『スキル〈お片付け〉で世界最強!? 掃除するだけで経験値25倍生活』

チャチャ

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第26話 ギルド鑑定——“発掘”は掃除のごほうび

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昼下がりのギルドは、鉄と獣脂と紙の匂い。
受付の鈴が小さく鳴った。

「未鑑定、三点。清浄度ログ付きでお願いします」

鑑定窓口の女性が顔を上げる。名札に「アマリア」。

「紙が先に仕事してる音、好きよ。見せて」

私は“未整頓袋”を卓に置いた。
祭と倉庫監査で出た、タグ付きの小包みだ。

カイルが斜め後ろで腕を組む。

「ゴミ山から宝が出るって、本当にあるのか」

「ゴミ山じゃなく“未整頓”。帰り道を作ったら、帰ってきただけ」

ノラが控えを差し出す。

「理論上は、清浄度と整理度の積で“発掘判定”が上がる」

アマリアは薄手の手袋をはめ、小包みをひとつ開けた。
灰色の欠片が、窓の光で薄く縁を光らせる。

「……“風路計”のレンズ。古代式。割らずに出すの、珍しい」

私は胸の前で手を合わせた。

「割る前に帰り道を作るのが、片付けです」

カイルが小声で唸る。

「言い回しが強い」

アマリアは次の包みを持ち上げた。
透きとおる石が、氷みたいに芯で光った。

「高純度の魔石(小)。不純物が少ない。風系装置との相性、最高」

ノラがメモを走らせる。

「理論上、常設風路のコアとして有用」

三つ目の包み。
古びた背金具と、細い刻印の残る小片。

「書庫器具の“背金”。……図書塔の規格。禁書室由来じゃないけど、古い」

私は頷いた。

「紙は正直」

アマリアが手を止め、私たちを見る。

「ところで、この“清浄度ログ”って、どうやって出してるの?」

「拭いて、乾かして、風。三手の後に“整理度A/タグ精度A”で判定。数字は記録封緘で貼ります」

カイルが鼻を鳴らす。

「俺の名誉(くしゃみ)もゼロ。……へっ、我慢」

「そこは誇って」

アマリアは笑い、鑑定印を三つ、コトコトと打った。
周りの受付たちが、ひそひそとこちらを見ている。

「——結果を読み上げます」

アマリアは小槌で卓を軽く叩いた。
空気が一枚、静かになる。

「一点目、“風路計レンズ欠片”。品質B+。同規格の断片を集めれば可視化機が組める」

「二点目、“高純度魔石(小)”。品質A。出力安定が得意。風路の“動力の平滑”に向く」

「三点目、“書庫器具の背金(古)”。品質B。古図書規格の修復素材として買い手あり」

私は短く息を吐いた。

「必要十分。港に“常設風路”を作る材料がそろいはじめた」

ノラが顔を上げる。

「理論上、あと一つ“燃焼安定”が欲しい。浴場ボイラーの火蜥蜴——洗い討ちで出せる」

「現実上も、やろう」

アマリアが身を乗り出した。

「火蜥蜴を“洗う”? その話、もっと聞きたいけど……まず金額ね」

私は小包みを並べ直した。
背を立て、ラベルを正方向へ。

「背を通すだけで、見える数が増える」

カイルが首を傾げる。

「数字、もう来てるのか」

「来てる。——ログ、締めます」

――――
【発掘判定】
清浄度:98/整理度:A/タグ精度:A → レア⭐︎⭐︎
【発見】
・風路計レンズ欠片(品質B+)
・高純度魔石(小)(品質A)
・書庫器具の背金(古)(品質B)
【換金】
・背金(古)→資料修復組合へ売却見込み/他二点は保有(常設風路計画に充当)
――――

アマリアが鑑定札を渡してくる。
表には「保有推奨」の赤い小印。

「組むつもりなら、この二つは売らないほうがいい。足りない部分は、ギルドで探索依頼を出せる」

私は頷いた。

「港で“数字の風”を固定したい。発注の書式、教えて」

ノラが横からメモを差し出す。

「理論上、図面化して“見せて通す”のが早い」

アマリアが目を細めた。

「図面を持ってくる清掃士、初めて見たわ。面白い」

カイルが肩を回す。

「面白いのは良い兆候。……へっ、我慢」

「そこは伸びしろ」

受付脇で、別の職員が小声で囁いた。
「清掃でレア……」
「いや、ログがすごい」
そういう視線は、悪くない。

視界にお知らせが灯る。

――――
【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ/職業:清掃士/レベル:24
体力:158/158 魔力:128/128 運:34
固有スキル〈お片付け〉Lv5
新規:〈発掘補正〉(清浄度×整理度×タグ精度でドロップ補正/光磨布で+段階)
既存:〈問答整理〉〈筆跡照合〉〈透読〉〈封緘解析〉〈撤収導線〉〈逆流検知〉〈現場放送〉〈会場設計〉〈夜間案内〉〈案内標生成〉〈群衆整理〉〈書類整頓〉〈記録封緘〉〈除塩拭き〉〈消臭調合〉〈結束術〉〈背ラベル生成〉〈仕分けタグ〉〈除菌配分〉〈動線マップ〉
装備:光磨布・一枚/風路扇/汚滅桶
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 60%)
――――

アマリアが手帳をぱたんと閉じた。

「次に持ってくるなら、“燃焼安定石”ね。火蜥蜴の腹下。……洗ってから、縦で通す」

私は笑った。

「やっぱり、“洗い討ち”は正しい」

ノラが指を立てる。

「理論上、浴場の依頼掲示板に出てる」

カイルが掲示板の方を顎で示す。

「湯気、上がってる。……へっ、我慢」

私は袋を肩に掛けた。
レンズと魔石は軽くないけれど、背を立てると持ちやすい。

「次は浴場。拭いて、乾かして、風——“洗って”から、縦で通す」

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