『スキル〈お片付け〉で世界最強!? 掃除するだけで経験値25倍生活』

チャチャ

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第29話 鍛冶場への道——泥狼は泥から剥がす

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港の風は軽い。
今日は部材の交渉に、王都の鍛冶場へ向かう。

女将が手を振った。

「耐塩の枠、頼んだよ」

「任された。数字が通る枠にする」

街道の先で、土の匂いが変わった。
用水があふれ、道が泥に沈んでいる。
荷車が一台、横倒し。木箱が散らばっていた。

ノラがしゃがむ。

「理論上、粘土分が多い。足を取られる」

カイルが槍を肩にのせた。

「通路は俺。……へっ、我慢」

「ナイス克己」

低い唸り。
藪から灰色の影が四つ、泥をまとって出てきた。泥狼だ。
泥が甲冑になって、眼だけがぎらつく。

「敵は三つ。泥鎧/足場のぬめり/散らかった荷。順番で勝つ」

まず、落とす。
灰をひとつまみ微温湯に溶かし、霧で泥に当てる。
粒がまとまり、泥が“水”へ戻る。

【清浄度:19→39】

次に、拭く。
光磨布で足場の“段差ライン”を縦に通す。
きゅっ。
踏ん張りが返る。

【清浄度:39→61/行動 -6%】

「洗ってから、通す。——横拭き→縦拭き」

私は狼の肩口へ霧を薄く。
布で横に一度、泥だけを逃がす。
続けて縦に一枚、毛並みに沿って通す。
泥鎧がはがれ、皮膚の熱が露出する。

ノラが合図する。

「理論上、熱は上で抜く」

私は上抜き細線を強め、熱だけ梁のない空へ捨てた。

カイルが短距離で踏み込む。

「突く→戻る→突く」

槍先が肩甲の継ぎ目を二度、三度。
泥狼は脚を折り、ぬめりが地へ落ちた。

【清浄度:61→88/被弾 -8%/滑り -40%(短時間)】

「仕上げ、風。横→上の二段」

細い横線が群れの足元をさらい、上の線が湿気を吸う。
残りの二頭も、洗ってから縦に通して崩した。

【清浄度:88→100】
【清浄波:小スタン1.5秒/転倒リスク -30%(短時間)】

泥の下から、琥珀色の塊がころりと出た。
指で触ると、松脂の匂い。

ノラが目を細める。

「“耐塩樹脂(小)”。理論上、枠の封止に効く」

「発掘、ありがとう」

散らかった荷を三色で仕分ける。
赤=危険物。青=部材。黄=“要調査”。
黄箱の底から、薄い金板が二枚、背を揃えて出た。

「“真鍮試片”。塩害試験の刻印あり」

カイルが感心した声を出す。

「ゴ……未整頓から宝が出るな」

「“未整頓”。帰り道を作ったから、帰ってきただけ」

――――
【戦闘結果(泥狼)】
方式:灰水→拭く(横→縦)→風(上抜き)
効果:泥鎧剥離/滑り -40%(短時間)

【発掘判定】
清浄度:100/整理度:A/タグ精度:A → レア⭐︎⭐︎
【発見】
・耐塩樹脂(小)(品質A/枠の封止材)
・真鍮試片×2(品質B+/耐塩テスト済)
――――

荷車の御者が泥を払いながら頭を下げた。

「助かった……。荷は鍛冶場行きで」

「ちょうど同じ進路。届ける」

ノラが手帳を閉じる。

「理論上、必要部材がそろう確率、上昇」

カイルが道路の端を指す。

「通路、開いた。……へっ、我慢」

「ナイス克己」

鍛冶場の煙突が見えてきた。
玄関で、無骨な男が腕を組んで待っていた。
鍛冶師・バルド。顔は怖いが、目は仕事。

「風で飯を食うって聞いた。数字を持ってきたか」

「ログと部材、持参」

私は真鍮試片と耐塩樹脂を卓に並べ、背を立てる。
風路計の簡易図と、風紋のログを添える。

バルドが舌を鳴らした。

「数字は筋が通る。枠は真鍮+樹脂封止でいく。試作、今日からだ」

「必要十分。——手伝う」

「掃除の腕は信用する。鍛冶場の床、先に一枚やってくれ」

「任された」

床の油膜を重曹割り→縦拭きで切り、横抜きで煙を逃がす。
火床の風は上抜きで扱い、熱は〈熱整流〉で梁へ。

【清浄度:24→72→100】

バルドが鼻を鳴らした。

「足が利く。火も静かだ」

「出口のない熱だけが、暴れます」

ノラがメモをとる。

「理論上、三日で常設枠の一次試験」

カイルが頷く。

「現実上も。……へっ、我慢」

視界にお知らせが灯る。

【ステータス】
名前:ミナ・ハルノ/職業:清掃士/レベル:27
体力:164/164 魔力:134/134 運:37(↑)
固有スキル〈お片付け〉Lv5
新規:〈泥落とし〉(灰水+拭きの連携を最適化/泥鎧の剥離率↑)
既存:光磨布/〈風紋表示〉〈熱整流〉〈発掘補正〉〈問答整理〉〈筆跡照合〉〈透読〉〈封緘解析〉〈撤収導線〉〈逆流検知〉〈現場放送〉〈会場設計〉〈夜間案内〉〈案内標生成〉〈群衆整理〉〈書類整頓〉〈記録封緘〉〈除塩拭き〉〈消臭調合〉〈結束術〉〈背ラベル生成〉〈仕分けタグ〉〈除菌配分〉〈動線マップ〉
相棒:洗剤スライム・ポンポン(満腹度 63%/泥は好きじゃない)

私は光を縦に一度だけ通した。
鍛冶場の床が、薄く明るく返す。
音が通り、火が呼吸した。

「三日で数字を積む。港の風、固定する」

バルドが頷く。

「旗が毎日、ぱんと鳴る街にしよう」

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