12 / 38
苛烈なる転職活動
7
しおりを挟む
どんな業種でも、会社の面接というのはほぼ同じパターンだ。
人一倍の採用活動を経験している私が見出した経験則である。
まず志望動機と前職の経歴、それに少し学生時代のことが訊かれる。
最後の質問は時間調整のためなのか、あまり仕事内容と関係のない余談程度のものが多い。
恋愛をしたことがあるか、なんて訊かれた時には吹き出しそうになった記憶がある。
親切に話をするこの社長ならば、どんな質問が飛び出すだろう。
「それで君、特技とかあるの?」
その質問が来るか。私は戸惑った。
履歴書のフォーマットにも記入欄があるが、私はこの手合いの質問が一番苦手だった。
資格ならば客観的に資格名や等級、習得年を書けば済む話だが、漠然と特技と聞かれると、何を書いていいのか逆に迷ってしまう。
一番無難なのは料理とかアウトドアスポーツだろうが、私に誇れる分野はない。
前の会社にはテニス部と野球部があったけど、私はこう見えて仕事一筋に打ち込んできたのだ。
それでもクビになったけど。
「ええっと・・・・・・」
誇張にならず、かと言って鼻から牛乳を飲むとか、そういうつまらない一発芸ではないような芸を考えてみる。
駄目だ。思いつかない。
「何か一つくらいあるでしょ?」
必死に頭を絞り出す私の目の前で、突然奥の部屋が開いた。
多分事務所になっていると思っていた部屋からさっきとは別の事務員の女の子が出て来て、給湯ポットを取りに来たのだ。
私が目を付けたのは彼女ではなく、その背後で何台も背を向けて置かれているデスクトップパソコンだった。
「あ、プログラミングが、できます・・・・・・」
プログラミングが出来るといっても、別にシステムエンジニアばりのスキルがあるわけではない。
ただ、エクセルのマクロを定義するVBAとかそんなツールで、計算を一度に集計するプログラムを上司から褒められたことがあった。
それ位しか、私には思いつかなかったのだ。
前の会社で帳票の仕分けとか、商品番号の記憶とか、そういうのはよく覚えられたけど、会社と無縁になってしまえばほとんど役に立たない無駄知識も同然だ。
パン屋で言う1ダースが実は13個だとか、亀の甲羅が実は肋骨だとか、そういう雑学よりも遥かに使い道がない。
そんなものを詰め込まされただけの労働者に、次の仕事なんかあるはずがないのだと、心のどこかで諦めかけているのかもしれない。
「え、プログラミングが出来るの?」
ところが社長は逆に目を輝かせた。
今から思えばその一言が、今後の私の運命を大きく変えたことになるわけである。
人一倍の採用活動を経験している私が見出した経験則である。
まず志望動機と前職の経歴、それに少し学生時代のことが訊かれる。
最後の質問は時間調整のためなのか、あまり仕事内容と関係のない余談程度のものが多い。
恋愛をしたことがあるか、なんて訊かれた時には吹き出しそうになった記憶がある。
親切に話をするこの社長ならば、どんな質問が飛び出すだろう。
「それで君、特技とかあるの?」
その質問が来るか。私は戸惑った。
履歴書のフォーマットにも記入欄があるが、私はこの手合いの質問が一番苦手だった。
資格ならば客観的に資格名や等級、習得年を書けば済む話だが、漠然と特技と聞かれると、何を書いていいのか逆に迷ってしまう。
一番無難なのは料理とかアウトドアスポーツだろうが、私に誇れる分野はない。
前の会社にはテニス部と野球部があったけど、私はこう見えて仕事一筋に打ち込んできたのだ。
それでもクビになったけど。
「ええっと・・・・・・」
誇張にならず、かと言って鼻から牛乳を飲むとか、そういうつまらない一発芸ではないような芸を考えてみる。
駄目だ。思いつかない。
「何か一つくらいあるでしょ?」
必死に頭を絞り出す私の目の前で、突然奥の部屋が開いた。
多分事務所になっていると思っていた部屋からさっきとは別の事務員の女の子が出て来て、給湯ポットを取りに来たのだ。
私が目を付けたのは彼女ではなく、その背後で何台も背を向けて置かれているデスクトップパソコンだった。
「あ、プログラミングが、できます・・・・・・」
プログラミングが出来るといっても、別にシステムエンジニアばりのスキルがあるわけではない。
ただ、エクセルのマクロを定義するVBAとかそんなツールで、計算を一度に集計するプログラムを上司から褒められたことがあった。
それ位しか、私には思いつかなかったのだ。
前の会社で帳票の仕分けとか、商品番号の記憶とか、そういうのはよく覚えられたけど、会社と無縁になってしまえばほとんど役に立たない無駄知識も同然だ。
パン屋で言う1ダースが実は13個だとか、亀の甲羅が実は肋骨だとか、そういう雑学よりも遥かに使い道がない。
そんなものを詰め込まされただけの労働者に、次の仕事なんかあるはずがないのだと、心のどこかで諦めかけているのかもしれない。
「え、プログラミングが出来るの?」
ところが社長は逆に目を輝かせた。
今から思えばその一言が、今後の私の運命を大きく変えたことになるわけである。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる