俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第4章

避けては通れぬもの。

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「レオナルド、急で申し訳ありませんが...」
「翌週の稽古の日を変えてもよろしいでしょうか?」

フィオは最近とても忙しそうにしている。
その合間を縫って稽古をつけてくれていたのだが
伯父の新刊プロモーションで各地の書店を回っていて
どうにも都合がつかなかったらしい。

「大丈夫だよ。忙しいのにいつもありがとう」
「いえ。私がそうしたくてしている事なので...」

「ヒィ...やっとおわった...(ドスンッ)」

げっそりとした伯父がテーブルにハガキ?を乗せる。
大量にあるけどなんなのだろう...

「それは購入者特典のサイン入りポストカードです」
「今はファンサービスも大切なお仕事ですから」

敏腕なマネージャー兼プロモーターのおかげで
新刊は増刷が追いつかない勢いだ。
彼女が来てから伯父は本当に有名になったと思う。
さすがウォーリアなだけあって戦い方を知っている。

「フィオ...せめて握手会はもうやめにしないか...」
「手の皮が擦り剥けてしまいそうだよぉ...」

「......駄目です」

非常な一言に打ちのめされる伯父。
可哀想にも思えるが普段の彼女の方がよっぽどだ。

出版に関する取り次ぎから装丁の打ち合わせ
作品に合った絵師への依頼、原稿のチェックまで
全部任せきりなのだから仕方がない。
握手会くらいで泣き言が言える立場ではないのだ。


俺は教授の所へお礼をしに行っていなかったから
急にできた休みを使って西の森に行く事にした。

「西の森ですか.....もう大丈夫なのでしょうか...」
「今は討伐済みだからモンスターは出ないよ」
「着いたら連絡も入れるから」

西の森と聞くと俺もまだトラウマが残るけど
避けてばかりでは前に進めない。
それにこの前の時フィオと“約束”したのだから
どんな状況でも安全を第一に考える。
絶対に無理はしない。

「帰ったらすぐフィオに会いに行くね(キラッ)」

言った後になんだか恥ずかしくなった。
これじゃ恋人同士の会話みたいだ...
 
「いつまでだって待ってるぞぉ~!」
(...オメェに言ったんじゃねえよっ!)


それから3日後。
今日から一泊二日で西の森の研究所へと向かう。
教授に事前連絡を入れたら大喜びしていた。

“1分でも1秒でも早く来て欲しいっ!”
“ブルーに迎えに行かせるから!”

...こわい。
研究者って変わり者が多いとは言うけれど。
まあ、前みたいに嫌われるよりかはいいか。

今日は西地区担当のオーサーが配達に出るから
ついでに村まで乗せてもらった。
とはいえもう森に入るには遅すぎる時間。
宿屋に一泊して明日の早朝に研究所を目指す。

カレンは野営じゃなくてつまらなそうだけれど
今回は冒険じゃなくて“お礼返し”だからね。
安心できる白いベットの上で眠ろう。

「ねえレオ、またモリジカにあえるかなー?」
「どうだろうね。いるといいね」

この前の戦闘でポッカリ草原は荒れてしまった。
毒も振りまいていたし、もう居ないかもしれない。
本当に美しい草原だったから
俺はカレンを傷つけたくなくて曖昧に答えた。
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