俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第1章

働き者は朝が早い。

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翌朝。
カシャカシャと食器が当たる音がした。
昨日後回しにした洗い物を
ウェザーが片付けてくれていたのだ。

「ウェザー、ありがとう」
「おはようございます。レオ」

“あの日”から一人暮らしをしていたから
朝起きて誰かいるのは新鮮だな。

朝の光にキラキラとブロンドが輝いている。
落ちてきた前髪を耳にかける仕草に
思わずハッとしてしまった。

「どうかしましたか?」
「いやいや、何でもないよ。ハハ」

笑って誤魔化した。
その言い回しが伯父に似てしまい
なんだか残念な気分になる。

朝食に昨日のスープの残りとパンを食べて
今日はこれから仕事に行く。

昼食も無いし
一人で留守番させるのも無責任だから
仕事場に連れて行くことにした。

服装を気にして嫌がったので
季節外れの青い防寒用マントを着せて家を出る。

しばらく歩くと表通りに出て
赤い屋根の地下と一階がケニーの店だ。

「おはようケニー」
「レオナルド早くっ!今日は荷物が多くって...」

ケニーは運び屋をやっていて
この辺りの配送を一挙に取り仕切っている。
頼れるお姉さん役だ。
いつでも忙しそうにしている。

「...って誰この可愛い子っ!」

ケニーの作業の手がピタッと止まる。
ウェザーはまた人見知りして固まっていた。

「紹介するよ。精霊のウェザー」
「名前はまだ考え中だから、とりあえずそう呼んで」

「アンタ、絶対に一生分の運を使い果たしたね!」

なぜか大笑いするケニー。
ウェザーの価値を知っているようだ。

ケニーがマントを脱ぐよう促すと
ウェザーは首を振って頑なに拒否した。

事の顛末を彼女に話すと
事務所から女性用の制服を持ってきて
奥の部屋で着替えさせる。

ちなみに普通の服は着用できたりする。
譲渡や購入が出来ないのは特殊能力のある物のみで
それ以外の魔力を含まない物は対象外だ。

能力以外の違いとして決定的なのは
普通の服だと魔力オフで実体化しない時などに
一緒に透明化する事が出来ない事。
つまりはいちいち着替える必要があるのだ。

ケニーと一緒に出てきた。
「どう?良い感じじゃない?」

茶色と白の制服に
髪の毛はポニーテールにまとめてある。
それと“大きなリボン”は腰に付け替えられていた。

クルッと一回転してみせる。
ウェザーは気に入っているようだ。

「制服も着た事だし、ウェザーちゃんも働く?」
それを聞いてケニーにおどけて敬礼する。
意外にもウェザーは乗り気だ。

彼女の事は預けて
俺は山のような荷物を地下に運んだ。
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