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第8章 世界を揺らす黒雲
第75話「南の祠と、風の巫女」
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朝霧がまだ薄く残る中、悠翔はリュックに地図と非常食、簡易魔法灯を詰め込んでいた。
目指すは、地図の南端にかすかに記されていた「古の祠(いにしえのほこら)」──
“声”の主が最後に告げた、次なる“鍵”の場所だ。
「ひなの、今日はちょっと遠出になる。お留守番、頼めるか?」
「うん! 動物たちにはごはんあげるから、にーちゃん気をつけてね!」
妹の笑顔に背を押されて、悠翔はひとり、村の外れの山道へと向かった。
* * *
道中、馬車道を外れて山に分け入ると、空気が一気に冷たくなる。
秋が終わり、冬が支配しはじめた森の中で、木々は静かにその色を失っていた。
やがて、急な斜面の先に苔むした石段が現れた。
その先に、小さな祠──南の祠が、静かに眠っていた。
「……思ったより小さいな」
しかし、祠の中心には、明らかに“魔力の流れ”を感じる石碑があった。
そしてその前に──誰かが、いた。
銀色の髪を風になびかせ、空を仰いで立つ少女。
透き通るような衣をまとい、どこか人ならぬ雰囲気をまとう。
(人……じゃない?)
悠翔がそう感じたのと同時に、少女がふわりとこちらを振り向いた。
「ようこそ。あなたが、“選ばれし者”なのですね?」
「え……誰?」
「わたしは“風の巫女”。この祠に、長く仕えてきました。名前? もう、とっくに捨てましたよ。巫女には名は不要ですから」
その微笑みは優しく、けれどどこか、この世の人間とは違う“儚さ”を帯びていた。
「あなたに、“鍵”を渡すように言われていました。――記憶の番人から、ね」
「やっぱり、“声”は本物だったんだ……!」
巫女は、祠の奥にある祭壇へ悠翔を案内し、石碑に手を添えると、柔らかな光が浮かび上がった。
「この“風の紋章石”が、結界の核を動かすための、もう一つの“鍵”です」
「ありがとう。これで、村とみんなを守れるかもしれない……!」
巫女はうなずいたあと、急に少し寂しそうな表情を見せた。
「本当は、あなたに“警告”もしなければいけません。
結界を目覚めさせれば、同時に“眠るもの”も目を覚ます。
あなたは、世界の“蓋”を開けようとしている。覚悟は、ありますか?」
悠翔は、真っ直ぐに巫女の目を見て答えた。
「まだ怖いし、不安もある。でも……僕はこの世界に来て、たくさんの人に助けられた。
今度は、僕が守る番だと思う。覚悟は、ある」
その答えに、巫女はそっと目を伏せて、微笑んだ。
「ならば、風はあなたに味方するでしょう。これを受け取りなさい」
悠翔の手に渡されたのは、風を模した紋様が刻まれた“風紋石”と、小さな魔導具の設計書だった。
「これは……?」
「それは“風の封書”。近いうちに、“西の塔”からの使者が現れます。
彼らにこの封書を見せなさい。必ず力を貸してくれるはずです」
「……わかった」
別れの時、巫女は空を仰ぎながら静かに呟いた。
「季節が、変わるのですね」
その姿は、風に溶けるように、祠の奥へと消えていった。
* * *
帰路、森を抜けて牧場が見えてきたとき、悠翔はふと空を見上げた。
風は、静かに吹いていた。
“何か”が近づいている──
でも、それを迎え撃つための“鍵”は、今、確かに手の中にある。
---
【イベントログ】
イベント達成:「南の祠の調査」
新キャラクター:「風の巫女」(???)
重要アイテム:「風紋石」「風の封書」
新スキル獲得:「風読みの感覚(パッシブ)」→ 周囲の魔力変化を察知しやすくなる
次の導線:「西の塔」からの使者を迎える準備
結界完成進捗:50%(核アイテム2種入手)
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目指すは、地図の南端にかすかに記されていた「古の祠(いにしえのほこら)」──
“声”の主が最後に告げた、次なる“鍵”の場所だ。
「ひなの、今日はちょっと遠出になる。お留守番、頼めるか?」
「うん! 動物たちにはごはんあげるから、にーちゃん気をつけてね!」
妹の笑顔に背を押されて、悠翔はひとり、村の外れの山道へと向かった。
* * *
道中、馬車道を外れて山に分け入ると、空気が一気に冷たくなる。
秋が終わり、冬が支配しはじめた森の中で、木々は静かにその色を失っていた。
やがて、急な斜面の先に苔むした石段が現れた。
その先に、小さな祠──南の祠が、静かに眠っていた。
「……思ったより小さいな」
しかし、祠の中心には、明らかに“魔力の流れ”を感じる石碑があった。
そしてその前に──誰かが、いた。
銀色の髪を風になびかせ、空を仰いで立つ少女。
透き通るような衣をまとい、どこか人ならぬ雰囲気をまとう。
(人……じゃない?)
悠翔がそう感じたのと同時に、少女がふわりとこちらを振り向いた。
「ようこそ。あなたが、“選ばれし者”なのですね?」
「え……誰?」
「わたしは“風の巫女”。この祠に、長く仕えてきました。名前? もう、とっくに捨てましたよ。巫女には名は不要ですから」
その微笑みは優しく、けれどどこか、この世の人間とは違う“儚さ”を帯びていた。
「あなたに、“鍵”を渡すように言われていました。――記憶の番人から、ね」
「やっぱり、“声”は本物だったんだ……!」
巫女は、祠の奥にある祭壇へ悠翔を案内し、石碑に手を添えると、柔らかな光が浮かび上がった。
「この“風の紋章石”が、結界の核を動かすための、もう一つの“鍵”です」
「ありがとう。これで、村とみんなを守れるかもしれない……!」
巫女はうなずいたあと、急に少し寂しそうな表情を見せた。
「本当は、あなたに“警告”もしなければいけません。
結界を目覚めさせれば、同時に“眠るもの”も目を覚ます。
あなたは、世界の“蓋”を開けようとしている。覚悟は、ありますか?」
悠翔は、真っ直ぐに巫女の目を見て答えた。
「まだ怖いし、不安もある。でも……僕はこの世界に来て、たくさんの人に助けられた。
今度は、僕が守る番だと思う。覚悟は、ある」
その答えに、巫女はそっと目を伏せて、微笑んだ。
「ならば、風はあなたに味方するでしょう。これを受け取りなさい」
悠翔の手に渡されたのは、風を模した紋様が刻まれた“風紋石”と、小さな魔導具の設計書だった。
「これは……?」
「それは“風の封書”。近いうちに、“西の塔”からの使者が現れます。
彼らにこの封書を見せなさい。必ず力を貸してくれるはずです」
「……わかった」
別れの時、巫女は空を仰ぎながら静かに呟いた。
「季節が、変わるのですね」
その姿は、風に溶けるように、祠の奥へと消えていった。
* * *
帰路、森を抜けて牧場が見えてきたとき、悠翔はふと空を見上げた。
風は、静かに吹いていた。
“何か”が近づいている──
でも、それを迎え撃つための“鍵”は、今、確かに手の中にある。
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