15 / 92
第2章
乙女心は複雑なものだ。
しおりを挟む
毎晩ウェザーは洗濯をする。
あれから彼女は仕事の日以外でも制服を着ている為
夜洗ってまた朝着る感じだ。
乾かなそうな気もするだろう。
そこはまだレベルの低い彼女が唯一使える魔法
“コンディショニング”によって乾燥を上げる事で
見事に朝までには乾いてしまうのである。
(しかし俺の喉は毎朝キリキリと痛むのであった...)
今日は仕事帰りに伯父の屋敷へと向かった。
フィオから晩御飯のお誘いが来たからだ。
ウェザーは仕事中も終始にやけていた。
今もそうだ。なんだか浮き足立っている様子。
「なに。どうかしたの?」
「んー?....な~んでもないっ!」
わかりやすい性格だな。
間違いなくこれから何かあるのだろう。
カンカンカン.....
ノックするとゆっくりとブロンズの扉が開いた。
「こんばんはレオナルド。時間通りでしたね」
「どうぞ中へお入りください」
成功者の家には広い食事専用の部屋がある。
もちろんこの屋敷も然り。
そしてシェフを雇うのが常だ。
「レオナルド様、ようこそお越しくださいました」
魔術料理のエキスパート、クライフさん。
こんな堅苦しい仲ではないが
いつもワザとおどけて畏かしこまる。
「先生、私はこれで外れます」
「あいよ。もうこっちも片付いてるし」
フィオが先生と呼ぶのは料理の師だからで
日々お菓子や料理を学んでいるのだとか。
「レオナルド、ウェザーを借りてもよろしくて?」
なぜか彼女まで畏まった言い方をする。
しかも謎の笑みを浮かべながら...
訳も分からぬまま二人は去って行った。
「なんなんですかね...あれは」
「乙女心とはなぁ~複雑なもんなんだよ」
クライフさんはそう言って厨房へと戻り
俺は夕食の皿を並べるのを手伝った。
ドンッ!バタンッ!
「諸君!!今宵の宴を始めようじゃないか!」
玄関の方から無駄に大きな声が聞こえた。
伯父が帰ってきたようだ。
「マスター、まずは着替えてきてくださいね?」
「面倒だからこのまま...イデデ...わかったって...」
遠くでフィオに怒られている声が聞こえる。
いい年して何やってるのだろうか...
「今フェルナンドも行きますので」
「先に席でお待ちくださいね」
彼女は部屋に一度顔を出すと
そう言い残してまた出て行った。
食事の準備も整い
あとは二人が来るのを待つだけなのだが.......
「お待たせしました!!」
声と共に部屋の扉が開くと
素敵なドレスを纏った二人がいた。
「これは一体...」
「イイね!イイね~!女神っぽくて!!」
いつもと違う姿に俺は目を丸くしてしまった。
伯父のはいつものテンションだが。
「ウェザーさんがデザインして私が作りました」
(俺が調べている間にそんな事を...)
魔装束のない事を相当気にしていた彼女の為に
生地からドレスを仕立ててくれたのだ。
フィオは本当に優しいお姉さんだな。
「さあ、いただきましょうか」
ウェザーがドレスを汚すまいと慎重に食べている。
ぎこちない所作が可笑しくて皆で笑った。
あれから彼女は仕事の日以外でも制服を着ている為
夜洗ってまた朝着る感じだ。
乾かなそうな気もするだろう。
そこはまだレベルの低い彼女が唯一使える魔法
“コンディショニング”によって乾燥を上げる事で
見事に朝までには乾いてしまうのである。
(しかし俺の喉は毎朝キリキリと痛むのであった...)
今日は仕事帰りに伯父の屋敷へと向かった。
フィオから晩御飯のお誘いが来たからだ。
ウェザーは仕事中も終始にやけていた。
今もそうだ。なんだか浮き足立っている様子。
「なに。どうかしたの?」
「んー?....な~んでもないっ!」
わかりやすい性格だな。
間違いなくこれから何かあるのだろう。
カンカンカン.....
ノックするとゆっくりとブロンズの扉が開いた。
「こんばんはレオナルド。時間通りでしたね」
「どうぞ中へお入りください」
成功者の家には広い食事専用の部屋がある。
もちろんこの屋敷も然り。
そしてシェフを雇うのが常だ。
「レオナルド様、ようこそお越しくださいました」
魔術料理のエキスパート、クライフさん。
こんな堅苦しい仲ではないが
いつもワザとおどけて畏かしこまる。
「先生、私はこれで外れます」
「あいよ。もうこっちも片付いてるし」
フィオが先生と呼ぶのは料理の師だからで
日々お菓子や料理を学んでいるのだとか。
「レオナルド、ウェザーを借りてもよろしくて?」
なぜか彼女まで畏まった言い方をする。
しかも謎の笑みを浮かべながら...
訳も分からぬまま二人は去って行った。
「なんなんですかね...あれは」
「乙女心とはなぁ~複雑なもんなんだよ」
クライフさんはそう言って厨房へと戻り
俺は夕食の皿を並べるのを手伝った。
ドンッ!バタンッ!
「諸君!!今宵の宴を始めようじゃないか!」
玄関の方から無駄に大きな声が聞こえた。
伯父が帰ってきたようだ。
「マスター、まずは着替えてきてくださいね?」
「面倒だからこのまま...イデデ...わかったって...」
遠くでフィオに怒られている声が聞こえる。
いい年して何やってるのだろうか...
「今フェルナンドも行きますので」
「先に席でお待ちくださいね」
彼女は部屋に一度顔を出すと
そう言い残してまた出て行った。
食事の準備も整い
あとは二人が来るのを待つだけなのだが.......
「お待たせしました!!」
声と共に部屋の扉が開くと
素敵なドレスを纏った二人がいた。
「これは一体...」
「イイね!イイね~!女神っぽくて!!」
いつもと違う姿に俺は目を丸くしてしまった。
伯父のはいつものテンションだが。
「ウェザーさんがデザインして私が作りました」
(俺が調べている間にそんな事を...)
魔装束のない事を相当気にしていた彼女の為に
生地からドレスを仕立ててくれたのだ。
フィオは本当に優しいお姉さんだな。
「さあ、いただきましょうか」
ウェザーがドレスを汚すまいと慎重に食べている。
ぎこちない所作が可笑しくて皆で笑った。
0
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる