『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ

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閑話 ステイの苦労

お兄様にテンプルの温泉タマゴを与えた――その瞬間は、心から良かったと思った。

でも、まさか……まさかこんな事態になるなんて、誰が想像したでしょうか。

 

魔力病。

それは、小さい頃から魔神族にとって最も恐ろしい病だと教えられてきた。

発症すれば、百パーセント死に至る。不治の病。

 

――私のお祖父様もお祖母様も、それで亡くなった。

 

この病の厄介なところは、「気づくのが遅い」こと。

魔力が半減して、ようやく発覚するの。

そこからはもう、体力も気力もどんどん落ちて、自力で立ち上がることすらできなくなっていく。

 

お兄様も、あんなに元気だったのに……話しかけても、反応が薄くなって、いつも無口になって……。

 

 

そんな中で出会ったのが――ジーク。

そして、彼と一緒に暮らした死の森。

あの不思議な日々があってこそ、私たちは魔力病を治す鍵を見つけられた。

きっと……これは、神様からの“導き”だったのかもしれない。

 

けれど――

 

テンプルの温泉タマゴには、もっと注意を払うべきだった。

 

 

魔神族が“魔力酔い”なんて、思ってもみなかったのよ。

だって、聞いたことなかったんだもの!

 

私は、あまりにもお兄様に元気になってほしくて――

一気に口に押し込んじゃった。

 

……すると。

 

元気になった。

 

いや、元気になりすぎた。

 

一ヶ月半、フルパワーお兄様が暴走していた。

もう、こっちが死ぬかと思ったわ。

 

 

「ステイ!次はこの計画書だ!」

「ステイ!経済改革案、通ったぞ!」

「ステイ!国民が増税に怒ってるから説得してきてくれ!」

 

って、全部お兄様のせいですけど!?

 

でもその暴走のおかげで、魔神族の国はめちゃくちゃ経済が良くなってたのよね……。

なんかもう、複雑な気持ち。

 

そして、やっとお兄様の魔力酔いが落ち着いた頃――

 

「……オレ、なんでこんなに仕事増やしたんだ……?」

 

とか言い出す始末。

自覚ゼロだったの!?あれ全部、あんたがやったんだよ!?

 

だから私は――

 

「私、そろそろ帰るからね~!」

 

と、さわやかに言い放ち、兄の執務室を出ようとした。

……のだけれど。

 

「ステイ。頼む、もう少し手伝ってくれーーーーーーー!」

 

 

――逃げられなかった。

 

お兄様は、やっぱりお兄様だった。

そして私は、心の底から思い知ったのです。

 

魔力酔い……それは、恐ろしい副作用である。

 

 

◇ ◇ ◇

 

そんなわけで、いったんフリーデン村へ帰還。

目的はもちろん、テンプルの温泉タマゴの供給状況の確認。

 

村に戻ると、ジークがにこにこしながら言った。

 

「はい、100個!準備できてるよ!」

 

……100個!?

テンプルって一羽しかいないんじゃなかったの!?

 

どうやら、ハイエルフの皆さんが協力してくれたらしい。

感謝しかないわ……今度、絶対お礼を言いに行かなきゃ。

 

そして私は、再び魔神族の国へ戻り――

お父様の部屋の扉を、そっとノックしたのだった。


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