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第一章 爆速出世街道!蛮族を屠り、陰謀を砕き、巨人の王に認められるまで
第20話 騎士の逆転勝訴。公爵の逃げ道を塞ぐ、侯爵の完璧な一手
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カミーユは夜が明ける前に目覚め、暖炉の残り火が目に入る。
自らの身体にも、昨夜の熱が僅かに残っていた。
サラの髪を指で梳く。愛しいその人はまだ起きる様子がない。
カミーユは毛足の短い絨毯の上に座禅を組み、瞑想に入る。
カミーユが師の教えを忘れることはない。
瞑想中、カミーユの背に柔らかなものが触れたが、カミーユの集中が途切れることはなかった。
今日はビスタニオ子爵とともに、王の前に出なければならない。
貴族同士の争いが表に出た場合、それは王の眼前、真実の間で評定がなされる。
無論、貴族同士の闘いは、世間の裏で進むことがほとんどである。
しかし、今回の事件。
カミーユは後に知ることになるが、ビスタニオ邸の脱出。として、有名になってしまっている。
若き騎士カミーユが、無実の罪で捕らえられ、同じく捕らえられていた女性たちを救い、共に脱出するという物語だ。
カミーユが多くの兵士を倒すところが、特に人気の理由のようである。
流行に聡い吟遊詩人などは、すでに盛り場でこの歌を歌っている。
つまり、表となった争いであるのだ。
ビスタニオ子爵家と、カミーユ・ロラン男爵家が相対する。
真実の間は、被疑者の回答の是非で泉の色が変わる部屋だ。
真実を述べると泉は青く、嘘を述べると泉は赤くなる。
ただし、沈黙は可能であるし、問いの内容で、ある程度答えを誘導することもできる。
だが、通常の問責に比べれば、真実を得ること大である。
そう思想していると、サラ・ハイアン侯爵が二度寝から目を覚ます。
カミーユはサラと口付けを交わすと、侍女を呼んだ。
出仕するに相応しい服装に着替えなければならないからだ。
サラも覚醒し、共に朝の支度をする。
髪を編みあげ、男装をするだけのカミーユと違い、サラは長く支度がかかる。
サラは、飽きるでしょうから、隣の部屋でお茶でも飲んでいたらと言うが、飽きることなどないと、カミーユはサラの支度を眺め続けた。
自らもいつか、このような姿が似合う日が来るのだろうか。
カミーユは思いを巡らせたが、その姿を想像することはできなかった。
しばらく経って、サラの支度ができた。美しい赤のドレスだ。
サラの緩やかなウェーブのかかった髪によく映えた。
「パンを少し食べて、お茶を飲んで、出かけましょう」
サラは、まるでデートにでも行くかのように、軽やかにカミーユを誘った。
カミーユは改めてサラに見惚れ、隣の部屋までエスコートした。
そうして、侯爵家の馬車で王宮へ向かったサラとカミーユは、馬車を降りてすぐに別れた。
サラは審問官の一人であり、カミーユは被疑者である。
カミーユは一人別室へ通され、審問の時を待った。
サラの話によると、隣の部屋にはビスタニオ子爵がいるはずだ。
ビスタニオ子爵は昨日のうちに、カミーユのロラン男爵家から、ビスタニオ子爵家へ返されていた。
カミーユは隣の部屋の心音を伺う。
意外にも心拍はゆっくりとしており、ビスタニオ子爵が緊張している様子はなかった。
カミーユとサラの作戦はシンプルだ。
問われたことに誠実に答える。
今回の事件は、争う点があまりない案件である。
どのような質問が来ても、正直に答えれば、白黒はっきりとする。
質問をするのがリヒテンハイム公爵、ビスタニオ子爵の実質的なリーダーであることは懸念点だが、今回の件は流石に庇いきれまい。
審問官の中にはサラ・ハイアン侯爵もいる。
公は早々に損切り、ビスタニオ子爵を切り捨てると思われた。
時間がたち、ついにカミーユが衛兵に呼ばれた。真実の間に案内される。
真実の間は王宮の奥にあり、窓はなく、中央に泉が湧き出ていた。
被疑者席にカミーユは行き、片膝を着き頭を垂れた。
既に、審問席には多数の貴族が集まり、被疑者席を見つめていた。
続いて、ビスタニオ子爵が入廷してきた。
カミーユは違和感を覚える。ビスタニオ子爵はカミーユの姿を見ても、なんの反応も示さなかったのだ。
カミーユは瞑想し、ビスタニオ子爵の魔力を感じ取る。
カミーユの師であるゴダール曰く、魔法をかけられたものは、その手段ではなく意図を読み取れと。
カミーユはビスタニオの魔力を観察する。
その魔力はカミーユの記憶にあった。
魔法使いカーペリオン。牢獄でカミーユの心に示唆を植え付けようとしたものだ。
まずい。カミーユは焦る。
ここは真実の間である。ビスタニオが示唆の魔術で心を操られ、問われること全てを、真実と思い込まされていればどうなるだろう。
謀られた。
カミーユはビスタニオ子爵の背後にいるものに戦慄した。
「偉大なる君主にして、真実の守護者。ゲオルグ・アレクセイ・プラソール陛下、ご入来」
衛兵が高い言葉で叫ぶ。石で出来た部屋に、うるさいほどの声が響き渡る。
王が座ると、立礼していた貴族たちも座った。
「立つことを許す」
カミーユはすくりと立ち上がった。
ビスタニオ子爵は衛兵の手を借り、よろよろと立ち上がった。
リヒテンハイム公爵が口を開く。
「それでは審問を始める。ビスタニオ子爵。そなたは邸宅にてロラン男爵の襲撃を受け、多くの兵を失った。相違ないな」
「はい。相違ありません」
泉が青く輝いた。是の印だ。
「ビスタニオ子爵、ロラン男爵の襲撃の後、ロラン家に監禁されていた。相違ないな」
「はい。相違ありません」
「ビスタニオ子爵、ロラン男爵により虐待を受けた。相違ないな」
「はい。相違ありません」
「ビスタニオ子爵。そなたはロラン男爵に攻められる由縁はなかった。相違ないな」
「はい。相違ありません」
全ての問いで泉は青く光った。
カミーユはやられたと思った。ビスタニオ子爵にかけられた魔法により、真実の間の泉が赤く光ることはなかったのだ。
貴族たちは、眉を顰めてカミーユを見やった。
リヒテンハイム公は、カミーユに質問するつもりはないようだった。
これではカミーユが申し開きをすることができない。
これが黒を白に変える手段か。
カミーユは貴族のやりように改めて嫌悪感を覚えた。
「なるほど、もはや審問を続けるまでも無いな。ロラン男爵の暴挙は明白である」
リヒテンハイム公はそう述べる。
「お待ちください閣下。審問官の一問一答が残っております」
サラ・ハイアン侯爵が声を上げる。
公爵は答える。
「審問官の質問は、審問長である私が不要と判断すれば、なされることはない。よってその質問は不要である」
真実の間に沈黙が訪れた。公爵の言う通りであった。
このまま審問は終了し、ロラン男爵の暴挙が断罪される。貴族の誰しもがそう思った。
「待て。余が求める。ハイアン侯爵よ。問いを発せよ」
国王陛下の御言葉であった。
リヒテンハイム公は頭を下げた。
ハイアン侯爵は、事前に一問一答の許可を、国王陛下から得ていたのだ。
「では、ハイアン侯爵。問いを」
サラ・ハイアン侯爵は、一歩前に出てカミーユ・ロラン男爵に問うた。
「ロラン男爵。あなたはビスタニオ子爵邸にて、巨人族の姫、エトナ様を救出した。相違ありませんか」
「はい。相違ありません」
泉は青く光った。
貴族たちはざわめいた。
巨人族といえば、若き日の国王ゲオルグ陛下が激しい戰の上で、なんとか休戦、同盟を果たした強国である。
その姫を攫っていたとなると、これは国難を呼びかねない。
国王陛下の視線を受け、リヒテンハイム公は仕方なく、ビスタニオ子爵に尋ねる。
「ビスタニオ子爵。そなたは巨人族の姫、エトナを攫っていた。相違ないか」
「はい。相違ありません」
泉は青く光った。
「もはや詮議の要はない。ビスタニオ子爵。そなたはその国逆を持って、爵位召し上げとする。処刑とせぬは、そなたの今までの働きを賞してのものと心得よ。そしてロラン男爵、大義であった」
国王陛下はそう告げて、閉廷を宣言した。
「これからは国策の話となる。主だった重鎮たちは、直ちに参内のこと」
こうして、カミーユ・ロラン男爵と、ビスタニオ子爵の真実の間の審問は閉廷となった。
カミーユはこの法廷結果により、更なる宮廷騒動へ巻き込まれてゆくことになる。
自らの身体にも、昨夜の熱が僅かに残っていた。
サラの髪を指で梳く。愛しいその人はまだ起きる様子がない。
カミーユは毛足の短い絨毯の上に座禅を組み、瞑想に入る。
カミーユが師の教えを忘れることはない。
瞑想中、カミーユの背に柔らかなものが触れたが、カミーユの集中が途切れることはなかった。
今日はビスタニオ子爵とともに、王の前に出なければならない。
貴族同士の争いが表に出た場合、それは王の眼前、真実の間で評定がなされる。
無論、貴族同士の闘いは、世間の裏で進むことがほとんどである。
しかし、今回の事件。
カミーユは後に知ることになるが、ビスタニオ邸の脱出。として、有名になってしまっている。
若き騎士カミーユが、無実の罪で捕らえられ、同じく捕らえられていた女性たちを救い、共に脱出するという物語だ。
カミーユが多くの兵士を倒すところが、特に人気の理由のようである。
流行に聡い吟遊詩人などは、すでに盛り場でこの歌を歌っている。
つまり、表となった争いであるのだ。
ビスタニオ子爵家と、カミーユ・ロラン男爵家が相対する。
真実の間は、被疑者の回答の是非で泉の色が変わる部屋だ。
真実を述べると泉は青く、嘘を述べると泉は赤くなる。
ただし、沈黙は可能であるし、問いの内容で、ある程度答えを誘導することもできる。
だが、通常の問責に比べれば、真実を得ること大である。
そう思想していると、サラ・ハイアン侯爵が二度寝から目を覚ます。
カミーユはサラと口付けを交わすと、侍女を呼んだ。
出仕するに相応しい服装に着替えなければならないからだ。
サラも覚醒し、共に朝の支度をする。
髪を編みあげ、男装をするだけのカミーユと違い、サラは長く支度がかかる。
サラは、飽きるでしょうから、隣の部屋でお茶でも飲んでいたらと言うが、飽きることなどないと、カミーユはサラの支度を眺め続けた。
自らもいつか、このような姿が似合う日が来るのだろうか。
カミーユは思いを巡らせたが、その姿を想像することはできなかった。
しばらく経って、サラの支度ができた。美しい赤のドレスだ。
サラの緩やかなウェーブのかかった髪によく映えた。
「パンを少し食べて、お茶を飲んで、出かけましょう」
サラは、まるでデートにでも行くかのように、軽やかにカミーユを誘った。
カミーユは改めてサラに見惚れ、隣の部屋までエスコートした。
そうして、侯爵家の馬車で王宮へ向かったサラとカミーユは、馬車を降りてすぐに別れた。
サラは審問官の一人であり、カミーユは被疑者である。
カミーユは一人別室へ通され、審問の時を待った。
サラの話によると、隣の部屋にはビスタニオ子爵がいるはずだ。
ビスタニオ子爵は昨日のうちに、カミーユのロラン男爵家から、ビスタニオ子爵家へ返されていた。
カミーユは隣の部屋の心音を伺う。
意外にも心拍はゆっくりとしており、ビスタニオ子爵が緊張している様子はなかった。
カミーユとサラの作戦はシンプルだ。
問われたことに誠実に答える。
今回の事件は、争う点があまりない案件である。
どのような質問が来ても、正直に答えれば、白黒はっきりとする。
質問をするのがリヒテンハイム公爵、ビスタニオ子爵の実質的なリーダーであることは懸念点だが、今回の件は流石に庇いきれまい。
審問官の中にはサラ・ハイアン侯爵もいる。
公は早々に損切り、ビスタニオ子爵を切り捨てると思われた。
時間がたち、ついにカミーユが衛兵に呼ばれた。真実の間に案内される。
真実の間は王宮の奥にあり、窓はなく、中央に泉が湧き出ていた。
被疑者席にカミーユは行き、片膝を着き頭を垂れた。
既に、審問席には多数の貴族が集まり、被疑者席を見つめていた。
続いて、ビスタニオ子爵が入廷してきた。
カミーユは違和感を覚える。ビスタニオ子爵はカミーユの姿を見ても、なんの反応も示さなかったのだ。
カミーユは瞑想し、ビスタニオ子爵の魔力を感じ取る。
カミーユの師であるゴダール曰く、魔法をかけられたものは、その手段ではなく意図を読み取れと。
カミーユはビスタニオの魔力を観察する。
その魔力はカミーユの記憶にあった。
魔法使いカーペリオン。牢獄でカミーユの心に示唆を植え付けようとしたものだ。
まずい。カミーユは焦る。
ここは真実の間である。ビスタニオが示唆の魔術で心を操られ、問われること全てを、真実と思い込まされていればどうなるだろう。
謀られた。
カミーユはビスタニオ子爵の背後にいるものに戦慄した。
「偉大なる君主にして、真実の守護者。ゲオルグ・アレクセイ・プラソール陛下、ご入来」
衛兵が高い言葉で叫ぶ。石で出来た部屋に、うるさいほどの声が響き渡る。
王が座ると、立礼していた貴族たちも座った。
「立つことを許す」
カミーユはすくりと立ち上がった。
ビスタニオ子爵は衛兵の手を借り、よろよろと立ち上がった。
リヒテンハイム公爵が口を開く。
「それでは審問を始める。ビスタニオ子爵。そなたは邸宅にてロラン男爵の襲撃を受け、多くの兵を失った。相違ないな」
「はい。相違ありません」
泉が青く輝いた。是の印だ。
「ビスタニオ子爵、ロラン男爵の襲撃の後、ロラン家に監禁されていた。相違ないな」
「はい。相違ありません」
「ビスタニオ子爵、ロラン男爵により虐待を受けた。相違ないな」
「はい。相違ありません」
「ビスタニオ子爵。そなたはロラン男爵に攻められる由縁はなかった。相違ないな」
「はい。相違ありません」
全ての問いで泉は青く光った。
カミーユはやられたと思った。ビスタニオ子爵にかけられた魔法により、真実の間の泉が赤く光ることはなかったのだ。
貴族たちは、眉を顰めてカミーユを見やった。
リヒテンハイム公は、カミーユに質問するつもりはないようだった。
これではカミーユが申し開きをすることができない。
これが黒を白に変える手段か。
カミーユは貴族のやりように改めて嫌悪感を覚えた。
「なるほど、もはや審問を続けるまでも無いな。ロラン男爵の暴挙は明白である」
リヒテンハイム公はそう述べる。
「お待ちください閣下。審問官の一問一答が残っております」
サラ・ハイアン侯爵が声を上げる。
公爵は答える。
「審問官の質問は、審問長である私が不要と判断すれば、なされることはない。よってその質問は不要である」
真実の間に沈黙が訪れた。公爵の言う通りであった。
このまま審問は終了し、ロラン男爵の暴挙が断罪される。貴族の誰しもがそう思った。
「待て。余が求める。ハイアン侯爵よ。問いを発せよ」
国王陛下の御言葉であった。
リヒテンハイム公は頭を下げた。
ハイアン侯爵は、事前に一問一答の許可を、国王陛下から得ていたのだ。
「では、ハイアン侯爵。問いを」
サラ・ハイアン侯爵は、一歩前に出てカミーユ・ロラン男爵に問うた。
「ロラン男爵。あなたはビスタニオ子爵邸にて、巨人族の姫、エトナ様を救出した。相違ありませんか」
「はい。相違ありません」
泉は青く光った。
貴族たちはざわめいた。
巨人族といえば、若き日の国王ゲオルグ陛下が激しい戰の上で、なんとか休戦、同盟を果たした強国である。
その姫を攫っていたとなると、これは国難を呼びかねない。
国王陛下の視線を受け、リヒテンハイム公は仕方なく、ビスタニオ子爵に尋ねる。
「ビスタニオ子爵。そなたは巨人族の姫、エトナを攫っていた。相違ないか」
「はい。相違ありません」
泉は青く光った。
「もはや詮議の要はない。ビスタニオ子爵。そなたはその国逆を持って、爵位召し上げとする。処刑とせぬは、そなたの今までの働きを賞してのものと心得よ。そしてロラン男爵、大義であった」
国王陛下はそう告げて、閉廷を宣言した。
「これからは国策の話となる。主だった重鎮たちは、直ちに参内のこと」
こうして、カミーユ・ロラン男爵と、ビスタニオ子爵の真実の間の審問は閉廷となった。
カミーユはこの法廷結果により、更なる宮廷騒動へ巻き込まれてゆくことになる。
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