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しおりを挟む不動産関係の在宅勤務は、会社が休みの土日祝日はお休みだ。在宅なのでいつ仕事してもいいのだろうが、ラッセルは休みを取ったほうが効率良く仕事が出来ると言って土日は休むことにしているみたいだった。家にいて出来る仕事だとしてもらずっと働きっぱなしは疲れちゃうだろうしね。ゲーム配信はたまに土日でもコラボ配信とか誘われたらしてるようだった。
俺はゲームが下手だし、スマホも持ってないくらいの貧乏人だったから配信とかほとんど見たことなかったんだけど、タイセーとラッセルのゲーム配信はタイセーに譲って貰ったスマホで見るようになった。
タイセーはあのノリと勢いでゲームしながら喋りまくっていて安定の面白さがあって人気みたいだ。ラッセルの配信は、無表情のままなのに焦ったりゲームの状況が悪くなると、途端に早口になって喋り出すのでそれが面白いと話題になっていた。俺も見てて面白くて、クスクスと一人笑いながらゲーム実況を見ていた。
休みの話だが、俺は住み込みさせてもらってるし、家事代行だから年中休みなしのつもりだったんだけど、ラッセルが休みは必要だと言って聞かなかった。俺は要らないよって言ったんだけど。
なので、土日はラッセル同様に俺の家事代行もお休みだ。掃除は二日間くらいやらなくても埃もたまらない。まぁいつも、吸引と水拭きをしてくれるお掃除ロボットを稼働させているのでスイッチを入れるだけでいい。だからやってもいいとは思うんだけど、一度ラッセルに見られたら、月曜にしろと言われたのでそれからは土日には稼働していない。
洗濯もいつも二日くらい溜め込んで回しているのでどうってことはない。ちなみに、洗濯はドラム式の洗濯乾燥機。干す手間が省けて最高だ。仕分けも二人分を分けるのも楽だし、早い。俺は五人兄妹の両親合わせて七人家族だった。七人分の洗濯をして干して仕分けをして畳む、となると物凄い労力を使っていた。だから洗濯は大嫌いだったんだけど、ラッセルの家に住まわせてもらってから洗濯は好きだ。
この家の家電が最新式で、すごいものばかりなんだよなぁ。一度この贅沢を知ってしまうと、底辺生活に逆戻りした時の落差が酷過ぎて辛いだろうな。
朝ご飯は前日に買ってきたパンを食べるかその前日の残り物や作り置きしたものを食べることにしている。お昼と夜はデリバリーしたり、最近だと外食にも行くこともある。完全個室があるお店に予約していくのだ。近場の完全個室となると、ちょっとお高めのお店が多い。だけど、周りの目を気にしなくていいので一度行って良かったお店は何度もリピートしていくようになった。常連のお店になって、お店の人の態度も最初より慣れたものになり、ラッセルの中で外食のハードルが大分下がったようだった。外食を楽しみしてる様子さえある。そういう姿を見ると、俺も自分のことのように嬉しくなってほやほやと幸せ気分になる。
「はぁ……」
ラッセルが大きなため息を吐いてスマホを覗き込んでいた。
ラッセルがため息なんて珍しいこともあるものだ。仕事をしている時は無表情で黙々と作業をしてきるし、ゲーム配信の時はかなりおしゃべりでマシンガントークしながら騒いでいる。(配信用にわざとそうしている所もあるかもしれない)
ラッセルと過ごしてきてまだまだ短い期間だが、彼のことがわかってきた。ラッセルは喜怒哀楽が表情にはあまり出ないが、代わりに尻尾の主張が激しいのだ。嬉しいときは尻尾がしゅるしゅると元気にうねっているし、悲しい時や落ち込んでいる時はとぐろを巻いて元気がなさそうに萎れている。先っぽはとぐろの渦の真ん中に埋もれて見えなくなる。
今尻尾は落ち込んでいて元気がなさそうだ。
「ラッセルどうしたんだ?」
ラッセルの隣に座ると、聞いてくれるのか、と尻尾が腕に巻きついてくる。
「俺の家族なんだが、早く身を固めろ結婚しろ子どもを作れとうるさくてな。家族からの連絡が途絶えない」
「そうなんだ、大変だな」
この前妹さんが来ていて、叫んでいた内容を知ってしまっていたから驚かなかった。でもラッセルの口から子どもだとか結婚という言葉がでてきて、それがさらに現実味を帯びた。
子ども……。
ラッセルはいつか子どもを持つんだ……。
そんなことを考えたこともなくて、ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。
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