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第一章 爆速出世街道!蛮族を屠り、陰謀を砕き、巨人の王に認められるまで
第19話 強制連行。法廷相談の主役、カミーユを連れ去るサラの情熱
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サラ・ハイアン侯爵からの早馬が来たのは、ビスタニオ子爵の館の脱出事件から、一週間が経った頃だった。
王都では、早咲きの花が春風に揺れていた。
カミーユは、中庭の見えるサンルームで、手紙にナイフを入れ、内容を確認した。
手紙は二通あった。
それらを読んだカミーユは微笑み、手紙を懐に仕舞った。
「カミーユ様。お知らせが何であったか、お伺いしてもよろしいでしょうか」
フローラがおどおどと話す。
主人の手紙の内容など、従者が知るべきではない。
けれども、拉致事件の当事者として、その解決を見届けたいという好奇心が優った。
カミーユは、そんな従者の様子を見て微笑んだ。
「侯爵閣下がいらっしゃいます。日時は一週間後。お持て成しの準備をお願いします」
従者は襟を正し、立礼の構えを取る。
「かしこまりました。今すぐ手配し、万全に整えて見せます。あの、侯爵閣下は何名でお越しかお分かりになりますか」
フローラは、張り切りつつも不安気に尋ねる。
ここは王宮ではない。
立派な侯爵閣下の一団が到着しても、入る間も無いかもしれない。
カミーユは、自らの仕事を精一杯にこなす従者を愛おしく思う。
「安心してください。ハイアン侯爵閣下の御一行は、六名でいらっしゃいます」
フローラは驚き反芻する。
「六名でございますか。それはあまりにも」
少ない。
侯爵閣下ほどの立場であれば、街中のちょっとした移動でも、二十名を上回る共周りが着くはずだった。
「はい。六名です。ですので、このサンルームでお迎えすることにいたしましょう。フローラ、そのように取り計らってください」
カミーユはそう言うと、懐中の手紙をそっと撫でた。
従者はすぐに退出し、忙しく屋敷を走り回っていた。
サラ・ハイアン侯爵の手紙は、季節の挨拶と、来訪の日時と人員とが書かれたシンプルなものだった。
言葉の代わりに、マーガレットの押し花が添えられていた。
もう一通の手紙は、ロザリア・ハイアン侯爵令嬢からのものであった。
それは、自身を招待しないカミーユをなじるものであり、カミーユと、どれほど会いたいかが、伝わってくる、いじらしいものだった。
カミーユは家来に命じ、薔薇の花をロザリアに贈るように手筈した。
もちろん、カミーユの手紙も添えさせる。
それは、カミーユがロザリアに会いたく、しかしながら情勢が危険であり、あなたを危険に晒すことはできないと言う、その身を案じる内容だった。
最後に、またあなたを抱いて、語り合いたい。と、言葉を締めた。
侯爵閣下が来るまでの間、カミーユは修行に明け暮れた。
朝は師ゴダールの元で瞑想をして過ごし、昼は剣士ローレンと共に剣を学んだ。
剣士ローレンとの修行は、カミーユに懐いた巨人族のエトナ姫が、離れて見ているのが常だった。
剣士ローレンは、散々カミーユを木剣で叩いた後に言葉を放った。
「カミーユ、お前は五感が鋭敏すぎる。だからそれに頼り、気配を感じることに鈍感だ」
「気配。ですか」
カミーユは、剣士の言葉を反芻する。
「ああ、そうだ。この気配は、殺気とか、聴勁とか呼ばれるものだ。相手の動きは、もう相手がその動きを始めた頃にしか見ることはできない。だが、それじゃあ遅すぎる」
ローレンは、木剣をカミーユの喉元に突きつける。
カミーユは一歩も動くことはできなかった。
「気配は、攻めにも使える。今、俺はお前の気配の隙を付いた。人間誰しも気配の波を持っている。その弱ったところに剣を突きつければ、自ずとその剣は当たる」
ローレンは言葉を続ける。
この男は、カミーユが思っていた以上に、面倒見が良い男だった。
「カミーユ、まずは五感に頼るな。相手と己の気配を感じ取れるようになれ、この鍛錬は単純で退屈だ。それに」
ローレンは言葉を切った。
庭木は桃色の蕾を綻ばせようとしていた。
「カミーユ、この修練で、お前は獣の剣を失い、ただの見習い剣士に成り下がっちまうかもしれん」
ローレンは、一度完成した武技を手放し、最初から作り上げる苦労を語った。
カミーユは自らの願いを話す。
「構いません。私はもっと強くあり、皆を守ることができるようになりたいのです」
ローレンは答える。
「そうかい。じゃあ、打ち合いの稽古はしばらくお預けだ。カミーユ、お前を三歳の、剣を握りたてのガキとして扱う。剣を一から叩き込む。まずは素振りだ。千本やるぞ、俺のやりざまを真似てみろ」
そんな経緯で、カミーユは剣士ローレンの指導を受けた。
こうしているうちに、一週間は瞬く間に過ぎた。
カミーユは礼装に着替え、門の中で馬車を待つ。
馬車の音が聞こえ、家来が侯爵閣下の来訪を告げると、カミーユはすぐに門の前に出て、サラ・ハイアン侯爵を歓迎した。
サラの供回りは本当に五人しかおらず、御者と先導する騎兵二人、それと馬車に共に乗る家来と侍女が全てだった。
カミーユは知らないが、騎兵二人はきっと名のある武芸者に違いない。
カミーユはサラの手を取り、馬車から下ろす。
その冷たく滑らかな指先は、カミーユの鼓動を高鳴らせた。
「カミーユ・ロラン男爵。当主自らの出迎え、感謝します」
サラ・ハイアン侯爵閣下は、型通りの挨拶をした。
「侯爵閣下。荒屋ではございますが、精一杯のおもてなしをさせていただきます。どうぞこちらへ」
カミーユは、侯爵閣下一行をサンルームへ案内した。
「あら、アーモンドの花が美しいわね」
サラは、サンルームから見える木の花を褒めた。
「閣下の紹介くださった庭師が良い働きをしてくれています。さあ、どうぞこちらへ」
カミーユは、サンルームのテーブルにサラを案内し、椅子をすすめ、座らせた。
自身は向かいの席に座る。
「侯爵閣下、改めて、遠路お越しくださり、誠にありがとうございます」
「ロラン男爵、挨拶はそのくらいで良いわ。ここにいるものは安心できるもの達です。まずは子爵のことを教えてちょうだい」
カミーユは冷静に答える。
「ビスタニオ子爵閣下は、当家にご逗留いただいております。我が家の縄をいたく気に入られ、身につけていらっしゃいます。また、健康にも気を使われておられ、とても塩分の少ないお食事を召されていらっしゃいます」
サラ・ハイアン侯爵は、笑みを浮かべて頷いた。
「わかりました。子爵の手の者は来ましたか」
「はい。数度。これは子爵閣下のお忍びの逗留ゆえ、知らぬ存ぜぬでお帰りいただきました」
サラはカミーユの仕業に舌を巻いた。とても男爵に成り立てのものの動きではない。
「ロラン男爵の応対に、子爵閣下もさぞやご満足なさっているでしょう。男爵はどこでそのようなことを学ばれたのか気になります」
「お恥ずかしながら、私は北方にて蛮族と武力による交流がございました。彼らの中では高貴なものもおりましたので、浅学ながら必死に考えた次第です」
「わかりました。ロラン男爵。ところで、ビスタニオ子爵の家を離れる時、女たちの中に、巨人の娘はいましたか」
侯爵は、半ば確信を込めて尋ねた。
「はい。体がお弱りでしたので、当家にて英気を養っていただいております」
「その娘、名をエトナと言いませんでしたか」
その名は当然カミーユも知っている。
サラの意図を読むため、カミーユは尋ねる。
「はい。その少女が何か」
侯爵は頭を押さえた。
「そのエトナは巨人族の姫です。巨人族たちと、我々ベラルーン王国は、友好関係にあります。その姫がビスタニオと言う小悪党に囚われていたとなれば、大事になります」
カミーユはエトナ姫のことを思う。
姫は素直に国に帰られるのだろうか。
「わかりました。エトナ姫は、奴隷商から直接お助けしたことにした方が、よろしいでしょうか」
カミーユは提案する。
「そうね。そうなれば良いのだけれど。肝心の姫が子爵の話をしてしまったら水の泡のお話なのよ」
ハイアン侯爵は、カミーユを頼った。
「かしこまりました。エトナ姫には、私から、ことの次第をお伝えし、必要があれば、お話を合わせていただくように頼みます」
サラはカミーユの魅力を信頼している。
「任せたわよカミーユ。エトナ姫には、もうしばらくここ、ロラン男爵家に逗留いただきたいのだけど、構わないかしら」
「もちろんです。姫にはそうお伝えいたします」
サンルームの光が柔らかにカミーユを照らしていた。
サラの勘が働いた。
「あなた、もしかして、エトナ姫のこと、知っていたわね」
カミーユは素直に答える。
「はい。ご本人からお伺い致しました」
サラは呆れつつも確認する。
「それで、寝たの。寝てないの」
カミーユは率直に答える。
「光栄にも慕われ、寝所を共にしたことがございます」
「あなた。そう言うセリフも嫌味にならないのは才能かしらね」
サラ・ハイアン侯爵は、改めてカミーユを見つめた。
「カミーユ・ロラン男爵。あなたは今夜、我が家へ来なさい。明日執り行われる。真実の間。ビスタニオ子爵とあなたの審問会の打ち合わせが必要です」
打ち合わせならばこの場でもできるだろうが、カミーユはそんなことを言う野暮ではなかった。
「お誘いありがとうございます。家内のものに申しつけます。このまま発たれますか」
サラは答える。
「ええ、今すぐよ」
サラは、自身の心がこれほどまでに乱されるとは、予想外のことであった。
こうして、カミーユは、ハイアン侯爵家に向かった。
王都では、早咲きの花が春風に揺れていた。
カミーユは、中庭の見えるサンルームで、手紙にナイフを入れ、内容を確認した。
手紙は二通あった。
それらを読んだカミーユは微笑み、手紙を懐に仕舞った。
「カミーユ様。お知らせが何であったか、お伺いしてもよろしいでしょうか」
フローラがおどおどと話す。
主人の手紙の内容など、従者が知るべきではない。
けれども、拉致事件の当事者として、その解決を見届けたいという好奇心が優った。
カミーユは、そんな従者の様子を見て微笑んだ。
「侯爵閣下がいらっしゃいます。日時は一週間後。お持て成しの準備をお願いします」
従者は襟を正し、立礼の構えを取る。
「かしこまりました。今すぐ手配し、万全に整えて見せます。あの、侯爵閣下は何名でお越しかお分かりになりますか」
フローラは、張り切りつつも不安気に尋ねる。
ここは王宮ではない。
立派な侯爵閣下の一団が到着しても、入る間も無いかもしれない。
カミーユは、自らの仕事を精一杯にこなす従者を愛おしく思う。
「安心してください。ハイアン侯爵閣下の御一行は、六名でいらっしゃいます」
フローラは驚き反芻する。
「六名でございますか。それはあまりにも」
少ない。
侯爵閣下ほどの立場であれば、街中のちょっとした移動でも、二十名を上回る共周りが着くはずだった。
「はい。六名です。ですので、このサンルームでお迎えすることにいたしましょう。フローラ、そのように取り計らってください」
カミーユはそう言うと、懐中の手紙をそっと撫でた。
従者はすぐに退出し、忙しく屋敷を走り回っていた。
サラ・ハイアン侯爵の手紙は、季節の挨拶と、来訪の日時と人員とが書かれたシンプルなものだった。
言葉の代わりに、マーガレットの押し花が添えられていた。
もう一通の手紙は、ロザリア・ハイアン侯爵令嬢からのものであった。
それは、自身を招待しないカミーユをなじるものであり、カミーユと、どれほど会いたいかが、伝わってくる、いじらしいものだった。
カミーユは家来に命じ、薔薇の花をロザリアに贈るように手筈した。
もちろん、カミーユの手紙も添えさせる。
それは、カミーユがロザリアに会いたく、しかしながら情勢が危険であり、あなたを危険に晒すことはできないと言う、その身を案じる内容だった。
最後に、またあなたを抱いて、語り合いたい。と、言葉を締めた。
侯爵閣下が来るまでの間、カミーユは修行に明け暮れた。
朝は師ゴダールの元で瞑想をして過ごし、昼は剣士ローレンと共に剣を学んだ。
剣士ローレンとの修行は、カミーユに懐いた巨人族のエトナ姫が、離れて見ているのが常だった。
剣士ローレンは、散々カミーユを木剣で叩いた後に言葉を放った。
「カミーユ、お前は五感が鋭敏すぎる。だからそれに頼り、気配を感じることに鈍感だ」
「気配。ですか」
カミーユは、剣士の言葉を反芻する。
「ああ、そうだ。この気配は、殺気とか、聴勁とか呼ばれるものだ。相手の動きは、もう相手がその動きを始めた頃にしか見ることはできない。だが、それじゃあ遅すぎる」
ローレンは、木剣をカミーユの喉元に突きつける。
カミーユは一歩も動くことはできなかった。
「気配は、攻めにも使える。今、俺はお前の気配の隙を付いた。人間誰しも気配の波を持っている。その弱ったところに剣を突きつければ、自ずとその剣は当たる」
ローレンは言葉を続ける。
この男は、カミーユが思っていた以上に、面倒見が良い男だった。
「カミーユ、まずは五感に頼るな。相手と己の気配を感じ取れるようになれ、この鍛錬は単純で退屈だ。それに」
ローレンは言葉を切った。
庭木は桃色の蕾を綻ばせようとしていた。
「カミーユ、この修練で、お前は獣の剣を失い、ただの見習い剣士に成り下がっちまうかもしれん」
ローレンは、一度完成した武技を手放し、最初から作り上げる苦労を語った。
カミーユは自らの願いを話す。
「構いません。私はもっと強くあり、皆を守ることができるようになりたいのです」
ローレンは答える。
「そうかい。じゃあ、打ち合いの稽古はしばらくお預けだ。カミーユ、お前を三歳の、剣を握りたてのガキとして扱う。剣を一から叩き込む。まずは素振りだ。千本やるぞ、俺のやりざまを真似てみろ」
そんな経緯で、カミーユは剣士ローレンの指導を受けた。
こうしているうちに、一週間は瞬く間に過ぎた。
カミーユは礼装に着替え、門の中で馬車を待つ。
馬車の音が聞こえ、家来が侯爵閣下の来訪を告げると、カミーユはすぐに門の前に出て、サラ・ハイアン侯爵を歓迎した。
サラの供回りは本当に五人しかおらず、御者と先導する騎兵二人、それと馬車に共に乗る家来と侍女が全てだった。
カミーユは知らないが、騎兵二人はきっと名のある武芸者に違いない。
カミーユはサラの手を取り、馬車から下ろす。
その冷たく滑らかな指先は、カミーユの鼓動を高鳴らせた。
「カミーユ・ロラン男爵。当主自らの出迎え、感謝します」
サラ・ハイアン侯爵閣下は、型通りの挨拶をした。
「侯爵閣下。荒屋ではございますが、精一杯のおもてなしをさせていただきます。どうぞこちらへ」
カミーユは、侯爵閣下一行をサンルームへ案内した。
「あら、アーモンドの花が美しいわね」
サラは、サンルームから見える木の花を褒めた。
「閣下の紹介くださった庭師が良い働きをしてくれています。さあ、どうぞこちらへ」
カミーユは、サンルームのテーブルにサラを案内し、椅子をすすめ、座らせた。
自身は向かいの席に座る。
「侯爵閣下、改めて、遠路お越しくださり、誠にありがとうございます」
「ロラン男爵、挨拶はそのくらいで良いわ。ここにいるものは安心できるもの達です。まずは子爵のことを教えてちょうだい」
カミーユは冷静に答える。
「ビスタニオ子爵閣下は、当家にご逗留いただいております。我が家の縄をいたく気に入られ、身につけていらっしゃいます。また、健康にも気を使われておられ、とても塩分の少ないお食事を召されていらっしゃいます」
サラ・ハイアン侯爵は、笑みを浮かべて頷いた。
「わかりました。子爵の手の者は来ましたか」
「はい。数度。これは子爵閣下のお忍びの逗留ゆえ、知らぬ存ぜぬでお帰りいただきました」
サラはカミーユの仕業に舌を巻いた。とても男爵に成り立てのものの動きではない。
「ロラン男爵の応対に、子爵閣下もさぞやご満足なさっているでしょう。男爵はどこでそのようなことを学ばれたのか気になります」
「お恥ずかしながら、私は北方にて蛮族と武力による交流がございました。彼らの中では高貴なものもおりましたので、浅学ながら必死に考えた次第です」
「わかりました。ロラン男爵。ところで、ビスタニオ子爵の家を離れる時、女たちの中に、巨人の娘はいましたか」
侯爵は、半ば確信を込めて尋ねた。
「はい。体がお弱りでしたので、当家にて英気を養っていただいております」
「その娘、名をエトナと言いませんでしたか」
その名は当然カミーユも知っている。
サラの意図を読むため、カミーユは尋ねる。
「はい。その少女が何か」
侯爵は頭を押さえた。
「そのエトナは巨人族の姫です。巨人族たちと、我々ベラルーン王国は、友好関係にあります。その姫がビスタニオと言う小悪党に囚われていたとなれば、大事になります」
カミーユはエトナ姫のことを思う。
姫は素直に国に帰られるのだろうか。
「わかりました。エトナ姫は、奴隷商から直接お助けしたことにした方が、よろしいでしょうか」
カミーユは提案する。
「そうね。そうなれば良いのだけれど。肝心の姫が子爵の話をしてしまったら水の泡のお話なのよ」
ハイアン侯爵は、カミーユを頼った。
「かしこまりました。エトナ姫には、私から、ことの次第をお伝えし、必要があれば、お話を合わせていただくように頼みます」
サラはカミーユの魅力を信頼している。
「任せたわよカミーユ。エトナ姫には、もうしばらくここ、ロラン男爵家に逗留いただきたいのだけど、構わないかしら」
「もちろんです。姫にはそうお伝えいたします」
サンルームの光が柔らかにカミーユを照らしていた。
サラの勘が働いた。
「あなた、もしかして、エトナ姫のこと、知っていたわね」
カミーユは素直に答える。
「はい。ご本人からお伺い致しました」
サラは呆れつつも確認する。
「それで、寝たの。寝てないの」
カミーユは率直に答える。
「光栄にも慕われ、寝所を共にしたことがございます」
「あなた。そう言うセリフも嫌味にならないのは才能かしらね」
サラ・ハイアン侯爵は、改めてカミーユを見つめた。
「カミーユ・ロラン男爵。あなたは今夜、我が家へ来なさい。明日執り行われる。真実の間。ビスタニオ子爵とあなたの審問会の打ち合わせが必要です」
打ち合わせならばこの場でもできるだろうが、カミーユはそんなことを言う野暮ではなかった。
「お誘いありがとうございます。家内のものに申しつけます。このまま発たれますか」
サラは答える。
「ええ、今すぐよ」
サラは、自身の心がこれほどまでに乱されるとは、予想外のことであった。
こうして、カミーユは、ハイアン侯爵家に向かった。
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