【BL】できそこないΩは先祖返りαに愛されたい

ノルジャン

文字の大きさ
43 / 58

18-2

しおりを挟む
 自分で考えてもなにも答えはでなくて、ふと、スマホを取り出した。連絡先にはタイセーとラッセルの二人しか入っていない俺のスマホ。

 俺はタイセーの電話番号の通知ボタンを押した。

『もしもし、イチロか?どうした?』
「タイセー、いきなりでごめん。あのさ、……変なこと聞くんだけどさ、男同士で抜き合うのは、普通……だよな?」

 ラッセルは普通って言ってた。ラッセルが俺にそんな嘘つくはずがないよな?
 
『ほ、ほんとにいきなりなんだよ。一体どうした?』
「いいから答えてくれ。頼むよ」
『えーと、……あー、うー……抜き合うって、あのぉ~……のことか?一緒に、ぉ、オナニーし合うみたいな意味?』
「……うん、そう」
『あー、……いやぁ、それは普通では……ない、かなぁ』

 ああ、やっぱ普通じゃないんだ。あの行為は全て普通じゃなかった。
 
「そっか、ごめん変なこと聞いて。教えてくれてありがとう」
『あ、待て、イチロ。それってラッセルとのことだったら、あいつはお前のことっ……』
 
 ブチっと電話を切った。

 性欲処理かぁ。辛い。辛すぎるよ。
 俺はただの性欲処理の相手だったんだ。

「俺はラッセルのことこんなに好きなのに……。片思いって辛いな……あはは」

 一人道の端っこで丸くなって無理に笑う。
 
「うっ……ぐずっ……ひっく、うぅッ……うわぁぁああッ!」

 涙は止めどなく流れて、ずびずびと鼻水もひどくなった。声を出してわーっと思い切り泣き喚いた。
 もうラッセルと一緒にはいられない。顔も合わせられない。


 

 
 涙が落ち着いたころ、買い物もせずに部屋に戻った。自分の荷物をまとめて家を出ようとすると、ちょうど玄関を出ようとするところでラッセルに見つかってしまった。

「イチロ……どこにいく?そんなに荷物を持って」
「もう、ここを出ていくよ。これ以上ここで働いてはいられない」
「ちょっと待ってくれイチロ。……な?!どうしたんだ!その頬……腫れてるじゃないか。誰かに殴られたのか?」

 隠し切れない腫れ上がった顔を見咎められてしまった。

 誰かに殴られたのかと言われた時に、俺は奪われた食費の十万円のことを思い出した。あれはラッセルに返さなければ。

「ラッセル、ごめん。食費の十万はちゃんと振り込んで返すから……」
「食費の十万?何で今そんな話を…、まさか、盗まれて?ひったくりにでもあったのか?!」

 警察に、とスマホを取り出そうとするラッセルを必死で止めた。

「やめてくれ!違うんだ……」

 余計なことを言わなければよかった。全然冷静でいられなくて、落ち着いたと思っていたけれどまだまだ動揺していた。

「違うってなにがだ?盗っ人に殴られたんだろう?だからこんなに腫れて、口の端が切れているじゃないか」
「違う……違うんだ。弟なんだ。弟にお金を貸した。だから、ひったくりとかじゃない」

 例え仲が悪くても嫌われていても、血の繋がった弟なのだ。警察を呼ばれて捕まるなんてことになったらと思うと怖くなった。

「弟って、だが……」
「これは俺が自分で転んだんだ。俺っておっちょこちょいなとこあるだろ?」
「……この腫れ方は転んだものじゃないだろうが」
「お金はちゃんと返すから、だから警察にはっ……」
「…………わかった。お前がそれでいいならもう何も言わない。だが、イチロ、ちゃんと話をしないか。俺たちのことを」

 ってなんだよ。何も話すことなんてないのに。

「俺たちに話すことなんて、何もないだろ」
「いや、俺たち……俺にはあるんだ。だが、まずその傷の手当をしよう。こっちに来てくれ」

 ラッセルは俺の手を引いてリビングへと向かった。腫れた頬を冷やすものを持ってきてくれ、薬箱を取り出して切れた口の端に薬を塗って絆創膏を貼ってくれた。
 そして俺に向き直って真剣な顔で語り始めた。

「タイセーから連絡があった。男同士の、抜き合いは普通なのか聞かれたって。イチロ、すまない、俺はお前に嘘をついた。男同士であの行為は普通なことじゃない」
「いや、そのことはもういいんだ別に……。ホント俺、馬鹿だからさ!そんなことも知らなくて、ははは……そんな、普通のことを知らない俺が、わる、悪いん……わるかった、んだから、さっ………」
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

当たり前の幸せ

ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。 初投稿なので色々矛盾などご容赦を。 ゆっくり更新します。 すみません名前変えました。

さかなのみるゆめ

ruki
BL
発情期時の事故で子供を産むことが出来なくなったオメガの佐奈はその時のアルファの相手、智明と一緒に暮らすことになった。常に優しくて穏やかな智明のことを好きになってしまった佐奈は、その時初めて智明が自分を好きではないことに気づく。佐奈の身体を傷つけてしまった責任を取るために一緒にいる智明の優しさに佐奈はいつしか苦しみを覚えていく。

αからΩになった俺が幸せを掴むまで

なの
BL
柴田海、本名大嶋海里、21歳、今はオメガ、職業……オメガの出張風俗店勤務。 10年前、父が亡くなって新しいお義父さんと義兄貴ができた。 義兄貴は俺に優しくて、俺は大好きだった。 アルファと言われていた俺だったがある日熱を出してしまった。 義兄貴に看病されるうちにヒートのような症状が… 義兄貴と一線を超えてしまって逃げ出した。そんな海里は生きていくためにオメガの出張風俗店で働くようになった。 そんな海里が本当の幸せを掴むまで…

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

処理中です...