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第2話 私、ジムカーナなんてやりません!
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土曜日の午後、休校日を利用して学校の駐車場を封鎖し、新入生や見学者を対象にした女子自動車部の走行デモンストレーションが開かれていた。
このイベント、今年が初開催である。何年も前から学校へ要請はしていたが、駐車場に残るタイヤ跡、近隣への騒音などが懸念され今まで実現できていなかったのだ。
しかし昨年、全国大会への出場の功績が認められ、ようやく開催に漕ぎつけたのである。
「それではこれから同乗体験を行いまーす!抽選で当たった方はこちらに並んでくださーい!」
まどかが新入生の中から当選した同乗走行参加者を整列している。
同乗走行のコースはスラロームを並列に2本作り2台同時にスタート。そして折り返しでターンをして戻ってくるという簡単なツイントライアル形式で行う。乗っている側にも見ている側にも楽しんで貰おうという趣向だ。
「へへへ、部長、デモンストレーションだからって手は抜かないぜ」
「あなたこそ大丈夫なの?その車、リアタイヤがもうスリックになりそうよ?」
響子は部車のCR-Xを操るが、ひとみは彼女の愛車RX-7【FD3S】を持ち込んでいた。
「よ、よろしくお願いします…」
そう言ってCR-Xに向かってきたのは牛乳瓶の底のようなレンズの丸縁メガネを掛けた大人しそうな少女だ。
「こちらこそよろしく、さあ、ヘルメットを被って助手席にどうぞ」
「あの、私、どん臭くって自動車学校でいつも失敗してばっかりなんです。今日は先輩の運転を体験させて貰って、なんとか活かせればと思いました…」
「あ、あら、そうなのね。何か参考になるといいけど…」
「よーーーーい、スタート!!」
茉莉がスタートフラッグを振り下ろす。
スタートではパワーと後輪駆動のトラクションを活かしひとみのRX-7が先行する。この車何を隠そうしっかりジムカーナ仕様なのだ。
折り返し地点まではひとみがリードする、しかし明からさまに擦り減ったリアタイヤでは折り返しのターンでグリップが足りず、立ち上がりで響子に逆転を許しそのままゴールとなった。
「すごいです、先輩!ハンドルってあんなに早く回せるんですね!こうビューン、ビューン!って」
牛乳瓶の少女は興奮冷めやらぬ様子だ。
「あ、ありがとう。でも教習所ではくれぐれもハンドル回し過ぎないようにね…」
「どもー、おっじゃましまーっす!」
続いてテンション高くRX-7に乗り込んできたのは、この場の雰囲気には似つかわしくない派手なメイクと髪色のギャルだ。
「あ、あぁ、よろしく…」
「てか先輩、今負けちゃったっしょ?あたしこっちの車の方がカッコ良くて好きなのになぁ。あっちの先輩の方が運転ウマいんじゃない?」
「あ、あぁ!?」
ひとみはキレそうになるのを必死に堪えながらスタートラインへ向かう。
「よーーーい、スタート!!」
その瞬間、RX-7の後輪がけたたましく空転する。タイヤ煙をまき散らし蛇行しながらスタートした。
「ちょっとあの子、何やってるのよ!」
響子がサイドミラー越しにRX-7の不穏な動きに気付いた。
ひとみのRX-7はパイロンにリアをスライドさせたまま進入し、そのまま左右に大きく車体を振りながらスラロームを抜けていく。
「キャッハッハー!先輩これ※&%!!」
どうやら舌を噛んだようだ。ひとみは折り返し地点で大きく膨らんで定常円を描き、再びドリフトスラロームでゴールラインに帰ってくる。その頃にはあたり一面、タイヤ煙で真っ白になっていた。
「先輩、マジ最高!!あれドリフトって言うんしょ!?あんがと!機会あったらまた乗っけてね!!」
舌の痛みから回復した彼女は好きなだけ喋って去っていった。
「な、なんなんだよ、あれは…」
車を降りながら思わずぼやく。さすがのひとみもどっと疲れが出ていた。
「なんなんだよはこっちのセリフよ……」
車を降りると響子が仁王立ちで待ち構えていた。
「騒音とタイヤ跡は極力抑えるのが学校との取り決めなの忘れてないでしょうね!なのにほら!あ、あ、あんなにたくさんタイヤマークつけて……」
珍しく響子が狼狽している。
「ご、ごめんなさい、もう二度としません!」
「当り前よ!!」
「もうしません、と言うか、もうできませんと言うか……」
ひとみがRX-7のリアへちらっと目線をやる。そこにあるのはトレッドのゴムが剥がれ、中のカーカス(※タイヤの骨格を形成するコード層)があらわになり廃タイヤと化したリアタイヤだった。
登場車両紹介
マツダ RX-7【型式 FD3S】
今池ひとみ 所有車両
1991年に登場した3代目RX-7、その後期型にあたる5型モデル。
最高出力は280ps、車両重量は1260kgとパワーウェイトレシオに優れ、ジムカーナ車両としては最も多くのユーザーに愛されたFR車と言っていいだろう。他のハイパワースポーツカー同様、環境規制、市場動向によりモデルチェンジされることなく2002年に生産終了した。
当該車両は2016年まで存在したN車両クラスに参戦していた車を引き取っており、改造は足回り、クラッチ、デフ、ボディ補強程度である。
このイベント、今年が初開催である。何年も前から学校へ要請はしていたが、駐車場に残るタイヤ跡、近隣への騒音などが懸念され今まで実現できていなかったのだ。
しかし昨年、全国大会への出場の功績が認められ、ようやく開催に漕ぎつけたのである。
「それではこれから同乗体験を行いまーす!抽選で当たった方はこちらに並んでくださーい!」
まどかが新入生の中から当選した同乗走行参加者を整列している。
同乗走行のコースはスラロームを並列に2本作り2台同時にスタート。そして折り返しでターンをして戻ってくるという簡単なツイントライアル形式で行う。乗っている側にも見ている側にも楽しんで貰おうという趣向だ。
「へへへ、部長、デモンストレーションだからって手は抜かないぜ」
「あなたこそ大丈夫なの?その車、リアタイヤがもうスリックになりそうよ?」
響子は部車のCR-Xを操るが、ひとみは彼女の愛車RX-7【FD3S】を持ち込んでいた。
「よ、よろしくお願いします…」
そう言ってCR-Xに向かってきたのは牛乳瓶の底のようなレンズの丸縁メガネを掛けた大人しそうな少女だ。
「こちらこそよろしく、さあ、ヘルメットを被って助手席にどうぞ」
「あの、私、どん臭くって自動車学校でいつも失敗してばっかりなんです。今日は先輩の運転を体験させて貰って、なんとか活かせればと思いました…」
「あ、あら、そうなのね。何か参考になるといいけど…」
「よーーーーい、スタート!!」
茉莉がスタートフラッグを振り下ろす。
スタートではパワーと後輪駆動のトラクションを活かしひとみのRX-7が先行する。この車何を隠そうしっかりジムカーナ仕様なのだ。
折り返し地点まではひとみがリードする、しかし明からさまに擦り減ったリアタイヤでは折り返しのターンでグリップが足りず、立ち上がりで響子に逆転を許しそのままゴールとなった。
「すごいです、先輩!ハンドルってあんなに早く回せるんですね!こうビューン、ビューン!って」
牛乳瓶の少女は興奮冷めやらぬ様子だ。
「あ、ありがとう。でも教習所ではくれぐれもハンドル回し過ぎないようにね…」
「どもー、おっじゃましまーっす!」
続いてテンション高くRX-7に乗り込んできたのは、この場の雰囲気には似つかわしくない派手なメイクと髪色のギャルだ。
「あ、あぁ、よろしく…」
「てか先輩、今負けちゃったっしょ?あたしこっちの車の方がカッコ良くて好きなのになぁ。あっちの先輩の方が運転ウマいんじゃない?」
「あ、あぁ!?」
ひとみはキレそうになるのを必死に堪えながらスタートラインへ向かう。
「よーーーい、スタート!!」
その瞬間、RX-7の後輪がけたたましく空転する。タイヤ煙をまき散らし蛇行しながらスタートした。
「ちょっとあの子、何やってるのよ!」
響子がサイドミラー越しにRX-7の不穏な動きに気付いた。
ひとみのRX-7はパイロンにリアをスライドさせたまま進入し、そのまま左右に大きく車体を振りながらスラロームを抜けていく。
「キャッハッハー!先輩これ※&%!!」
どうやら舌を噛んだようだ。ひとみは折り返し地点で大きく膨らんで定常円を描き、再びドリフトスラロームでゴールラインに帰ってくる。その頃にはあたり一面、タイヤ煙で真っ白になっていた。
「先輩、マジ最高!!あれドリフトって言うんしょ!?あんがと!機会あったらまた乗っけてね!!」
舌の痛みから回復した彼女は好きなだけ喋って去っていった。
「な、なんなんだよ、あれは…」
車を降りながら思わずぼやく。さすがのひとみもどっと疲れが出ていた。
「なんなんだよはこっちのセリフよ……」
車を降りると響子が仁王立ちで待ち構えていた。
「騒音とタイヤ跡は極力抑えるのが学校との取り決めなの忘れてないでしょうね!なのにほら!あ、あ、あんなにたくさんタイヤマークつけて……」
珍しく響子が狼狽している。
「ご、ごめんなさい、もう二度としません!」
「当り前よ!!」
「もうしません、と言うか、もうできませんと言うか……」
ひとみがRX-7のリアへちらっと目線をやる。そこにあるのはトレッドのゴムが剥がれ、中のカーカス(※タイヤの骨格を形成するコード層)があらわになり廃タイヤと化したリアタイヤだった。
登場車両紹介
マツダ RX-7【型式 FD3S】
今池ひとみ 所有車両
1991年に登場した3代目RX-7、その後期型にあたる5型モデル。
最高出力は280ps、車両重量は1260kgとパワーウェイトレシオに優れ、ジムカーナ車両としては最も多くのユーザーに愛されたFR車と言っていいだろう。他のハイパワースポーツカー同様、環境規制、市場動向によりモデルチェンジされることなく2002年に生産終了した。
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