俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第2章

日々の努力が必要だ。

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ガチャを回せるのは残り3回。

シュウィン...シュゴーン...
“ガントレット”

ノーマルの籠手が出た。
“~のガントレット”とかの付加価値はないが
何も付けないよりは見た目も格好良いし使えそう。

シュゥ...シュイィィン...バンッ
これはレアっぽい響きだ!
プラチナのような眩い光が立ち込める。

“騎士の鎧”
これはかなり良い!
能力も高いし見た目も抜群にイケてる!!

..........だが冷ややかな視線を感じるのは
ウェザーが頬を膨らませて俺を見ているからだ。

そう。これは男物の装束なのである。
胸の辺りの関係で彼女には装着出来ない代物。
せめて男女兼用物の鎧なら良かったのだが...

「そんな目で見るなよ。俺のせいじゃ無いし」
「.....でもレオにやけてる」

思わずそんな顔をしていたらしい。
そりゃ男ならテンション上がりますよ、はい。

「まだ後一回あるからさ」
そう言ってふてくされる女神をなだめると
俺は最後のガチャを回した。

シュゥ...シュワン...ヒュィン
“漆黒のチョーカー”

女神系アイテムだ。
オシャレな見た目だけでなく魔力も上がる。
お目当ての魔装束では無かったが
彼女は早速気に入って首に付けていた。

大きな当たりは結局俺のだけだが
その他を組み合わせると意外な結果が生まれた。

「ウェザー、なんか全体的に纏まってるね」

剣・ブーツ・肩当て・籠手・チョーカーと
フィオの作ってくれた膝丈のドレスとが
絶妙にベストにマッチしているのだ。

彼女は嬉しそうに鏡の前でクルクル回っている。
“トンガリ靴”の方が能力的に上なのだが
そこは頑として譲らなかった。

「だってオシャレな方がいいもん」

まあ、機嫌が治ったならいいし
俺は内心上機嫌なワケだし。
前よりは格段に強くなったに違いない。

「つけて見ないの?その鎧」
俺は遠慮してまだ鎧を試していなかった。
そう言ってくれるなら着てみようか.....ん!?

(.......なに!?着れないんですけど。)

「呪いでもかけられているのかな?」
などと恐ろしい事を言い出すウェザー。
俺達は伯父に調べてもらうため屋敷へと向かった。

「あら?レオナルドとウェザーさん」
「急に来ちゃってゴメンね」

ちょうど外庭の手入れをしていたフィオが出て来た。
しかし残念ながら伯父は今手を離せないらしい。

「締切まで部屋に籠るように閉じ込めていて...」
「理由を付けては後にするので仕方なく...」

親族ながら毎度の調子に申し訳無くなる。
速筆なのだが、過信してしまいよくサボるので
原稿の締切前はいつもカツカツだ。

「その鎧、よろしければ見せていただけますか?」
「私もこの“世界”について少し研究しているので」

そう言う彼女に俺は例の鎧を差し出した。

「騎士の鎧...呪いではなさそうですが...」
フィオが鎧を入念に調べる。

「あ、そういうことですね...解りましたよ!」
「レベル不足ですね」

.....彼女曰く
俺はまだこれを装着出来るレベルにないそうだ。

意表を突かれたがすぐに理解した。
最近はガチャのお金を稼ぐのに必死になり
ケニーの店で働いてばかりだった。

人間のレベルは召喚した魔獣や精霊などと違い
日々の鍛錬で頑張れば敵を倒さずとも多少は上がる。
単に“トレーニング不足”であったのだ。

「剣の稽古なら私がつけますよ?」

ウォーリアの彼女に師事すれば間違いないだろう。
俺は彼女の手が空いている時に
レベル上げに付き合ってもらう事にした。
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