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117話『記憶の再編と、心に灯る鍵』
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土曜日の午後。子どもたちは祖父母の家に遊びに行き、雄一は久しぶりの洗車に出かけていた。
麻衣は、静かになったリビングで、あやのとの約束を果たすべくスマホを手に取る。
《共鳴パートナー:篠原あやの》
《サブクエスト:記憶の再編》
《開始条件:旧校舎跡・図書室エリアにて同時起動》
「ふふ、RPGみたい……って、あ、もうそんな時間!」
すっかり忘れていたが、あやのとはカフェの前で待ち合わせていたのだ。慌てて上着を羽織り、スマホを片手に家を出る。
旧校舎跡地の公園――かつて図書室があった場所の隣に、ベンチと小さな噴水がある。
「麻衣~! こっちこっち!」
先に着いていたあやのが、手を振っていた。制服姿で出てきた夢のイメージとは違い、大人びた落ち着きの中に懐かしい笑顔があった。
「ごめん、遅れた~」
「ううん、大丈夫。こっちもアプリ開いてたら、ちょうど通知が来てたよ」
二人がスマホをかざすと、画面が淡く光を帯び、ぴたりと共鳴する。
《記憶再編イベント開始》
《プレイヤー:田仲麻衣/篠原あやの》
《キーワード:中学時代・共有記憶・秘密の扉》
――ふわり、と空気が揺らぐ。
気づけば、周囲の景色が少しセピア色に変わっていた。
「これ……中学生のときの放課後の空気じゃない?」
「うん……たしか、あの春の日。私、麻衣に“誰にも言えないことがある”って言ったんだよ」
あやのが指差す先、記憶の中の図書室の扉がうっすらと現れている。
「この扉……開けられるかな」
麻衣が近づき、手を伸ばすと――スキルアプリが表示を更新する。
《記憶ロック解除試行》
《キーワードを入力してください:___》
「えっ、まさかのパスワード式!?」
「うわー懐かしい……私たち、そういう“合言葉”ごっこしてたよね。ほら、“魔法の一文字”って言って」
「そうそう、“未来”って言葉使ってた!」
麻衣が“ミライ”と入力すると、スマホが小さく震える。
《解除成功》
《記憶再編スタート》
扉が開いた瞬間――
ふたりの前に、中学時代の自分たちが座る図書室の風景が広がった。
静かな光、埃っぽい本の匂い。窓辺で、未来の話をしていた自分たち。
「……麻衣、覚えてる? 私、このとき“他人の気持ちが分かるときがある”って言ってたの」
「うん。最初、冗談かと思った。でも、今なら分かるよ。スキルの“原型”だったんだよね」
「たぶん、そう。私たち、当時から“芽”を持ってたんだと思う」
そのとき、アプリがふたりの画面に同時に通知を出す。
《共鳴記憶:完了》
《新スキル開放条件達成》
《麻衣:新パッシブスキル“心のアーカイブ”開放》
《あやの:スキル強化“感情のレンズ・改”獲得》
「“心のアーカイブ”……?」
「スキル名からしてすごそうなんだけど……」
麻衣のスマホにスキル説明が表示された。
>【パッシブスキル:心のアーカイブ】
> 過去に共鳴した人々との“感情の記録”を保存・再確認できる。
> 強い共鳴が起きたとき、自動で情報補助やヒントが提示される。
「なんか、日常会話が一気に“攻略メモ”になる感じ……?」
ふたりで顔を見合わせて笑う。
やがて景色がゆっくりと元に戻る。
さっきまでのセピア色は消え、風がやさしく吹いてきた。
「ありがとう、麻衣。……私、あのときの記憶をずっと“なかったこと”にしてた。でも、ちゃんと覚えててくれたんだね」
「うん。だって、大事な“つながり”だったから」
その日――
帰宅後、麻衣のスマホにまた新たな通知が届く。
《共鳴パートナー:篠原あやの 親密度上昇》
《サブスキル候補追加:共感リンク(条件:信頼度100)》
《現在:信頼度85%》
「うわ、あとちょっと! がんばれ、私!」
そう言いながら、麻衣はまた冷蔵庫のプリンに手を伸ばすのだった。
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麻衣は、静かになったリビングで、あやのとの約束を果たすべくスマホを手に取る。
《共鳴パートナー:篠原あやの》
《サブクエスト:記憶の再編》
《開始条件:旧校舎跡・図書室エリアにて同時起動》
「ふふ、RPGみたい……って、あ、もうそんな時間!」
すっかり忘れていたが、あやのとはカフェの前で待ち合わせていたのだ。慌てて上着を羽織り、スマホを片手に家を出る。
旧校舎跡地の公園――かつて図書室があった場所の隣に、ベンチと小さな噴水がある。
「麻衣~! こっちこっち!」
先に着いていたあやのが、手を振っていた。制服姿で出てきた夢のイメージとは違い、大人びた落ち着きの中に懐かしい笑顔があった。
「ごめん、遅れた~」
「ううん、大丈夫。こっちもアプリ開いてたら、ちょうど通知が来てたよ」
二人がスマホをかざすと、画面が淡く光を帯び、ぴたりと共鳴する。
《記憶再編イベント開始》
《プレイヤー:田仲麻衣/篠原あやの》
《キーワード:中学時代・共有記憶・秘密の扉》
――ふわり、と空気が揺らぐ。
気づけば、周囲の景色が少しセピア色に変わっていた。
「これ……中学生のときの放課後の空気じゃない?」
「うん……たしか、あの春の日。私、麻衣に“誰にも言えないことがある”って言ったんだよ」
あやのが指差す先、記憶の中の図書室の扉がうっすらと現れている。
「この扉……開けられるかな」
麻衣が近づき、手を伸ばすと――スキルアプリが表示を更新する。
《記憶ロック解除試行》
《キーワードを入力してください:___》
「えっ、まさかのパスワード式!?」
「うわー懐かしい……私たち、そういう“合言葉”ごっこしてたよね。ほら、“魔法の一文字”って言って」
「そうそう、“未来”って言葉使ってた!」
麻衣が“ミライ”と入力すると、スマホが小さく震える。
《解除成功》
《記憶再編スタート》
扉が開いた瞬間――
ふたりの前に、中学時代の自分たちが座る図書室の風景が広がった。
静かな光、埃っぽい本の匂い。窓辺で、未来の話をしていた自分たち。
「……麻衣、覚えてる? 私、このとき“他人の気持ちが分かるときがある”って言ってたの」
「うん。最初、冗談かと思った。でも、今なら分かるよ。スキルの“原型”だったんだよね」
「たぶん、そう。私たち、当時から“芽”を持ってたんだと思う」
そのとき、アプリがふたりの画面に同時に通知を出す。
《共鳴記憶:完了》
《新スキル開放条件達成》
《麻衣:新パッシブスキル“心のアーカイブ”開放》
《あやの:スキル強化“感情のレンズ・改”獲得》
「“心のアーカイブ”……?」
「スキル名からしてすごそうなんだけど……」
麻衣のスマホにスキル説明が表示された。
>【パッシブスキル:心のアーカイブ】
> 過去に共鳴した人々との“感情の記録”を保存・再確認できる。
> 強い共鳴が起きたとき、自動で情報補助やヒントが提示される。
「なんか、日常会話が一気に“攻略メモ”になる感じ……?」
ふたりで顔を見合わせて笑う。
やがて景色がゆっくりと元に戻る。
さっきまでのセピア色は消え、風がやさしく吹いてきた。
「ありがとう、麻衣。……私、あのときの記憶をずっと“なかったこと”にしてた。でも、ちゃんと覚えててくれたんだね」
「うん。だって、大事な“つながり”だったから」
その日――
帰宅後、麻衣のスマホにまた新たな通知が届く。
《共鳴パートナー:篠原あやの 親密度上昇》
《サブスキル候補追加:共感リンク(条件:信頼度100)》
《現在:信頼度85%》
「うわ、あとちょっと! がんばれ、私!」
そう言いながら、麻衣はまた冷蔵庫のプリンに手を伸ばすのだった。
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