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25話『うちのママ、なんかすごい』
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週末の午後。公園のベンチに座っている麻衣の隣で、ひなのが砂場に夢中になっていた。
「まゆ~、あっちで遊ぼうよー!」
砂場の向こうから、まゆちゃんが手を振っている。その隣には、まゆちゃんママ――高梨さんもいた。
「まゆちゃん、今日は元気いっぱいね」
「ね~、お昼にホットケーキ山盛り食べてたもん。糖分チャージ満タン」
くすくす笑いながら立ち上がると、麻衣の肩を軽くたたいてきたママさんが一人。
「こんにちは~。あの、田仲さんって“何でも相談に乗ってくれるママさん”って聞いて……」
「ええっ、また新しい噂が……?」
「いや、実はさ、保育園の連絡帳の書き方、迷ってて……先生に伝えたいことあるけど、どう書いたら角が立たないかなって……」
「あぁ、それなら一緒に考えましょうか」
麻衣はスマホを取り出し、文面を即興で提案する。
《〇〇について気になっている点があります。お忙しい中すみませんが、ご確認いただけると安心です》
「うわ……! やさしいけど伝わる……!」
「ちょっとしたコツですよ~。あとは“安心したい”って気持ちを添えると、先生も構えずに読めるかなって」
周囲のママたちも聞き耳を立てていたようで、ざわざわとざわめきが起こる。
「田仲さん、神……」「わかる……」「“角を立てないスキル”持ってる」
まるでRPGの称号をもらったような気分だ。
***
その晩。
「なあ、麻衣……今日、俺、課長に『話し方がやわらかくなった』って言われてさ」
「あれ? もしかして“やんわりメール講座”の成果?」
「そう。前に麻衣が書いてくれた例文、参考にしたんだ。“お忙しいところ恐れ入りますが”ってやつ」
「ふふ、それは私の十八番」
「でさ、今度、新人教育係に選ばれた」
「えっ、それ……すごいことじゃない?」
「……正直、麻衣のおかげだと思ってる」
「……もう、そんな言い方されたら、明日もがんばるしかないじゃん」
そう言いながら、キッチンの電気を消した麻衣の背中には、ほんのりと“スキル:家族をふんわり支える”という称号が光っていた――ような気がした。
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「まゆ~、あっちで遊ぼうよー!」
砂場の向こうから、まゆちゃんが手を振っている。その隣には、まゆちゃんママ――高梨さんもいた。
「まゆちゃん、今日は元気いっぱいね」
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くすくす笑いながら立ち上がると、麻衣の肩を軽くたたいてきたママさんが一人。
「こんにちは~。あの、田仲さんって“何でも相談に乗ってくれるママさん”って聞いて……」
「ええっ、また新しい噂が……?」
「いや、実はさ、保育園の連絡帳の書き方、迷ってて……先生に伝えたいことあるけど、どう書いたら角が立たないかなって……」
「あぁ、それなら一緒に考えましょうか」
麻衣はスマホを取り出し、文面を即興で提案する。
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「うわ……! やさしいけど伝わる……!」
「ちょっとしたコツですよ~。あとは“安心したい”って気持ちを添えると、先生も構えずに読めるかなって」
周囲のママたちも聞き耳を立てていたようで、ざわざわとざわめきが起こる。
「田仲さん、神……」「わかる……」「“角を立てないスキル”持ってる」
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その晩。
「なあ、麻衣……今日、俺、課長に『話し方がやわらかくなった』って言われてさ」
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「そう。前に麻衣が書いてくれた例文、参考にしたんだ。“お忙しいところ恐れ入りますが”ってやつ」
「ふふ、それは私の十八番」
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「えっ、それ……すごいことじゃない?」
「……正直、麻衣のおかげだと思ってる」
「……もう、そんな言い方されたら、明日もがんばるしかないじゃん」
そう言いながら、キッチンの電気を消した麻衣の背中には、ほんのりと“スキル:家族をふんわり支える”という称号が光っていた――ような気がした。
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