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第1話 春です!モータースポーツシーズンです!
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「愛心学院大学の皆さま~~!グッモーニンー!ですわ!!」
睦美の背後から甲高い声が響き渡る。一瞬睦美の表情が強張り手が止まるが何事も無かったように車を地面に降ろした。
「グッモーニンー!ですわ!!」
今度は睦美の耳元で声の主が叫んだ。
「あああ、うるさい!聞こえてるよ!てかもう昼前だぞ!」
たまらず睦美は振り返り声の主に言い返す。
「こんにちは龍泉寺さん。まだそちらは走られてないんですね?」
響子が二人のやり取りを少し楽しんでいたかのようなタイミングで声をかける。
声の主は龍泉寺華蓮、名古屋きっての名門お嬢様大学である聖城女学院自動車部部長にして中京新聞社社主ご令嬢という絵に描いたようなお嬢様である。
「てか何の用だ?そっちの準備は大丈夫なのかよ?」
睦美は手をとめてしぶしぶ華蓮に話しかける。
「何の用とはご挨拶ですわね。中学時代からの友人があまりにもはしたない恰好をしているのでご注意差し上げようと思っただけですのに。それともご自慢のお身体を衆目にさらす趣味がお有りですこと?」
睦美ははっと自分の姿を見返す。
4月とはいえ日差しが強い中で作業をしていた睦美は、部のガレージで作業している時同様無意識にツナギの上半分を脱いで腰巻にし、上半身はタンクトップ一枚になっていたのだ。その上体躯の良い睦美の胸は否が応でも人目を惹く。当然ここは部室では無い。パドック内の関係者や観客席には男性も多数いるのだ。
顔を真っ赤にした睦美は慌ててツナギに袖を通しなおした。
「というのは冗談でして」
「なっ!」
「そちらのお車が元気に走っているのを見て嬉しくなって来てしまいましたの。だって昨年の全国大会の時はお車の調子が悪かったですものね。流石に寿命ではないかと。でも先ほど神沢さんと今池さんの走りを見てすっかり安心しましたわ。睦美さんが頑張って直されたのですわね」
「そりゃどうも」
睦美がぶっきらぼうに返す。
去年の全国大会での車の不調。メカニックを担当していた彼女にとって余り思い出したくない出来事だった。スーパーチャージャーを取り付けた初年度、中部地区予選では絶好調だった。が、全国大会ではブーストがかからないトラブルが頻発し、当時の3年生と手を尽くしたが結局解決をすることができなかったのだ。とは言え華蓮の言葉に悪気が無いのも分かっていた。華蓮とは聖城女学院中学、高校時代の同級生だったのだ。育ちはあまり良く見えないが名古屋で有数の自動車修理工場の令嬢なのである。
「ところで龍泉寺さん、聖城さんは今年から車を変えられたんですよね?」
二人の夫婦漫才(?)が終わったのを見計らって再び響子が切り出した。
「そうですの!今年から私たちの部車はロータスエキシージS PPになりましたの!」
「現行のV6ではなく1つ前の直4モデル、S2エキシージなんですね」
少し離れた聖城のパドックに止められた純白のエキシージに目をやりながら響子が言った。
「さすがに現行型の200キロ以上の重量増は看過できませんでしたので。2010年式ですが走行距離1000キロ未満の極上車をイギリスから取り寄せましたわ」
「取り寄せましたわ、って金持ちのやる事には敵わないね。前のお宅のNSXだってウチからしたら新車みたいなもんだってのに」
睦美が自嘲気味に漏らす。
「あのNSXも最終型とは言え2003年式、もう15年以上経っていたのですよ。愛心さんの物持ちが良すぎるだけです」
華蓮が少しプイっとした表情をみせたかと思うと少し俯きがちに続けた。
「確かにあの車は第1回大学女子ジムカーナの記念すべきチャンピオンカー、そして我が部の誇りでした。手放すことに私も周りも少なからず躊躇はありました。しかし第2回以降、毎年全国大会に進出するもチャンピオンを取れていなかったのも事実です」
「そして今年は記念すべき第10回大会、もう一度聖城にチャンピオンを取り戻すべく私たちはなりふり構わず突き進みます!今日これから私の走りを存分に御覧になって下さいまし!」
登場車両紹介
ロータス エキシージS PP【型式1117】
聖城女学院自動車部部車
2000年に登場したロータス・エキシージであるが、そのビッグマイナーチェンジモデル、通称シリーズ2をベースとしている。エンジンはトヨタ製2ZZ-GEにスーパーチャージャーを搭載、ミドシップ(運転席とリヤタイヤの間)に配置し最終型では243psを発揮する。車重は930㎏程度と近代スポーツカーに於いては圧倒的な軽さを活かして、ジムカーナ史上最速の2輪駆動車との呼び声が高い。ただし元のパフォーマンスの高さもあり、他校の車両とは異なり大きな改造を施していないのも聖城女学院の車両の特徴でる。その実はスピードSC車両よりはるかに改造度合が少ない、スピードN車両の範囲程度に収まっている。
睦美の背後から甲高い声が響き渡る。一瞬睦美の表情が強張り手が止まるが何事も無かったように車を地面に降ろした。
「グッモーニンー!ですわ!!」
今度は睦美の耳元で声の主が叫んだ。
「あああ、うるさい!聞こえてるよ!てかもう昼前だぞ!」
たまらず睦美は振り返り声の主に言い返す。
「こんにちは龍泉寺さん。まだそちらは走られてないんですね?」
響子が二人のやり取りを少し楽しんでいたかのようなタイミングで声をかける。
声の主は龍泉寺華蓮、名古屋きっての名門お嬢様大学である聖城女学院自動車部部長にして中京新聞社社主ご令嬢という絵に描いたようなお嬢様である。
「てか何の用だ?そっちの準備は大丈夫なのかよ?」
睦美は手をとめてしぶしぶ華蓮に話しかける。
「何の用とはご挨拶ですわね。中学時代からの友人があまりにもはしたない恰好をしているのでご注意差し上げようと思っただけですのに。それともご自慢のお身体を衆目にさらす趣味がお有りですこと?」
睦美ははっと自分の姿を見返す。
4月とはいえ日差しが強い中で作業をしていた睦美は、部のガレージで作業している時同様無意識にツナギの上半分を脱いで腰巻にし、上半身はタンクトップ一枚になっていたのだ。その上体躯の良い睦美の胸は否が応でも人目を惹く。当然ここは部室では無い。パドック内の関係者や観客席には男性も多数いるのだ。
顔を真っ赤にした睦美は慌ててツナギに袖を通しなおした。
「というのは冗談でして」
「なっ!」
「そちらのお車が元気に走っているのを見て嬉しくなって来てしまいましたの。だって昨年の全国大会の時はお車の調子が悪かったですものね。流石に寿命ではないかと。でも先ほど神沢さんと今池さんの走りを見てすっかり安心しましたわ。睦美さんが頑張って直されたのですわね」
「そりゃどうも」
睦美がぶっきらぼうに返す。
去年の全国大会での車の不調。メカニックを担当していた彼女にとって余り思い出したくない出来事だった。スーパーチャージャーを取り付けた初年度、中部地区予選では絶好調だった。が、全国大会ではブーストがかからないトラブルが頻発し、当時の3年生と手を尽くしたが結局解決をすることができなかったのだ。とは言え華蓮の言葉に悪気が無いのも分かっていた。華蓮とは聖城女学院中学、高校時代の同級生だったのだ。育ちはあまり良く見えないが名古屋で有数の自動車修理工場の令嬢なのである。
「ところで龍泉寺さん、聖城さんは今年から車を変えられたんですよね?」
二人の夫婦漫才(?)が終わったのを見計らって再び響子が切り出した。
「そうですの!今年から私たちの部車はロータスエキシージS PPになりましたの!」
「現行のV6ではなく1つ前の直4モデル、S2エキシージなんですね」
少し離れた聖城のパドックに止められた純白のエキシージに目をやりながら響子が言った。
「さすがに現行型の200キロ以上の重量増は看過できませんでしたので。2010年式ですが走行距離1000キロ未満の極上車をイギリスから取り寄せましたわ」
「取り寄せましたわ、って金持ちのやる事には敵わないね。前のお宅のNSXだってウチからしたら新車みたいなもんだってのに」
睦美が自嘲気味に漏らす。
「あのNSXも最終型とは言え2003年式、もう15年以上経っていたのですよ。愛心さんの物持ちが良すぎるだけです」
華蓮が少しプイっとした表情をみせたかと思うと少し俯きがちに続けた。
「確かにあの車は第1回大学女子ジムカーナの記念すべきチャンピオンカー、そして我が部の誇りでした。手放すことに私も周りも少なからず躊躇はありました。しかし第2回以降、毎年全国大会に進出するもチャンピオンを取れていなかったのも事実です」
「そして今年は記念すべき第10回大会、もう一度聖城にチャンピオンを取り戻すべく私たちはなりふり構わず突き進みます!今日これから私の走りを存分に御覧になって下さいまし!」
登場車両紹介
ロータス エキシージS PP【型式1117】
聖城女学院自動車部部車
2000年に登場したロータス・エキシージであるが、そのビッグマイナーチェンジモデル、通称シリーズ2をベースとしている。エンジンはトヨタ製2ZZ-GEにスーパーチャージャーを搭載、ミドシップ(運転席とリヤタイヤの間)に配置し最終型では243psを発揮する。車重は930㎏程度と近代スポーツカーに於いては圧倒的な軽さを活かして、ジムカーナ史上最速の2輪駆動車との呼び声が高い。ただし元のパフォーマンスの高さもあり、他校の車両とは異なり大きな改造を施していないのも聖城女学院の車両の特徴でる。その実はスピードSC車両よりはるかに改造度合が少ない、スピードN車両の範囲程度に収まっている。
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