『スキル〈お片付け〉で世界最強!? 掃除するだけで経験値25倍生活』

チャチャ

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第28話 港・常設風路の試作——数字の風を組む

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港は潮の匂い。
昨日より、少しだけ軽い。

女将が手を振った。

「うちの“空気うまい”札、評判よ」

「評判のうちに、数字を固定しよう」

ノラが図面を抱え直す。

「理論上、レンズ+魔石+安定石で“見える風”」

カイルが槍を肩にのせる。

「通路、任せろ。……へっ、我慢」

作業場は大ダクトの手前。
塩と錆と、古い木箱。

私は息を整えた。

「段取りは三つ。片付け→組立→通風。順番で勝つ」

まず、片付け。
塩の結晶を淡水で溶かす。
〈除塩拭き〉で縦に通し、床の“段差ライン”を切る。きゅっ。

【清浄度:26→59/行動 -6%】

木箱の中身を三色で仕分け。
青=部材、赤=工具、黄=“要調査”。
黄の底から、細い金具がころりと出た。

「“レンズ枠金具(古)”。……古規格、合うかも」

ノラが目盛りを合わせる。

「理論上、適合率70%」

――――
【発掘判定】
清浄度:59→(仕上げ後)98/整理度:A/タグ精度:A → レア⭐︎
【発見】
・レンズ枠金具(古)(品質B+/風路計規格に適合)
――――

次に、組立。
〈風路計レンズ欠片〉を枠金具で保持。
高純度魔石(小)をコアに、燃焼安定石(小)を並列で噛ませる。

私は光磨布で最後に縦を一度。
きゅっ。
表面の曇りが切れて、レンズの芯が澄む。

「仮設の台座は“背金(古)”で固める」

カイルがうなずく。

「背、立った」

ギルバート卿が現れた。
外套は静か、目は仕事。

「試作、監督する」

「歓迎。——通す前に、周辺は黄帯へ」

現場放送は短く繰り返す。
『黄=停止。赤は外縁に回ってください』

最後に、通風。
風路扇を胸から水平に。
レンズの前面で空気が細い線になって立ち、レンズの奥に風紋が浮いた。

「横で押して、上で吸う。横→上の二段。熱は〈熱整流〉で梁へ」

ノラが息を飲む。

「理論上、可視化成功」

女将が見上げる。

「風が、見える……糸みたい」

私は微調整ノブを一目盛りだけ回した。
安定石が温かく、魔石の光が落ち着く。
風紋の揺れが、すっと細くなる。

【清浄度:59→100】
【清浄波:小スタン1.5秒/逆流率 -75%(短時間)】
【風量:基準比 +28%/風圧変動 ±3%(安定域)】

カイルが肩を回す。

「俺の名誉(くしゃみ)も安定域」

「それは人生の安定域」

卿がレンズ越しの風紋を見つめる。

「数で示せ」

「はい。——ログ、締めます」

――――
【試作機“風路計・仮”】
構成:レンズ欠片(B+)/レンズ枠金具(B+)/高純度魔石(小・A)/燃焼安定石(小・A)/背金(古・B)
方式:横→上(二段)+〈熱整流〉
性能:風量 +28%/逆流率 -75%(短時間)/臭気層 -2段階(体感)
所要:組立 18分/調整 4分
――――

「常設にするには、枠を耐塩で作り直す必要がある」

ノラがうなずく。

「理論上、真鍮+樹脂で塩害耐性」

女将が手を打つ。

「港の鍛冶に声をかける。数字を見せれば、早い」

卿が短く言う。

「常時閉鎖は撤回済み。逆流時のみ閉鎖で設計せよ。数字は今の基準を採る」

「採用、ありがとうございます」

そのとき、ダクトの影でごそ、と音。
塩をまとったガニが二匹、足を鳴らした。
甲に塩結晶、関節が白い。

「塩ガニ。——洗ってから通す」

淡水を霧にして関節へ。
〈除塩拭き〉で縦を一回。
結晶がほどけ、脚がからんと緩む。
カイルが短距離、突く→戻る→突く。
私は風を横→上に合わせ、甲の塩を空へ捨てる。

【清浄度:100→110(短時間)/被弾 -8%】

甲の内側から、小さな石が一つころり。
透明で、芯に糸みたいな気泡。

ノラが目を細める。

「“風紋石(小)”。理論上、可視化の安定化に効く」

「発掘、ありがとう」

ポンポンがちょっとだけ跳ねる。

「たべない」

「正解」

――――
【発掘判定】
清浄度:110(短時間)/整理度:A/タグ精度:A → レア⭐︎⭐︎
【発見】
・風紋石(小)(品質A/可視化の揺れを減衰)
――――

卿がわずかに顎を引いた。

「……風が“規律”を持つ姿、初めて見た」

「道を敷いて、戻る場所を作っただけです」

女将が笑う。

「戻る場所があると、人も帰ってくる。客もね」

カイルが空を見上げる。

「旗、今日もぱん」

「ぱん、いい音」

視界にお知らせが灯る。

【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ/職業:清掃士/レベル:26
体力:162/162 魔力:132/132 運:36(↑)
固有スキル〈お片付け〉Lv5
新規:〈風紋表示〉(風路計と連動して風の“糸”を可視化/調整難度 -30%)
既存:光磨布/〈熱整流〉〈発掘補正〉〈問答整理〉〈筆跡照合〉〈透読〉〈封緘解析〉〈撤収導線〉〈逆流検知〉〈現場放送〉〈会場設計〉〈夜間案内〉〈案内標生成〉〈群衆整理〉〈書類整頓〉〈記録封緘〉〈除塩拭き〉〈消臭調合〉〈結束術〉〈背ラベル生成〉〈仕分けタグ〉〈除菌配分〉〈動線マップ〉
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 61%)

私はレンズの前に立ち、糸の風に指をかざした。
風は細く、まっすぐ、港へ抜ける。
数字は静かに、確かに立っている。

「常設版の図面、引く。耐塩枠と風紋石で“揺れゼロ”に近づける」

ノラが笑う。

「理論上、港が一枚、強くなる」

カイルが頷く。

「現実上も。……へっ、我慢」

女将が札を裏返した。
“本日、空気うまい”の下に、手書きで一行。

「“風、見えます”」

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