49 / 142
第一二章 生々流転
第四八話 誇りと存在意義
しおりを挟む
壁一面を占有する巨大な『蒸気式精密差分解析機』――スチーム・アナライザー・ローカスが、白い蒸気を淡く漂わせながら、静かに稼働していた。
高度な演算と情報処理、音響解析を行うこの機器は、頑強な金属フレームと、三〇〇を超える長大な金属ドラムで構成されており、高等錬成技術の粋を集めて人造されたオートマータのメンテナンスには、必要不可欠な代物だった。
レオンはアナライザー・ローカスと繋がるタイピングボードの前に座り、バックアップしておいたエリーゼの身体情報を『記録用ギアボックス』から引き出すと、備え付けの錬成用生成器に自動入力してゆく。
錬成用生成器とは、各種機器と強化ガラスを組み合わせて造られたケースで、それは人ひとりが十分に納まるサイズの、巨大な水槽を思わせた。
水槽の内側は、透明度の高い薄紅色の希釈エーテル製剤で満たされており、損傷したオートマータをそこへ浸せば、アナライザー・ローカスの音響システムと、ボックス内に刻まれた数式概念が作用し、損傷個所の再錬成が促される仕組みとなっている。
酸素吸入器のみを装着したエリーゼは、生成器の中に身体を沈め、静かに目蓋を閉じている。
全身の負傷が完全に癒えるまで、恐らく五日ほど掛かるだろう。
その間エリーゼは、微睡の中で過ごす事になる。
意識が覚醒した状態で五日間、動かずにいるという状況は苦痛だ。
故にオートマータの負傷を治療する際には、音響システムの麻酔を応用し、睡眠状態を維持するという方法が一般的だった。
レオンは入力状況を確認しつつ、生成器に取り付けられた伝声管に向かって話し掛ける。
「――問題が無ければ、この後、音響睡眠の設定に取り掛かるつもりだ。傷口を塞ぐ為の置換錬成に、五日ほど掛かる。ただ……筋肉と関節部、神経網に生じたダメージは拭えない。重篤な状態では無いにせよ、本来ならきっちりインターバルを設けて対処すべき消耗だ……でも今は状況的に厳しい。置換錬成時の自己再生能力向上に結果を委ねる」
「はい、お任せ致します」
希釈エーテル製剤の中に身を横たえたまま、エリーゼは答える。
液体の中ではあるが、酸素吸入器を介して音声を聞き取る事が出来た。
レオンはアナライザーからタイプアウトされるデータに目を通し、エリーゼの身体状況を確認していたが、ふと手を止め、顔を上げて口を開いた。
「エリーゼ。僕には戦闘や闘争の知識が無い、だからこの発言は間違っているかも知れないし、出来ない相談なのかも知れないが……それでも聞いて欲しい」
薄紅色の液体に沈むエリーゼを見遣りながら、レオンは続ける。
「――出来る限りで良い、自分の身体を気づかってくれ。今回の怪我と症状は、やはり危険だ。無謀な連戦も控えて欲しい。二週間後に仕合を決めた理由は聞いたが……理屈として理解出来ても、納得出来ないんだ」
自身の都合でエリーゼを戦わせておきながら、勝手な言い草だとは思う。
故に、レオン自身はもう、どの様に謗られても構わないと考えている。
錬成技師の責任から逃れたが為、この事態を招いたのだと感じている。
しかし、レオンとマルセルの因縁に巻き込まれ、エリーゼに命運を託さざるを得無くなった『ヤドリギ園』のシスター達、孤児達は違う。
『ヤドリギ園』の皆は、何の打算も無くエリーゼを迎え入れてくれたのだ。
その想いを、顧みて欲しかった。
レオンの言葉にエリーゼは、暫くの間沈黙し、やがて答えた。
「――オートマータの魂は、人の願望、人の理想、人の畏れ、人の憧憬……それら人の想いに、妖魔精霊の名が与えられたものでございます。ですが本来それらは形無きもの、人の裡にのみ有り、人の裡でのみ作用する筈のもの」
「……」
揺らめく薄紅色の液体に沈み、目蓋を閉じたままエリーゼは言葉を紡ぐ。
レオンは黙って耳を傾ける。
「形無きモノに真という実は無く、故にオートマータの裡は伽藍洞(がらんどう)……それでも誇らずにはいられない、妖魔精霊として、人に望まれた我であると、人に求められた我であると、その様に在るのだと、己が存在を示し、誇りたい、己が存在を遍く人々に知らしめたい……その衝動を、オートマータは空虚な胸の裡に抱えている……」
「……」
エリーゼの言わんとしている事は、理解出来る。
オートマータとは、妖魔精霊の現身であり、その性質は伝説伝記の通りに現れる――学習院で習い覚えた言葉だ。
錬成技師達は皆、そう理解しているからこそ、コッペリアの錬成に際し、力と闘争を強く望む精霊妖魔に大きな価値を見出し、その魂をエメロード・タブレットに刻み込もうと、躍起になっている。
制御が難しく、危うい物であると知りながら、力と闘争を望むのだ。
恐らくエリーゼの魂も、実際には『ナハティガル』などでは無く、力と闘争を望む類いの妖魔精霊なのだろう。
それ故の強さであり、特異性なのかも知れない。
「――それはきっと、私も同じ。その様に望む心が先に有り、ご主人様に述べた理屈と損得を後に打算した……そう言えるのかも知れません」
己が衝動と、衝動を正当化する理屈が噛み合ったが為の行動、という事か。
オートマータの錬成技術を持つ者として、飲み込まざるを得ない部分でもある。
ただ、それでも。
「解った……でも、出来得る限り、自重して欲しい――」
エリーゼの言葉にレオンは首肯し、その上で改めて口を開いた。
「僕も君の言う打算を、そして矛盾を抱えて、君に無謀を強いている――いや、僕はもっと性質が悪いのかも知れない。だけど『ヤドリギ園』のシスター達、シスター・カトリーヌや、孤児達は違う。皆、純粋にエリーゼを想っている。そこに何の打算も損得も無い。その事は覚えておいて欲しい……」
紅色の揺らめきに融けたまま、エリーゼは動かない。
が、やがて穏やかに応じた。
「ゆめ忘れる事はございません。ご主人様の想いも、『ヤドリギ園』で出会った皆の願いも、決して、違えて受け取りは致しません――」
◆ ◇ ◆ ◇
特別区画と一般居住区を隔てる、巨大かつ堅牢な石造りの城壁。
物々しい城壁の内側には、都市部までの街路を彩る、豪奢な外周庭園が広がっている。
幾何学模様のペーブメントに瑞々しい常緑樹、花壇に彫像、白亜のガゼボ。
その施設は、広大な外周庭園からほど近い、都市部郊外に建てられていた。
白い漆喰で仕上げられた、大規模な石造の建造物。
壁と同色の白い屋根は、漣の様に連なるなだらかな切妻屋根。
錬成技師の互助団体『シュミット商会』の本部施設だった。
鋳鉄パイプが配管された壁は、パイプごと輝く様な白に塗り込められている。
平屋建てで二階が無く窓も無い、錬成技師の工房としては一般的な外観だ。
ただしそのサイズは、レオンが所有する工房の軽く三〇倍はある。
大掛かりな宗教施設、或いは古代の埋葬施設を思わせた。
しかし『シュミット商会』に所属する数多の錬成技師が集い、高度な錬成作業が行える施設ともなれば、必然的にこのサイズとなるのだろう。
現在、特別区画内でも、最も活動的な新興勢力のひとつとして、貴族達から支持を集めている団体だけの事はある。
そんな巨大施設『シュミット商会』本部施設の中心には、天井の無い、広々とした空間が設けられていた。
青々とした芝生が敷かれ、光の中でトネリコの木立が影を落としていた。
所々にシロツメグサの群生が広がり、低木と花壇が見えた。
花壇の脇には、ガーデンパラソルと木製のベンチ、噴水も配置されている。
そこは、緑豊かな中庭――本部施設の中心に造られた中庭だった。
自然な風合いと、落ち着きを感じさせる、良くデザインされた中庭だ。
中庭の周囲には、意匠の施された石造りの白い列柱が見える。
列柱は等間隔に建ち並び、二〇メートル四方の空間を綺麗に切り取っていた。
穏やかな日差しが降り注ぎ、トネリコの木の梢が風にそよぐ。
木の根元には、白いワンピースを纏った年若い娘が八人。
皆それぞれに見目麗しく、艶やかなブラウンの髪は、腰に届くほど長い。
芝生に座ってシロツメグサの花を摘み、器用に束ねて花冠を作ってみたり。
或いは傍らに座る娘の頭に手を伸ばし、その花冠を被せてみたり。
長い髪に摘み取った花を、そのまま編み込む様にして微笑む娘もいる。
それは学習院に通う女学生が、無邪気にはしゃいでいるかの様な光景だった。
そして、そんな楽し気な時間を過ごす娘たちの様子を伺う様に。
その婦人は、ひとり離れた場所で、ひっそりと佇んでいた。
フリルに彩られた薄緑色のブラウス、濃紺のショールとロングスカート。
頭にはスカートと同色の小さなトーク帽。
すらりと身長が高く、身体のラインは優美にして豊満、かつ流麗だった。
綺麗に結い上げたライトブラウンの髪が美しく、白いうなじもまた美しい。
きめ細かな肌、高い鼻梁。
仄かな笑みを形作る紅い唇、口許に小さなほくろ。
大人びた気配と、妖艶な魅力に溢れている。
但し、その目許には視界を遮るかの様に、黒い布が巻かれていた。
目が見えていないという事なのだろうか。
何よりも目を惹くのは、その白い手に握られた、長大な刀剣だろう。
柄頭から鐺(こじり)まで、一八〇センチはある。
緩やかに弧を描く曲刀であり、刀身は細く、朱色の鞘に納まっていた。
果たして一息に抜き放つ事が出来るのかどうか、疑わしく思える長さだ。
「――グレナディ、そこにいるのかい?」
ふと、男の声が中庭に響いた。
婦人は静かに振り向くと、穏やかな声音で応じた。
「はいはい、グレナディはここにおりますよ? ヨハン。どうかしましたか?」
『シュミット商会』警備部担当。
グランギニョール序列、現在第四位。
『コッペリア・グレナディ』だった。
高度な演算と情報処理、音響解析を行うこの機器は、頑強な金属フレームと、三〇〇を超える長大な金属ドラムで構成されており、高等錬成技術の粋を集めて人造されたオートマータのメンテナンスには、必要不可欠な代物だった。
レオンはアナライザー・ローカスと繋がるタイピングボードの前に座り、バックアップしておいたエリーゼの身体情報を『記録用ギアボックス』から引き出すと、備え付けの錬成用生成器に自動入力してゆく。
錬成用生成器とは、各種機器と強化ガラスを組み合わせて造られたケースで、それは人ひとりが十分に納まるサイズの、巨大な水槽を思わせた。
水槽の内側は、透明度の高い薄紅色の希釈エーテル製剤で満たされており、損傷したオートマータをそこへ浸せば、アナライザー・ローカスの音響システムと、ボックス内に刻まれた数式概念が作用し、損傷個所の再錬成が促される仕組みとなっている。
酸素吸入器のみを装着したエリーゼは、生成器の中に身体を沈め、静かに目蓋を閉じている。
全身の負傷が完全に癒えるまで、恐らく五日ほど掛かるだろう。
その間エリーゼは、微睡の中で過ごす事になる。
意識が覚醒した状態で五日間、動かずにいるという状況は苦痛だ。
故にオートマータの負傷を治療する際には、音響システムの麻酔を応用し、睡眠状態を維持するという方法が一般的だった。
レオンは入力状況を確認しつつ、生成器に取り付けられた伝声管に向かって話し掛ける。
「――問題が無ければ、この後、音響睡眠の設定に取り掛かるつもりだ。傷口を塞ぐ為の置換錬成に、五日ほど掛かる。ただ……筋肉と関節部、神経網に生じたダメージは拭えない。重篤な状態では無いにせよ、本来ならきっちりインターバルを設けて対処すべき消耗だ……でも今は状況的に厳しい。置換錬成時の自己再生能力向上に結果を委ねる」
「はい、お任せ致します」
希釈エーテル製剤の中に身を横たえたまま、エリーゼは答える。
液体の中ではあるが、酸素吸入器を介して音声を聞き取る事が出来た。
レオンはアナライザーからタイプアウトされるデータに目を通し、エリーゼの身体状況を確認していたが、ふと手を止め、顔を上げて口を開いた。
「エリーゼ。僕には戦闘や闘争の知識が無い、だからこの発言は間違っているかも知れないし、出来ない相談なのかも知れないが……それでも聞いて欲しい」
薄紅色の液体に沈むエリーゼを見遣りながら、レオンは続ける。
「――出来る限りで良い、自分の身体を気づかってくれ。今回の怪我と症状は、やはり危険だ。無謀な連戦も控えて欲しい。二週間後に仕合を決めた理由は聞いたが……理屈として理解出来ても、納得出来ないんだ」
自身の都合でエリーゼを戦わせておきながら、勝手な言い草だとは思う。
故に、レオン自身はもう、どの様に謗られても構わないと考えている。
錬成技師の責任から逃れたが為、この事態を招いたのだと感じている。
しかし、レオンとマルセルの因縁に巻き込まれ、エリーゼに命運を託さざるを得無くなった『ヤドリギ園』のシスター達、孤児達は違う。
『ヤドリギ園』の皆は、何の打算も無くエリーゼを迎え入れてくれたのだ。
その想いを、顧みて欲しかった。
レオンの言葉にエリーゼは、暫くの間沈黙し、やがて答えた。
「――オートマータの魂は、人の願望、人の理想、人の畏れ、人の憧憬……それら人の想いに、妖魔精霊の名が与えられたものでございます。ですが本来それらは形無きもの、人の裡にのみ有り、人の裡でのみ作用する筈のもの」
「……」
揺らめく薄紅色の液体に沈み、目蓋を閉じたままエリーゼは言葉を紡ぐ。
レオンは黙って耳を傾ける。
「形無きモノに真という実は無く、故にオートマータの裡は伽藍洞(がらんどう)……それでも誇らずにはいられない、妖魔精霊として、人に望まれた我であると、人に求められた我であると、その様に在るのだと、己が存在を示し、誇りたい、己が存在を遍く人々に知らしめたい……その衝動を、オートマータは空虚な胸の裡に抱えている……」
「……」
エリーゼの言わんとしている事は、理解出来る。
オートマータとは、妖魔精霊の現身であり、その性質は伝説伝記の通りに現れる――学習院で習い覚えた言葉だ。
錬成技師達は皆、そう理解しているからこそ、コッペリアの錬成に際し、力と闘争を強く望む精霊妖魔に大きな価値を見出し、その魂をエメロード・タブレットに刻み込もうと、躍起になっている。
制御が難しく、危うい物であると知りながら、力と闘争を望むのだ。
恐らくエリーゼの魂も、実際には『ナハティガル』などでは無く、力と闘争を望む類いの妖魔精霊なのだろう。
それ故の強さであり、特異性なのかも知れない。
「――それはきっと、私も同じ。その様に望む心が先に有り、ご主人様に述べた理屈と損得を後に打算した……そう言えるのかも知れません」
己が衝動と、衝動を正当化する理屈が噛み合ったが為の行動、という事か。
オートマータの錬成技術を持つ者として、飲み込まざるを得ない部分でもある。
ただ、それでも。
「解った……でも、出来得る限り、自重して欲しい――」
エリーゼの言葉にレオンは首肯し、その上で改めて口を開いた。
「僕も君の言う打算を、そして矛盾を抱えて、君に無謀を強いている――いや、僕はもっと性質が悪いのかも知れない。だけど『ヤドリギ園』のシスター達、シスター・カトリーヌや、孤児達は違う。皆、純粋にエリーゼを想っている。そこに何の打算も損得も無い。その事は覚えておいて欲しい……」
紅色の揺らめきに融けたまま、エリーゼは動かない。
が、やがて穏やかに応じた。
「ゆめ忘れる事はございません。ご主人様の想いも、『ヤドリギ園』で出会った皆の願いも、決して、違えて受け取りは致しません――」
◆ ◇ ◆ ◇
特別区画と一般居住区を隔てる、巨大かつ堅牢な石造りの城壁。
物々しい城壁の内側には、都市部までの街路を彩る、豪奢な外周庭園が広がっている。
幾何学模様のペーブメントに瑞々しい常緑樹、花壇に彫像、白亜のガゼボ。
その施設は、広大な外周庭園からほど近い、都市部郊外に建てられていた。
白い漆喰で仕上げられた、大規模な石造の建造物。
壁と同色の白い屋根は、漣の様に連なるなだらかな切妻屋根。
錬成技師の互助団体『シュミット商会』の本部施設だった。
鋳鉄パイプが配管された壁は、パイプごと輝く様な白に塗り込められている。
平屋建てで二階が無く窓も無い、錬成技師の工房としては一般的な外観だ。
ただしそのサイズは、レオンが所有する工房の軽く三〇倍はある。
大掛かりな宗教施設、或いは古代の埋葬施設を思わせた。
しかし『シュミット商会』に所属する数多の錬成技師が集い、高度な錬成作業が行える施設ともなれば、必然的にこのサイズとなるのだろう。
現在、特別区画内でも、最も活動的な新興勢力のひとつとして、貴族達から支持を集めている団体だけの事はある。
そんな巨大施設『シュミット商会』本部施設の中心には、天井の無い、広々とした空間が設けられていた。
青々とした芝生が敷かれ、光の中でトネリコの木立が影を落としていた。
所々にシロツメグサの群生が広がり、低木と花壇が見えた。
花壇の脇には、ガーデンパラソルと木製のベンチ、噴水も配置されている。
そこは、緑豊かな中庭――本部施設の中心に造られた中庭だった。
自然な風合いと、落ち着きを感じさせる、良くデザインされた中庭だ。
中庭の周囲には、意匠の施された石造りの白い列柱が見える。
列柱は等間隔に建ち並び、二〇メートル四方の空間を綺麗に切り取っていた。
穏やかな日差しが降り注ぎ、トネリコの木の梢が風にそよぐ。
木の根元には、白いワンピースを纏った年若い娘が八人。
皆それぞれに見目麗しく、艶やかなブラウンの髪は、腰に届くほど長い。
芝生に座ってシロツメグサの花を摘み、器用に束ねて花冠を作ってみたり。
或いは傍らに座る娘の頭に手を伸ばし、その花冠を被せてみたり。
長い髪に摘み取った花を、そのまま編み込む様にして微笑む娘もいる。
それは学習院に通う女学生が、無邪気にはしゃいでいるかの様な光景だった。
そして、そんな楽し気な時間を過ごす娘たちの様子を伺う様に。
その婦人は、ひとり離れた場所で、ひっそりと佇んでいた。
フリルに彩られた薄緑色のブラウス、濃紺のショールとロングスカート。
頭にはスカートと同色の小さなトーク帽。
すらりと身長が高く、身体のラインは優美にして豊満、かつ流麗だった。
綺麗に結い上げたライトブラウンの髪が美しく、白いうなじもまた美しい。
きめ細かな肌、高い鼻梁。
仄かな笑みを形作る紅い唇、口許に小さなほくろ。
大人びた気配と、妖艶な魅力に溢れている。
但し、その目許には視界を遮るかの様に、黒い布が巻かれていた。
目が見えていないという事なのだろうか。
何よりも目を惹くのは、その白い手に握られた、長大な刀剣だろう。
柄頭から鐺(こじり)まで、一八〇センチはある。
緩やかに弧を描く曲刀であり、刀身は細く、朱色の鞘に納まっていた。
果たして一息に抜き放つ事が出来るのかどうか、疑わしく思える長さだ。
「――グレナディ、そこにいるのかい?」
ふと、男の声が中庭に響いた。
婦人は静かに振り向くと、穏やかな声音で応じた。
「はいはい、グレナディはここにおりますよ? ヨハン。どうかしましたか?」
『シュミット商会』警備部担当。
グランギニョール序列、現在第四位。
『コッペリア・グレナディ』だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる