろうか。
部屋の各所で開かれたままになっている書物。
ベッドに無造作に放り投げられた衣服。
棚のわずかな置き場には洗ってすらいないマグカップやら菓子の食べ残しが。
ふと、部屋の片隅で小さくて敏捷な何かが駆けずり回る気配がする。
およそ女子の部屋とは思えないほど散らかった部屋は、片付けるのにどれほどの手間を要するか想像もつかない。
なお悪いことに、いないと思っていた部屋の主は勉強机にしがみつくようにして熟睡している。
「何て部屋だよ、おい」
手当たり次第に落ちているものを拾っては棚に戻し、明らかに汚れものとわかる衣類は洗濯に出すべく持ってきた台車に放り込んでいく。
イシルがそうやって部屋を行き来する間も、学生は起きる気配はない。
勉強家なのか、他の学生の部屋には当たり前のように置かれていた小物や調度品は少なく、その代わり魔導書や世界各地の紀行文などが代わりにスペースを占拠していた。
昨夜も徹夜で勉強をしていたのだろうか。
難解な魔法の指南書を読み続けて力尽きたと思われる彼女は、ストレートロングの茶髪に可愛らしいリボンを結んでいいた。
その利発そうな容貌からは、この散らかった部屋の光景など想像もできない。
勉強熱心なのは感心するが、用務員であるイシルに言わせれば生活態度も少しばかり改善してほしいものだ。
「何だ? これは」
ベッドの辺りを掃き清めるイシルは箒に何やら紐のようなものが引っ掛かったのに気が付いた。
引きずり出してみるとそれは下着。しかも何日分はあろうかという複雑で絡み合ったそれらが芋づる式にベッドの下から次々と現れる。
「な、何ということだ」
人は見かけによらないというが、まさに彼女がその典型例だろう。
結局、掃除の大半が終わっても彼女は起きなかった。
あとは本が乱雑に積まれた勉強机だけなのだが、こちらから起こすのもどうかと思う。
仕事柄、あまり学生と交流するなとエスマイアに忠告されていたのを思い出したからだ。
それにしても安らかな寝顔だ。
首が寝返りを打つと、絹のような柔らかい髪がさらりと揺れ落ちる。
こんな優しくて、いい匂いのする可憐な少女達と、命掛けの戦いを強いられるのか。
最初は羞恥心で感じていた抵抗感が、今は別の何かに変わってイシルの腹の底に溜まっていくようだった。
『アシェリー様、いらっしゃいますか?」』
ドアを強くノックした音にイシルは驚いて振り返る。
机で眠っていた学生がその背後で目を醒ました。
部屋の惨状を一言で表現すれば、そういうことになるだろうか。
部屋の各所で開かれたままになっている書物。
ベッドに無造作に放り投げられた衣服。
棚のわずかな置き場には洗ってすらいないマグカップやら菓子の食べ残しが。
ふと、部屋の片隅で小さくて敏捷な何かが駆けずり回る気配がする。
およそ女子の部屋とは思えないほど散らかった部屋は、片付けるのにどれほどの手間を要するか想像もつかない。
なお悪いことに、いないと思っていた部屋の主は勉強机にしがみつくようにして熟睡している。
「何て部屋だよ、おい」
手当たり次第に落ちているものを拾っては棚に戻し、明らかに汚れものとわかる衣類は洗濯に出すべく持ってきた台車に放り込んでいく。
イシルがそうやって部屋を行き来する間も、学生は起きる気配はない。
勉強家なのか、他の学生の部屋には当たり前のように置かれていた小物や調度品は少なく、その代わり魔導書や世界各地の紀行文などが代わりにスペースを占拠していた。
昨夜も徹夜で勉強をしていたのだろうか。
難解な魔法の指南書を読み続けて力尽きたと思われる彼女は、ストレートロングの茶髪に可愛らしいリボンを結んでいいた。
その利発そうな容貌からは、この散らかった部屋の光景など想像もできない。
勉強熱心なのは感心するが、用務員であるイシルに言わせれば生活態度も少しばかり改善してほしいものだ。
「何だ? これは」
ベッドの辺りを掃き清めるイシルは箒に何やら紐のようなものが引っ掛かったのに気が付いた。
引きずり出してみるとそれは下着。しかも何日分はあろうかという複雑で絡み合ったそれらが芋づる式にベッドの下から次々と現れる。
「な、何ということだ」
人は見かけによらないというが、まさに彼女がその典型例だろう。
結局、掃除の大半が終わっても彼女は起きなかった。
あとは本が乱雑に積まれた勉強机だけなのだが、こちらから起こすのもどうかと思う。
仕事柄、あまり学生と交流するなとエスマイアに忠告されていたのを思い出したからだ。
それにしても安らかな寝顔だ。
首が寝返りを打つと、絹のような柔らかい髪がさらりと揺れ落ちる。
こんな優しくて、いい匂いのする可憐な少女達と、命掛けの戦いを強いられるのか。
最初は羞恥心で感じていた抵抗感が、今は別の何かに変わってイシルの腹の底に溜まっていくようだった。
『アシェリー様、いらっしゃいますか?」』
ドアを強くノックした音にイシルは驚いて振り返る。
机で眠っていた学生がその背後で目を醒ました。
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