俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第2章

乙女心は複雑なものだ。

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毎晩ウェザーは洗濯をする。
あれから彼女は仕事の日以外でも制服を着ている為
夜洗ってまた朝着る感じだ。

乾かなそうな気もするだろう。
そこはまだレベルの低い彼女が唯一使える魔法
“コンディショニング”によって乾燥を上げる事で
見事に朝までには乾いてしまうのである。

(しかし俺の喉は毎朝キリキリと痛むのであった...)

今日は仕事帰りに伯父の屋敷へと向かった。
フィオから晩御飯のお誘いが来たからだ。

ウェザーは仕事中も終始にやけていた。
今もそうだ。なんだか浮き足立っている様子。

「なに。どうかしたの?」
「んー?....な~んでもないっ!」

わかりやすい性格だな。
間違いなくこれから何かあるのだろう。

カンカンカン.....
ノックするとゆっくりとブロンズの扉が開いた。

「こんばんはレオナルド。時間通りでしたね」
「どうぞ中へお入りください」

成功者の家には広い食事専用の部屋がある。
もちろんこの屋敷も然り。
そしてシェフを雇うのが常だ。

「レオナルド様、ようこそお越しくださいました」

魔術料理のエキスパート、クライフさん。
こんな堅苦しい仲ではないが
いつもワザとおどけて畏かしこまる。

「先生、私はこれで外れます」
「あいよ。もうこっちも片付いてるし」

フィオが先生と呼ぶのは料理の師だからで
日々お菓子や料理を学んでいるのだとか。

「レオナルド、ウェザーを借りてもよろしくて?」

なぜか彼女まで畏まった言い方をする。
しかも謎の笑みを浮かべながら...
訳も分からぬまま二人は去って行った。

「なんなんですかね...あれは」
「乙女心とはなぁ~複雑なもんなんだよ」

クライフさんはそう言って厨房へと戻り
俺は夕食の皿を並べるのを手伝った。

ドンッ!バタンッ!
「諸君!!今宵の宴を始めようじゃないか!」

玄関の方から無駄に大きな声が聞こえた。
伯父が帰ってきたようだ。

「マスター、まずは着替えてきてくださいね?」
「面倒だからこのまま...イデデ...わかったって...」

遠くでフィオに怒られている声が聞こえる。
いい年して何やってるのだろうか...

「今フェルナンドも行きますので」
「先に席でお待ちくださいね」

彼女は部屋に一度顔を出すと
そう言い残してまた出て行った。

食事の準備も整い
あとは二人が来るのを待つだけなのだが.......

「お待たせしました!!」

声と共に部屋の扉が開くと
素敵なドレスを纏った二人がいた。

「これは一体...」
「イイね!イイね~!女神っぽくて!!」

いつもと違う姿に俺は目を丸くしてしまった。
伯父のはいつものテンションだが。

「ウェザーさんがデザインして私が作りました」

(俺が調べている間にそんな事を...)
魔装束のない事を相当気にしていた彼女の為に
生地からドレスを仕立ててくれたのだ。
フィオは本当に優しいお姉さんだな。

「さあ、いただきましょうか」

ウェザーがドレスを汚すまいと慎重に食べている。
ぎこちない所作が可笑しくて皆で笑った。
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