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第2話 下水の泡は、油のいとこ
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冒険者ギルドの受付・リサが、紙を一枚トンと置いた。
「依頼は“下水の泡立ち停止”。報酬は銀貨三。護衛つける?」
「掃除なので、敵は汚れ。……でも泡が増えるタイプなら一人だと面倒ですね」
「じゃあ臨時で——カイル!」
「呼んだ?」
槍を背負った青年が現れた。
「通路確保、任せろ。……へっくし!」
「埃に弱い槍士って、人生ハードモード」
「言うな。でも突くのは得意」
下水口は街はずれ。地下へ降りると、ぬるい匂いが鼻にからむ。
「現状確認。原因は三つ。油、石鹸カス、温度」
「三つも敵がいるのか」
「敵って言い方は正しい。仲良くはしないけど」
足元でぶくぶく。白い泡が自立し、目玉が二つぴょこん。泡スライム。
「来たな、油のいとこ」
「親戚多いな汚れ」
「家系図は長いの。——段取り出すよ。拭く、乾かす、風。三手で終わらせます」
重曹袋を開け、油膜に薄く雪を降らせる。
「三、二、一」
しゅわわ、と泡の腰が抜けた。
「カイル、右の通路、槍で塞いで。流れを一本に」
「了解!……へっくし!」
「そのくしゃみ、合図として優秀」
小さな扇——風路扇を広げる。
「風、通す。温度を二度下げる」
風が道になって走り、泡がもつれて一塊になる。
「今。横拭き」
雑巾が鳴る。きゅっ。
【清浄度:34→72/被弾率 -5%】
「踏ん張り効く! 床が味方した!」
「床は中立。裏切ったのは油。犯人は鍋——と見せかけて、ここは……誰かが流してる」
奥の樋に、封印が切られた油樽。印章の跡。
「意図的、だね」
「わざと泡を増やしてた?」
「推理は後。まずは安全確保。——最終手」
風路をさらに細く、狭い場所に集中。重曹の残りを扇の風で霧状に散らす。
泡の群れがしゅん、と萎み、ぺたりと床に座り込む。
【清浄度:72→100】
【清浄波:小スタン1.5秒】
「清浄波、発動。まとめて外へ」
手箒で一掃、樋から地上へ“ごみ出し”。
泡スライムの残りかすが転がり、ひとつだけ、ぷるぷる震えた。
「……たべる?」
「言った? 今“たべる”って」
「言ったな。可愛いな」
「油、たべる?」
「食べて。うちで雇用する」
小さなスライムが胸元にぽすん。
「名前は——“ポンポン”」
「単純! でも覚えやすい!」
リサに報告へ戻る。
「数字、出して」
「清浄度34→100。会心+3%、被弾-8%、行動コスト-10%。所要八分」
「十分切りは上等。で、これ」
リサが差し出したのは、清掃士の身分証。
明るい文字が浮かぶ。
――――
【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ 職業:清掃士 レベル:2
体力:112/112 魔力:82/82 運:18(+)
固有スキル〈お片付け〉Lv1
・掃除経験値25倍(汚染度係数あり)
・整頓段階に応じてレア率上昇
・清浄波(小)解禁
装備:雑巾“一枚”/手箒/風路扇/汚滅桶
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 31%)
――――
「レベル上がった。掃除で強くなる人生、悪くない」
「強さの基準が斬新だな」
「筋肉だけが戦いじゃない。段取りも戦力」
「……へっくし!」
「その合図、今後も使うから健康でいて」
リサが油樽の写真(記録面の写し)を覗き込み、眉を上げた。
「樽の印章、城下の商会のもの。わざと流したなら、下水が泡立つのは“事故”じゃない」
「掃除の敵は、汚れだけじゃないってことか」
「次の依頼、回す。——“屋敷ゴミ山の王”。発火性のカス付き」
「危険物、歓迎。三手で安全にする」
掲示板から依頼札をはがす。
廊下の床は、もう滑らない。歩くたび、靴音が軽い。
-----
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「依頼は“下水の泡立ち停止”。報酬は銀貨三。護衛つける?」
「掃除なので、敵は汚れ。……でも泡が増えるタイプなら一人だと面倒ですね」
「じゃあ臨時で——カイル!」
「呼んだ?」
槍を背負った青年が現れた。
「通路確保、任せろ。……へっくし!」
「埃に弱い槍士って、人生ハードモード」
「言うな。でも突くのは得意」
下水口は街はずれ。地下へ降りると、ぬるい匂いが鼻にからむ。
「現状確認。原因は三つ。油、石鹸カス、温度」
「三つも敵がいるのか」
「敵って言い方は正しい。仲良くはしないけど」
足元でぶくぶく。白い泡が自立し、目玉が二つぴょこん。泡スライム。
「来たな、油のいとこ」
「親戚多いな汚れ」
「家系図は長いの。——段取り出すよ。拭く、乾かす、風。三手で終わらせます」
重曹袋を開け、油膜に薄く雪を降らせる。
「三、二、一」
しゅわわ、と泡の腰が抜けた。
「カイル、右の通路、槍で塞いで。流れを一本に」
「了解!……へっくし!」
「そのくしゃみ、合図として優秀」
小さな扇——風路扇を広げる。
「風、通す。温度を二度下げる」
風が道になって走り、泡がもつれて一塊になる。
「今。横拭き」
雑巾が鳴る。きゅっ。
【清浄度:34→72/被弾率 -5%】
「踏ん張り効く! 床が味方した!」
「床は中立。裏切ったのは油。犯人は鍋——と見せかけて、ここは……誰かが流してる」
奥の樋に、封印が切られた油樽。印章の跡。
「意図的、だね」
「わざと泡を増やしてた?」
「推理は後。まずは安全確保。——最終手」
風路をさらに細く、狭い場所に集中。重曹の残りを扇の風で霧状に散らす。
泡の群れがしゅん、と萎み、ぺたりと床に座り込む。
【清浄度:72→100】
【清浄波:小スタン1.5秒】
「清浄波、発動。まとめて外へ」
手箒で一掃、樋から地上へ“ごみ出し”。
泡スライムの残りかすが転がり、ひとつだけ、ぷるぷる震えた。
「……たべる?」
「言った? 今“たべる”って」
「言ったな。可愛いな」
「油、たべる?」
「食べて。うちで雇用する」
小さなスライムが胸元にぽすん。
「名前は——“ポンポン”」
「単純! でも覚えやすい!」
リサに報告へ戻る。
「数字、出して」
「清浄度34→100。会心+3%、被弾-8%、行動コスト-10%。所要八分」
「十分切りは上等。で、これ」
リサが差し出したのは、清掃士の身分証。
明るい文字が浮かぶ。
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【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ 職業:清掃士 レベル:2
体力:112/112 魔力:82/82 運:18(+)
固有スキル〈お片付け〉Lv1
・掃除経験値25倍(汚染度係数あり)
・整頓段階に応じてレア率上昇
・清浄波(小)解禁
装備:雑巾“一枚”/手箒/風路扇/汚滅桶
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 31%)
――――
「レベル上がった。掃除で強くなる人生、悪くない」
「強さの基準が斬新だな」
「筋肉だけが戦いじゃない。段取りも戦力」
「……へっくし!」
「その合図、今後も使うから健康でいて」
リサが油樽の写真(記録面の写し)を覗き込み、眉を上げた。
「樽の印章、城下の商会のもの。わざと流したなら、下水が泡立つのは“事故”じゃない」
「掃除の敵は、汚れだけじゃないってことか」
「次の依頼、回す。——“屋敷ゴミ山の王”。発火性のカス付き」
「危険物、歓迎。三手で安全にする」
掲示板から依頼札をはがす。
廊下の床は、もう滑らない。歩くたび、靴音が軽い。
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