「俺より先に死んだら殺すから」と背中を預けてくれた聖騎士様が、約束通り殺しに来た。私はまだ、ゾンビで居たいんです!!

ビーデシオン

文字の大きさ
9 / 25
第一章 私はまだ、ゾンビで居たいんです!!

09 美白超えて蒼白


 思えば、目を覚ましてから陽の光を浴びるのはこれが初めてかぁなんて思いつつ、どこに焦点を合わせるでもなく屋敷の門扉を眺め続ける。

 かつてのフェリクス様直伝、平民生まれを少しでも令嬢っぽく見せる所作については、完全に頭から抜け落ちてしまったので、とりあえずへその前あたりに両手を重ねてそれっぽく振る舞ってみている。

 マルレーンとのやり取りを終えて、私は今、お出掛け前の待機中というわけだ。
 提示された二つのドレスから、私は結局銀を選んだ。
 つまりは、ふわふわしたフリル付きの純白ドレスの方。

 実は、赤のドレスも試着させて貰ったのだけれど……ただでさえドレスが赤いのに、私の肌が美白すぎるせいで、緩急のインパクトがとんでもないことになってしまったのだ。

 いや、正直美白というのもおこがましい……例えるならそう、蒼白だ。
 死相が浮き出ているどころか、完全に死んでしまっているわけだから当たり前だけど、鮮烈な赤と死人の蒼が合わさった結果、第一印象が吸血鬼になってしまったのだ。

 それならばまだ、全体的に真っ白で透き通るような印象を与えた方がいい。
 統一感がありすぎて、病人に間違われそうだけど……死人とバレるよりマシだろう。

 考えてみれば、フェリクス様の言う「いろいろな準備」には、そういった隠蔽工作も含まれているのかもしれない。
 まあ、再開時の印象が印象なものだから、未だにマルレーンの言うことは信じ切れていないのだけど。

「フェリクス様も……人がせっかく生き返ったんだから、素直に喜んでくれればいいのに」

 それとも、十年経ったら情も薄れてしまうものなんだろうか。
 我ながら、一回死ぬ直前までは、それなりに良い関係を築けていたと思ったんだけど……思い違いだったんだろうか。

 なんて考えを巡らせていたら、背後から足音が近づいてくるのがわかった。
 できるだけゆっくりと振り向いて、近付く人影を視界に入れる。

「待たせた」

 振り向いた先に見えたのは、予想通りのフェリクス様だ。
 白を金色で縁取った、聖騎士のコートに純白のマント。
 釣り気味なネイビーの瞳でこちらを見据える……薄いベージュの髪色が……アレ?

「髪、切りました?」
「第一声がそれかよ」

 突っ込まれてしまったけれど、仕方がないと思う。
 あの日見た不長髪から打って変わって、フェリクス様の薄ベージュ髪は、それなりに短く切り揃えられていた。
 ウルフカットって言うんだろうか。少しふわっとした印象の髪型は、男性にしてはまだ長い方なのかもしれないけれど、あの長髪に比べれば天地の差だろう。

「いや、結構似合ってるなって」

 それは紛れもない、私の本心だ。
 正直、あの夜見た長髪はあまりにも不健康に見えるというか、なんとなく薄暗い印象がして似合っていなかったように思える。

「私の中のフェリクス様は、どちらかと言えば感情豊かな人なので」
「……意味が分からないが」
「今の方が好みってことです」
「……ふん」

 まあ、フェリクス様も私の好みになんて興味ないんだろうけどさ。
 その証拠に、歩いてきたフェリクス様はそのまま私の脇を通り過ぎて、鉄柵の門扉の方へ歩いて行ってしまった。

「……もう!」

 本当に、なんでそんなに無愛想なんだろ。
 一度は命を預け合った仲間なんだから、もう少し愛想よくしてくれてもいいのにな。
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

妹の学費欲しさに身代わりとして後宮に入ったら王太子からの思わぬ溺愛が待ち受けていました

西瓜酢昆布
恋愛
妹の学費のため主人の身代わりとして後宮に入ることとなったミミ 目立つことなく入宮期間を乗り切りあと一週間で後宮から出られるというタイミングで王太子宮から使いの者がやってきた、なんと本日お渡りがあるという連絡だった。 果たして身代わりであるミミは無事に後宮から出られるのか。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

悪役令嬢になったようなので、婚約者の為に身を引きます!!!

夕香里
恋愛
王子に婚約破棄され牢屋行き。 挙句の果てには獄中死になることを思い出した悪役令嬢のアタナシアは、家族と王子のために自分の心に蓋をして身を引くことにした。 だが、アタナシアに甦った記憶と少しずつ違う部分が出始めて……? 酷い結末を迎えるくらいなら自分から身を引こうと決めたアタナシアと王子の話。 ※小説家になろうでも投稿しています

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。