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第5章 拡がる牧場と迫る影
第48話「交差する想いと決意」
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記憶の地へ向かう朝、ほのぼの牧場の空はどこまでも澄みわたっていた。だが、ひなのの胸は穏やかではなかった。
納屋の前で旅支度を整えていたひなのの背に、悠翔の声が静かにかかった。
「準備できたか?」
「うん……少し、緊張してるだけ」
「それでいい。これから向かうのは、俺たちにとっても世界にとっても、大事な分かれ道だからな」
ふたりは並んで歩き出す。リンネが牧場の門の前で待っていた。背には矢筒、手には新しく磨かれた弓。
「遅いよ、主役たち。こっちは昨日から準備万端だってのに」
「頼りにしてるよ、リンネさん」
ひなのが微笑むと、リンネはふいと顔を背けた。
三人で出発しようとしたそのとき、背後から声がした。
「……待って」
振り返ると、リオが軽く息を弾ませて駆けてくる。
「やっぱり……俺も行く」
「リオさん……でも村を守ってって……」
「村の守りなら、もう役場の人たちと段取り済みだ。君たちを、ひなのをひとりで行かせるなんて……そんなの、無理だった」
その目は真剣だった。ひなのは一瞬驚き、やがてその決意を静かに受け止めた。
「ありがとう、リオさん……一緒に行こう」
---
記憶の地へと続く山道は、古の力で封じられていた。枯れ木と岩肌が剥き出しの荒野に、風だけが寂しく吹き抜ける。
だが四人が一歩ずつ進むたびに、草が芽吹き、道が現れていった。まるで、大地が彼らを歓迎するかのように。
「これ……女神様の加護?」
「違う……これは、お前の“想い”が道を照らしてるんだ」
悠翔の言葉に、ひなのはそっと胸に手を当てる。
そこには、光る調合瓶があった。女神の蝶の羽と自作の癒しのハーブを合わせた、特別な光の薬だった。
> ――調合薬『希望の種』を入手しました。
> 効果:闇を払う光属性ダメージ+想いの共鳴によるバフ効果
「これは……影の核を浄化するための……」
そのとき、山肌の裂け目の奥に封印の扉が現れた。古代文字が浮かび上がり、静かに光る。
「行こう。ここが“記憶の地”への最後の門だ」
悠翔が鍵を取り出し、扉に差し込む。その瞬間、光と闇がせめぎ合い、風が荒れ狂った。
「うわっ!」
リンネが弓を構え、リオがひなのを守るように前に出る。だが、光はやがて収まり、重厚な扉が静かに開いた。
中から現れたのは――
石造りの回廊。そして、記憶を抱いた者の声だった。
> 『記憶とは、光と闇の器……その選び手が来た』
「選び手……?」
ひなのは足を踏み入れる。すると、仲間たちの姿がそれぞれ一瞬、消えかけた。
「えっ……みんな!?」
「こ、これは……」
> システムメッセージ:記憶の地は、各人の想いを試す試練の地です。 ・“想いの共鳴値”が一定に達すると再合流可能。
「試練……?」
その瞬間、ひなのの前に光と闇の花畑が広がった。
懐かしい母の声、妹として過ごした日々、悠翔の笑顔、そしてリオの優しさ――あらゆる“想い”が胸を駆け巡る。
> 『あなたは何を癒したいの? 過去? 誰か? それとも、自分自身?』
ひなのは震える指で、胸の薬瓶を握った。
「私は……誰かの痛みを癒したくて、ここに来た。だから……自分も、もう逃げない」
その瞬間、光が爆ぜ、彼女の周囲に“想いの蝶”が舞い降りた。
そして回廊の向こう、影の核の眠る最奥の広間への道が開かれた。
やがて、リオ、リンネ、悠翔もそれぞれの想いを乗り越え、再び四人はひとつになった。
「みんな……!」
「揃ったな。行こう、影を終わらせに」
---
【イベント完了:交差する想いと決意】 ・リオが正式に仲間に加入! ・記憶の地、想いの試練クリア ・“希望の種”が完成
【次の目標】 ・影の核を見つけ、浄化せよ――クライマックス目前!
納屋の前で旅支度を整えていたひなのの背に、悠翔の声が静かにかかった。
「準備できたか?」
「うん……少し、緊張してるだけ」
「それでいい。これから向かうのは、俺たちにとっても世界にとっても、大事な分かれ道だからな」
ふたりは並んで歩き出す。リンネが牧場の門の前で待っていた。背には矢筒、手には新しく磨かれた弓。
「遅いよ、主役たち。こっちは昨日から準備万端だってのに」
「頼りにしてるよ、リンネさん」
ひなのが微笑むと、リンネはふいと顔を背けた。
三人で出発しようとしたそのとき、背後から声がした。
「……待って」
振り返ると、リオが軽く息を弾ませて駆けてくる。
「やっぱり……俺も行く」
「リオさん……でも村を守ってって……」
「村の守りなら、もう役場の人たちと段取り済みだ。君たちを、ひなのをひとりで行かせるなんて……そんなの、無理だった」
その目は真剣だった。ひなのは一瞬驚き、やがてその決意を静かに受け止めた。
「ありがとう、リオさん……一緒に行こう」
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記憶の地へと続く山道は、古の力で封じられていた。枯れ木と岩肌が剥き出しの荒野に、風だけが寂しく吹き抜ける。
だが四人が一歩ずつ進むたびに、草が芽吹き、道が現れていった。まるで、大地が彼らを歓迎するかのように。
「これ……女神様の加護?」
「違う……これは、お前の“想い”が道を照らしてるんだ」
悠翔の言葉に、ひなのはそっと胸に手を当てる。
そこには、光る調合瓶があった。女神の蝶の羽と自作の癒しのハーブを合わせた、特別な光の薬だった。
> ――調合薬『希望の種』を入手しました。
> 効果:闇を払う光属性ダメージ+想いの共鳴によるバフ効果
「これは……影の核を浄化するための……」
そのとき、山肌の裂け目の奥に封印の扉が現れた。古代文字が浮かび上がり、静かに光る。
「行こう。ここが“記憶の地”への最後の門だ」
悠翔が鍵を取り出し、扉に差し込む。その瞬間、光と闇がせめぎ合い、風が荒れ狂った。
「うわっ!」
リンネが弓を構え、リオがひなのを守るように前に出る。だが、光はやがて収まり、重厚な扉が静かに開いた。
中から現れたのは――
石造りの回廊。そして、記憶を抱いた者の声だった。
> 『記憶とは、光と闇の器……その選び手が来た』
「選び手……?」
ひなのは足を踏み入れる。すると、仲間たちの姿がそれぞれ一瞬、消えかけた。
「えっ……みんな!?」
「こ、これは……」
> システムメッセージ:記憶の地は、各人の想いを試す試練の地です。 ・“想いの共鳴値”が一定に達すると再合流可能。
「試練……?」
その瞬間、ひなのの前に光と闇の花畑が広がった。
懐かしい母の声、妹として過ごした日々、悠翔の笑顔、そしてリオの優しさ――あらゆる“想い”が胸を駆け巡る。
> 『あなたは何を癒したいの? 過去? 誰か? それとも、自分自身?』
ひなのは震える指で、胸の薬瓶を握った。
「私は……誰かの痛みを癒したくて、ここに来た。だから……自分も、もう逃げない」
その瞬間、光が爆ぜ、彼女の周囲に“想いの蝶”が舞い降りた。
そして回廊の向こう、影の核の眠る最奥の広間への道が開かれた。
やがて、リオ、リンネ、悠翔もそれぞれの想いを乗り越え、再び四人はひとつになった。
「みんな……!」
「揃ったな。行こう、影を終わらせに」
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【イベント完了:交差する想いと決意】 ・リオが正式に仲間に加入! ・記憶の地、想いの試練クリア ・“希望の種”が完成
【次の目標】 ・影の核を見つけ、浄化せよ――クライマックス目前!
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