『スキル〈お片付け〉で世界最強!? 掃除するだけで経験値25倍生活』

チャチャ

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第27話 浴場ボイラー掃除——火蜥蜴は“洗って”から通す

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浴場は湯気と石鹸の匂い。
裏手のボイラー室は、油と鉄と硫黄が混ざっていた。

主人が頭を下げた。

「湯温が暴れるんです。蒸気が“ドン”と鳴る。灰溜まりで火蜥蜴も見ました」

ノラが煙突を見上げる。

「理論上、油膜とスス層で熱が偏る」

カイルが槍を肩に。

「通路は俺。……へっ、我慢」

私は頷いた。

「段取りは三つ。割る→拭く→風。それから“洗い討ち」」

床の隅に、黒いぬめりが帯になっていた。
油と石鹸カスの合いの子。火蜥蜴にはごちそうだ。

「敵は三つ。油膜/スス層/火蜥蜴。順番で勝つ」

まず、割る。
重曹を薄め、微温湯で霧にして油膜へかける。
泡が静かにしずみ、ぬめりが“水”に戻る。

【清浄度:21→44】

次に、拭く。
炉口と床の“段差ライン”を光磨布で縦に通す。
きゅっ、きゅっ。
足が利く。灰の動線も一本になる。

【清浄度:44→71/行動 -6%】

「上抜き準備。熱だけ逃がす細い線で」

ノラが顎を上げる。

「理論上、湯気は梁へ。匂いは“手前”で止まる」

灰溜まりから、赤い尾がぬるりと伸びた。
火蜥蜴(サラマンダー)。背に油、腹にスス。目だけが硝子みたいに光る。

私は声を落とす。

「まず“洗う”。——重曹割り→横拭き→縦拭き」

微温湯の霧で背の油を切る。
布で横に一度、油を逃がす。
続けて縦で一枚、鱗の向きに沿って通す。

火蜥蜴の皮が“熱だけ”を持ち、炎の暴れが落ちる。
私は上抜きを細く強め、熱を梁へ送った。

カイルが短く踏み込む。

「隙、突く——短距離、突く→戻る→突く」

槍先が鱗の継ぎ目を二度、三度。
私は腹下のススを縦拭きで切り、ノラが灰受けを差し込む。

「下、受けた。理論上、沈静完了」

火蜥蜴は腹をぺたりと落とし、熱だけが上へ逃げた。

【清浄度:71→96/被弾 -8%/熱暴れ -60%(短時間)】

「仕上げ、風。横→上の二段」

風路扇を水平に、一筋。
梁で細い吸い上げを作る。
湯気は上へ、匂いは“手前”で止まる。

【清浄度:96→100】
【清浄波:小スタン1.5秒/湯温変動 -50%(短時間)】

火蜥蜴が身を丸め、腹の下に石を残した。
色は蜂蜜色、脈は安定している。

ノラが息を飲む。

「“燃焼安定石”。理論上、コア向き」

「洗ってから通す」と、私は石を布に包む。

カイルが鼻を鳴らす。

「言い回しもコア向き」

「褒めてるなら、受け取る」

灰受けの底をタグで三分。
灰/金属片/異物。
手箒で“灰だけ”をまとめたとき、金属の輪がころりと出た。
古い目盛りが刻まれている。

「“温度計の目盛板”。多分、古い浴場規格」

――――
【作業結果(浴場ボイラー)】
清浄度:21→100(所要 12分)
方式:重曹割り→拭く(光磨布)→風(横→上)+“洗い討ち”
効果:湯温変動 -50%(短時間)/熱暴れ -60%/滑り事故リスク -30%(体感)
――――

――――
【発掘判定】
清浄度:100/整理度:A/タグ精度:A → レア⭐︎⭐︎
【発見】
・燃焼安定石(小)(品質A)
・温度計の目盛板(古)(品質B)
——〈発掘補正〉:光磨布ボーナスで+段階
――――

主人が湯気越しに頭を下げた。

「音が静かだ……。湯も、呼吸してるみたいだ」

「出口のない熱だけが、暴れます」

私はタグを貼った箱を指した。

「この二点はギルド鑑定へ。残りの灰は処分します」

ノラが手帳を閉じる。

「理論上、港の“常設風路”に必要な部材、これで三つ」

カイルが扉を押さえる。

「帰り道、空けとく。……へっ、我慢」

私はうなずいた。

「帰ったら図面。風路計+魔石+安定石で、数字の風を固定する」

視界にお知らせが灯る。

【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ/職業:清掃士/レベル:25
体力:160/160 魔力:130/130 運:35(↑)
固有スキル〈お片付け〉Lv5
新規:〈熱整流〉(“洗い後”の熱だけを上へ誘導/湯温の波を平滑化)
既存:光磨布/〈発掘補正〉〈問答整理〉〈筆跡照合〉〈透読〉〈封緘解析〉〈撤収導線〉〈逆流検知〉〈現場放送〉〈会場設計〉〈夜間案内〉〈案内標生成〉〈群衆整理〉〈書類整頓〉〈記録封緘〉〈除塩拭き〉〈消臭調合〉〈結束術〉〈背ラベル生成〉〈仕分けタグ〉〈除菌配分〉〈動線マップ〉
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 62%/からいのは苦手)

「“熱整流”、来た。常設の肝」

ノラが静かに笑う。

「理論上、数字が風になる瞬間」

「現実上も、見せる」

私は光を縦に一度だけ通した。
湯気が梁に沿って細く立ち上がり、浴場の天井が一枚軽くなった。

次は、港。
数字で通る風の試作機を、組む。

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