オカンはパンチパーマ

Tkata

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オカンと原付

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 オカンは原付バイクに乗っていた。
 というより原付バイクを愛していた、の方が正解かもしれない。
 どこに行くにも原付バイク。当時発売していたホンダのハミング。
 生涯ホンダのバイクにしか乗らなかった。バリバリのホンダ党。
 因みにオトンも原付バイクに乗っていた。ホンダのCB50。
 夫婦揃ってホンダ党。

 当時原付バイクはヘルメット着用の完全義務化からは除外されていたのでノーヘルでバリバリ走り回っていたわけだが、オカン曰く
「ヘルメットなんか被ったらヘアスタイルが乱れるやん」
 …いやいや…パンチパーマは乱れんやろ…と今の僕ならツッコむところだが当時の僕は『そんなもんかー』などと素直に思っていた。
 幼少期に保育所に預けられていた僕だが、朝はオトンのバイクに乗せられて、夕方はオカンのバイクに乗せられて家と保育所を往復していた。
 共働き家庭だった僕はオトンの出勤と共に通所し、オカンの退勤と共に帰所するという生活を送っていた。
 オトンのCB50では座席の前に座らされウインカーの動きが好きでカチカチ動くのをずっと見ていた。オカンのハミングでは後に座らされ振り落とされないように必死でしがみついていた。よう落ちへんかったな…
 オカンが迎えに来るまでに保育所の待合室のテレビで見ていたキカイダー01。
「脳みそ見えてるやん、気持ち悪っ」とか言いながらもソーラーパワーで充電するという未来的感覚にかっこいいな、と思っていたダブスタを今だに思い出す。

 ところでここまで読んで違和感にお気づきだろうか?

 当時も今も原付の2人乗りは違法である。

 ということに。

 当時はいっぱいいてた、原付の2人乗り、いわゆるニケツ。
 そういう時代だった。
 が、お巡りさんに見つかるときっちり止められる。当然だけど。違法は違法。
 保育所からの帰り道のことだった。
 ニケツで帰宅中のオカンと僕はお巡りさんに信号待ちの時に止められた。
「ちょっと、奥さん。」
 と呼び止められたオカンはあちゃーって顔しながら
「たかし!はよ降り!」
 と言いながらまるで僕が悪いかの様に叱りながらバイクから降ろした。
 まぁお巡りさんもおおらかな時代だったので二言三言オカンに何やら言ったあと
「奥さん、もう2人乗りしたらあかんで」
 としか言わず切符を切ることもなかった。
 記憶違いでは無い。これははっきりと覚えている。人情味があると言えばそういうことなのか?令和の今なら炎上しそうな案件である。
「ほんますんませんねー」
 と言いながらオカンが愛車のハミングを発進させようとするので『置いていかれる!』と思った僕は慌てて後ろに飛び乗ると
「こら!2人乗りアカン!って止められたとこやろ!」
 と僕を叱りながらお巡りさんの方を振り返り愛想笑いを一発。
 お巡りさんも苦笑いを返すしかなかった。

 そんなん…保育園児の僕に…わからへんやん…ニケツしたらあかんて…毎日乗ってるのに…。


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