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あなたの正しい時間になりたい
再出発
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あれだけ毎日暑い暑い言っていたのに猛暑は急に姿を消して秋になりあっという間に冬を迎えた。
「澁澤ぁぁぁー!島村印刷の夏目さん来てくれたぞ!サンプルあがってきたぞー!」
「あっ、ハイ、ありがとうございます!すぐ行きます!」
澪緒はカフェラテを一口すすってから立ち上がる。
あれだけあった30枚綴りのカフェラテのチケットは残り5枚になった。大切に使っていたはずだったのに、いつの間にかこんなに少なくなってしまった。
「失礼します。わっ!今回もいい仕上がり!」
「実物の日本酒のボトルに貼り付けたのがこちらになります。やっぱり加熱型押し加工は素敵ですね。澁澤さんがこの日本酒のデザインを始めてからこの加工への問い合わせ、増えてるんですよ」
潰れるかと思われていた有川デザインオフィスだが、MINAXISの新作発表会のラベルを見た飲料メーカー数社から案件をもらい細々と再スタートを切っていた。
副島は、もういない。
稼ぎ頭を失った有川デザインオフィスで澪緒は以前にもまして忙しかったが苦に思うことはなかった。仕事が好きなのと、仄暗いことがない場所で働けること。それは最上の『働きやすさ』だった。
副島と佐伯が同時に逮捕されてからの記憶は正直なかった。
いや、悲しすぎて脳をが記憶することを拒否しているかのようだった。
受注目的のキックバック、キックバックを受けた人間の金の使い道、一部が特殊な思想団体にまわっていたこと、よって公安が水面下で慎重に捜査していたこと。
澪緒が毎日知る新しい情報をインプットした端から脳のどこかにあるdeleteボタンがそれを消去していく。
そんな感じの毎日だった。
もちろん、最後に柏木に送ったメッセージは既読になることはない。
「じゃ、一旦クライアントに確認しに行きますので来週までお待ちください」
「澁澤さんが直接確認に行かれるんですか?」
「はい。事件があってから営業で何人か辞めちゃって。氷室と西脇と新人の4人だけで回してるんで。俺もデザイナーだけやってるわけにはいかないんです」
「お忙しいですね、それは!」
正直こんな行き当たりばったりなやり方でいいのか自問する時は何度もある。
でもそんなときはイヤーカフスが澪緒に自信を与えてくれる。
自信を持てと、何度も柏木は言った。
イヤーカフスを見る度孤独な潜入捜査をしながら、本来の潜入捜査に関係ない澪緒とのプレゼンを成功に導いた柏木を思い出し自分を奮い立たせる。
それに家に帰れば正式に家族になった麦が癒してくれる。
お気に入りのソファは爪研ぎで一部ボロボロになっちゃったけど。
理緋都。俺は一人で真っ当に生きてるよ。お前はどうだ?
「澁澤ぁぁぁー!島村印刷の夏目さん来てくれたぞ!サンプルあがってきたぞー!」
「あっ、ハイ、ありがとうございます!すぐ行きます!」
澪緒はカフェラテを一口すすってから立ち上がる。
あれだけあった30枚綴りのカフェラテのチケットは残り5枚になった。大切に使っていたはずだったのに、いつの間にかこんなに少なくなってしまった。
「失礼します。わっ!今回もいい仕上がり!」
「実物の日本酒のボトルに貼り付けたのがこちらになります。やっぱり加熱型押し加工は素敵ですね。澁澤さんがこの日本酒のデザインを始めてからこの加工への問い合わせ、増えてるんですよ」
潰れるかと思われていた有川デザインオフィスだが、MINAXISの新作発表会のラベルを見た飲料メーカー数社から案件をもらい細々と再スタートを切っていた。
副島は、もういない。
稼ぎ頭を失った有川デザインオフィスで澪緒は以前にもまして忙しかったが苦に思うことはなかった。仕事が好きなのと、仄暗いことがない場所で働けること。それは最上の『働きやすさ』だった。
副島と佐伯が同時に逮捕されてからの記憶は正直なかった。
いや、悲しすぎて脳をが記憶することを拒否しているかのようだった。
受注目的のキックバック、キックバックを受けた人間の金の使い道、一部が特殊な思想団体にまわっていたこと、よって公安が水面下で慎重に捜査していたこと。
澪緒が毎日知る新しい情報をインプットした端から脳のどこかにあるdeleteボタンがそれを消去していく。
そんな感じの毎日だった。
もちろん、最後に柏木に送ったメッセージは既読になることはない。
「じゃ、一旦クライアントに確認しに行きますので来週までお待ちください」
「澁澤さんが直接確認に行かれるんですか?」
「はい。事件があってから営業で何人か辞めちゃって。氷室と西脇と新人の4人だけで回してるんで。俺もデザイナーだけやってるわけにはいかないんです」
「お忙しいですね、それは!」
正直こんな行き当たりばったりなやり方でいいのか自問する時は何度もある。
でもそんなときはイヤーカフスが澪緒に自信を与えてくれる。
自信を持てと、何度も柏木は言った。
イヤーカフスを見る度孤独な潜入捜査をしながら、本来の潜入捜査に関係ない澪緒とのプレゼンを成功に導いた柏木を思い出し自分を奮い立たせる。
それに家に帰れば正式に家族になった麦が癒してくれる。
お気に入りのソファは爪研ぎで一部ボロボロになっちゃったけど。
理緋都。俺は一人で真っ当に生きてるよ。お前はどうだ?
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