伊澄と聖華(死にわか番外編)

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素直になれない

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「あっ……熱っ……! きたぁぁっ♡」
 お腹の奥に広がる熱に、聖華せいかはゾクゾクと身を震わせた。

 相手からの想いが強いほどそれは熱く、相手への想いが強いほど気持ちよくなる。麻薬のような愛液が、自分の中に熱く熱く注がれたのだ。
(こんなに……熱いのはじめて……! 嬉しい、愛されるってこんなに……)

 嬉しくて視界が滲む聖華の体を、少しの時間差で襲ったのは強烈な快感だった。
「あっ、あっ!? ああっ!!」
 注がれた中から背中……頭の天辺まで電撃のように走る激しい快感に、縋り付いた背中に爪を立てて受け止める。

「いっ!? ……聖華っ!?」
「——っ! うぅぅぅあああっ!」
 痙攣するほどのその快感に、聖華の足の指先が宙をもがく。
 聖華の入口がぎゅううっと強く締まり、先程だらだらと出してしまっていた男根からは、勢いよく精液が飛び出していた。
(死ぬっ、死ぬ……こんなの死んじゃうっ!)

 背中に食い込む爪も、食いちぎられそうなほどキツく締め付けられた自身の男根も、伊澄いずみにとってかなり痛むものだった。
 しかし聖華の体が、今達しているのは明らかで……自分がそうさせたのだと思うと、そんな痛みも嬉しいものに変わった。

 愛しそうに聖華の頭を撫でて、腕に優しく抱き込むと、聖華の瞳から涙が溢れてきて、胸がぐしゃぐしゃに掻き毟られるほど愛おしくなる。

 聖華も優しく撫でるその手が暖かくて、伊澄と繋がれたのが、中に注がれた熱さが堪らなく嬉しくて、幸せで……胸がいっぱいで涙が止まらなかった。

 濃厚な魔力を帯びた精液を全て体内に取り込み終わると、聖華を襲った快感は次第に収まった。
(こんなに強烈で……熱くて、気持ちよかったのなんて……はじめて……)

 それはお互いへの想いが強いことの表れで、隠しようもないくらい両想いなのだと、もう頭でも体でもわかりきっていた。

「……伊澄に、抱かれちゃった♡」
「——っ! お前……そんな可愛いこと言うのかよ」
「知らないのはお前だけだよ」
「そうか……」
 なんて照れ隠しで言ってみると、殊の外伊澄は落ち込んだような様子を見せる。

 緩められた聖華の菊座からぬるりと男根を抜くと、聖華が艶かしい声を上げるので、伊澄は思わずゴクリと唾を飲み込んだ。

 もう自分の気持ちもバレバレなくらい感じていたし、隠す必要も無いのかもしれないけれど、長年意地を張り合った手前、急に恋人同士のように甘い関係になるのはなんだか恥ずかしくて……それはとても照れるような気がして、聖華は素直に甘えられなかった。

 伊澄の方を直視できなくて、チラッチラッと視線を彷徨わせていると、伊澄が苦笑しながら聖華の頭を撫でた。
「俺なんかとじゃ大した量にはならなかっただろうが、少しは回復したか?」
「——はっ!?」

 聖華が一方的に作っていた甘い雰囲気は全て吹っ飛び、言われた事の意味を理解するのに時間を要して、3秒ほどフリーズした。

「はっ!? え! なに!?」
「全然駄目だったか!? すまん……俺は魔力が少ないから……」
 また少し落ち込むような仕草をする伊澄に、聖華はほとほと呆れ果てた、伊澄ではなく自分にだ。

 この男、死後二百年……この世界に来てから一度も他人と契っていないのだ。
 死後の存在になってから性欲が極端に薄くなるのはよくある事だ、だからそれ自体は何もおかしいことではないし、自分に対してだけ欲情してくれるなんて嬉しい事に他ならない。

 ただ、あまりにもこの世界の性的情報に疎すぎる。自分が注いだもので狂うほど絶頂した姿を見れば、多少察してくれても良さそうなものだが、今までの聖華の態度と伊澄の諦めの境地から……聖華が自分を想っているなんて可能性は、この男の頭には微塵も存在しないのだ。

「魔力は回復したから、少しとかじゃ無いから……ちゃんと……全部だから」
 少し自分で言うのは恥ずかしく、指先で髪をくるくるさせながら目線を逸らして言うと、伊澄は驚いた顔をして聖華を見た。

 そもそも魔力の回復は外から入れられるものより、自分の内側から出た多幸感や満足感……そういったもので回復するのが普通だ。

 だから、お前の魔力量は全く関係ない!!

 ……と言ってやりたいのだが、それを言うと自分が伊澄のことを好きで好きでたまらない! と告白しているようなものなので、聖華は悶々とするばかりだ。

 聖華はイキすぎてダルい体を起こしながら、年齢操作をしていない体には似合いもしない、袖の短くなったピンク色の着物で体を隠した。

「俺でも……いいのか……?」
 伊澄の真っ黒な瞳が真っ直ぐに自分を捉えて、力強く肩を掴まれれば、また胸が高鳴った。

「俺でも、お前を回復してやれるのか?」
「あ……あ、あ、あっ、アンタが毎回アタシを満足させられるとでも思ってんのっ!?」

 聖華は自分を偽る時、女口調になる。

「満足させれば俺でいいんだな! 俺だけでいいんだな!?」
「——っ!!!!!!」
 これ以上何か言うと墓穴を掘る未来しか見えなかった、聖華が何も言えなくなると、伊澄は迷わず聖華を強く抱きしめた。

「頑張るから……」
 そう言われたら顔がカァァッと熱くなって、もう何も言い返せなかった。そもそも伊澄に抱かれてしまった時点で、他の男で回復することなんてもう不可能に近かった……もう伊澄でしか回復できない体になってしまったのだ。

 自分の気持ちは全然伊澄に伝わっていないけれど、今更恋人みたいになるのは恥ずかしいし、自分達には今の関係が合っているような気がした。

 それでも一度も好きだと言ってくれなかった伊澄には、正直少し不満が残る。伊澄から言ってくれれば、自分だって少しは素直になれるのに……なんて、責任転嫁をして少しムッとした。

「……お前で満足できなかったら、俺は他の男のとこに行くからな」
「分かってる……」
(分かるなよ……バカ)

 伊澄の胸元に顔を埋めて、少し呆れるように笑ってしまった口元を隠した。愛しそうに頭と髪を撫でられて……こんな事されてるだけでも幸せなのに、満足しないなんてことがある訳がなかった。

 この関係をなんと呼称すればいいのか、二人にはまだ分からなかった。
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