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第1章

激レアの後は暫く来ない。

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「いらっしゃい。どうも」

アイテム屋の店主は見た目強そうだが
恐い人とかじゃない。
ウェザーが俺の陰に隠れようとするのは
初対面だからしょうがないか。

返却したいアイテムを“ポッケ”から取り出す。
中級のドゥドルもフロアに出した。
あとピッピィ。ひとたび外へ出すと鳴き声がうるさい。
なにせ八匹もいるのだ。

「ピッピィ~♪」
違う。今のはウェザーの声。
小さめのピッピィを抱きしめている。

「邪魔しちゃダメだよ」
「ピッピィ~♪ピッピィ~♪きゃわわぁ」

とても気に入ってしまったようだ。
温かくてヌイグルミのようなふわふわ感。
ギュッとしても掴んでも「ピッピィ」としか言わない
なんとも安全な奴だ。

ただ冒険者にとっては厄介者。

1.倒そうと攻撃すると
「ピッピィ...(どうしてそんなに酷いことするの...)」
って感じで見つめられ、やりづらい。

2.実体化した状態だと夜中でも甲高い鳴き声をあげる。

3.それを怒ると
(...ピッピィは静かに踊っている) シュッ....シュッ....
「気になって寝れねーよっ!!!」

と、まあこんな具合だ。
野営した冒険者がそれで発狂して行方不明とか
よく聞く都市伝説だったりする。

今も “私達売られちゃうの?” なんて顔をしているが
無視をするのが一番だ。

「ハイチユーとドゥドル一匹と魔石が12個、ピッピィが...」

バッ...ウェザーが店主の前に立ちはだかる。
「おいダメだって。お別れして」
首をブンブン振って嫌がる。

店主は俺のところに来て耳打ちした。
「...彼女、女神さんだろ?怒らせないほうがいいよ...」

女神は怒らせると恐い。
確かにこれもよくある都市伝説だが...

一時間ほど説得したが
駄々をこねる彼女に俺は根負けした。

“ポッケ”の中に仕舞っておいた空の“ポッケ”を取り出し
ピッピィを入れて彼女に手渡す。

「これはウェザーのにするから、ちゃんと管理する事」
「うんっ」

結果、石が三つと300コインに変わった。
あれは一匹5コイン位にしかならないからまあいいや。

家に帰っても今日はガチャを回さない。
激レアの後は暫く当たりが来ない事は結構有名な話だ。
だから次は少し時間を空けてから挑戦する。

帰り道の途中でウェザーが森に寄ると言う。
しばらくすると制服の前掛けいっぱいに
キノコや葉っぱを集めて来た。

「食べられるのか?それ」
「たべられるよ~!」

普通は毒があるか判別が難しいから
市場とかで買ってくるのだが
さすがは自然を司る精霊だけあり
なんとなくでそれが判るらしい。

食べ切れないほど沢山採ってきたのは
“ピッピィの分だから”と言っていた。
(食べるのだろうか...)

それでまた今日もキノコのスープを作って食べた。
初めて食べるキノコだがとても美味しい。
ウェザーのおかげで食料にだけは困らなそうだ。
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