俺は勇者になりたくて今日もガチャを回し続ける。

横尾楓

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第2章

継続は力なり。

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あれから一週間が経過した。
俺は毎朝フィオの作ってくれた特訓ノートを元に
基礎トレーニングをしてから仕事に行く。

「おはようございますウィッドさん」
「おうっレオナルド。大分筋肉が付いたんじゃないか?」

先輩のウィッド。
今は引退したが、かつてはモンスター狩りの名手で
仲間からは“剛腕のウィッディー”と呼ばれていたらしい。

「おれも腰さえやらかさなければまだまだ現役...」
シュッ...シュッ...華麗なジャブを繰り出す。

「はいはい、おじいちゃんはこっちね~?」
ケニーが意地悪そうに雑用を持ってやって来た。

彼と彼女は開店当時からの旧知の仲である。
年の差こそあれこの店のボスは彼女なので
きついボディブローを時折このように打ち込まれるのだ。

「相変わらずキッツいわ。おじいちゃんだってさ」
俺の方を見て小声でぼやく。
まあ、片足踏み込んだ年齢なのは間違いないが。

俺が当日受付分の荷物を積み終えると
ウィッドは隣町までバンを走らせて行った。

「はい、荷物も無いし今日は早いけど上がっていいよ」

ケニーがいつのもようにコインの入った袋を手渡すが
なぜかウェザーの袋の方が大きい気がする。
俺のはいつもと同じ位の重さなのだが...

「それね、臨時ボーナスみたいなものだから」

どうやら先週ウェザーは新しい能力“天気予報フォーキャスト”で
一週間分の天気を教えてあげたらしい。
そして一週間が経ち、見事にすべて的中したから
“臨時ボーナス”が貰えることになったのだ。

「すごい助かったよ。この仕事は影響あるからね」
「来週もまたお願い出来るかな?」
ウェザーはそう言われてとても上機嫌だ。

「あとレオナルド、それは彼女のだからね?」
ケニーがそう言って俺に釘を刺す。
ガチャにでも流用すると思ったのだろうか...
人(精霊)のお金使ってまで回さないですよ。

ただ、彼女の取り分から食費だけ出してもらっている。
これだけでも正直物凄く助かっている。
(何故って毎日欠かさずお肉食べるからね...この)

「そっかぁ...いいねぇ~精霊ちゃんは太らないもんね」
羨やましそうに細っそりとしたスタイルの彼女をみる。

人間と構造が違うから太るという概念がそもそも無い。
だから満腹になるまで食べ続けられるのだ。

「じゃ、おにく買いに帰りま~す!」
「はーい、いってらっしゃ~い」
この後、彼女はいつもより高級な肉を沢山買い込んだ。

そして夕食の後。
毎晩の日課となった素振りを忘れずにする。
シュンッ...シュンッ...シュンッ

明らかに朝の時とは違い
ブンッって重くて大振りだった音が
なんだか俊敏で軽い音に変わっていた。

寝る前には苦手な戦術の勉強もしているが
(今日はちょっと疲れたな...)
戦術編IIまで読み進めたところで
俺は深い眠りに落ちていた。
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