27 / 191
真里編:第4章 願望
波乱の予感
しおりを挟む
仰々しい真っ黒の門を通り過ぎて、魔王様の直轄地から出る、今は一番大きい通りを歩きながら、自宅がある方へ戻っている。噴水の広場を通り過ぎて向こう側に、職場があるらしい、家から見て魔王様の直轄地と職場は、反対方向にあるというワケだ。
今は割と人が動いている時間なのか、大通りにはそこそこすれ違う人達が見える、男女比でいうと圧倒的に男が多い印象だ。
ざっと見ただけで30人くらいはいると思うんだけど、その内女性は1人だけだ。しかもその1人が男連れにも関わらず、ユキを見て隣の男の袖を掴みながらキャーキャー言っている……他にも周囲の目はかなり自分達に注がれていて、僕についても色々と言われているのが聞こえてきた。
悪口というより『見たことない人物』と、『何者なのか』という内容だ。昨日は抱えられていたせいだと思っていたけど、ユキと一緒にいるだけでも十分目立つのだと悟った。
ユキは魔界で魔王様に次ぐ実力者らしいので、まずその条件だけで人目を引く、人の関心を引く、人を惹きつける。
加えて美人である、本来男性に使う表現では無いはずだけど、濡烏という表現が一番最適だと思うほど綺麗で長い黒髪、長い睫毛、切れ長で真っ黒な瞳、整った顔立ちに真っ白な肌、可愛い犬耳まで付いてる。
先程感じた焦燥感で確信した、彼に言い寄ってくる人は多いに違いない……。
「どうした? さっきから見つめて」
「ユキってさ……」
モテるでしょ? と聞こうとして止めた、それじゃあまるで僻んでいるようだ、僻んでいるんじゃない不安なんだ。ただ不安なのを悟らせるのも嫌だった、それなら冗談っぽく言うのが一番だろう。
「恋人は何人いるの?」
「……えっ」
「……えっ!? まって! 何その反応!」
ユキの顔を見据えて詰め寄ると……逸らした! 今! 目を逸らした!!
「今は真里だけだぞ? 今までのは……恋人じゃないから!」
「それってなかなか最低発言じゃない?」
そりゃね千年以上悪魔やってれば、元恋人の100人や200人は居るだろうとは思っていたけども、今までの誰も恋人じゃないなんて、不誠実にも程があるんじゃないだろか。
「僕も"恋人じゃない"なんて、言われないように頑張る」
「まてまて! 真里なにか勘違いしてないか!?」
僕はなかなか大変な人を好きになってしまったようだ、まぁ何が起きても僕から離れる気は無いけど。ユキから要らないって言われたらどうしよう、それこそトラウマが塗り変わりそうだ……魂が消えて無くなりそうなくらいのダメージを受ける自信がある。
「こんな所で話すのもあれだし、一度部屋に帰らないか?」
苦笑いしたユキが指差した先には自宅が……もう目の前まで戻って来ていた。
「僕の職場、行くんじゃないの?」
「い、行くけど……そんな顔されたまま行かせるのも、離れるのも嫌だなぁと思って」
そんな顔ってどんな顔だよ、眉間にシワが寄ってるだけだよ。
往来でユキとこんなやりとりをしていたせいか、周りが痴話喧嘩だと嬉しそうにざわつきはじめた。なんで男同士なのに痴話喧嘩という言葉が、当然のように飛び交うのか! だんだん外で話してるのが恥ずかしくなって来た。
「わかった、一回帰ろう」
承諾を告げると、僕の肩を抱きながらユキが歩き出した、昨日も平気で僕を抱えたまま連れ帰られたけど、ユキは同性だとか、人目とか全く気にしない。
僕は流石に全く気にしないわけではないから、少しソワソワしてしまう。
「もしかして、俺の気持ち伝わってない?」
玄関入るなり壁ドンだ、まぁドンではなくスッと壁を背に迫られただけだけど。
ユキは怒ってるような感じではなく、どちらかというと悲しそうに言った、ユキの白い手が僕の頬を撫でたので、その手の上に自分の手を重ねた。
「ユキはこの世界で特別な存在なんだって、少し周りを見ただけでも分かった、僕には特別なものなんて何も無いから……君を繋ぎとめておく自信がないよ」
「なんで……! 真里にとっては俺と過ごした時間は十年かもしれない、けど俺が待った時間は千年だ…… 気まぐれや偶然で連れてきたわけじゃない!」
「理解してても不安だよ! だって僕は君を独り占めしたいんだ! 他の人になんて絶対触らせたくない!」
ユキの襟元を掴んで引き寄せてキスした、自分がこんなに独占欲が強いなんて知らなかった。
「面倒くさいだろ、嫌にならない?」
「まさか」
顔を真っ赤にして耳を垂らしたユキが、おでこをコツンと合わせてきた、こんな可愛い顔、他の誰にも見せないでほしい。
「俺は真里の事忘れたことなんて一度もなかった、それでも16年前まで……真里とこうして再会できるなんて思ってなかったんだ」
僕にとってはついこの間まで夢で会っていた相手だけど、ユキからすれば千年も経っているんだ。それは僕にとっては途方も無い時間だ、想像できる長さじゃ無い……その間ずっと覚えていてくれた、見つけ出してくれた、僕は自惚れてもいいんだろうか、ユキにとって特別な存在なんだと。
「だからその……今までちょっと遊び過ぎてたところがあったんだが……」
ん? なんだか話の流れが変わったような? 遊び過ぎたってどういう意味で?
「真里を迎えるにあたりだな……色々と清算をしたんだが」
「うん……?」
「一人関係を切りたくないとゴネてる奴が居て」
「まって! 遊び過ぎたって、その……恋人関係としてって事!?」
「いや、肉体関係としてだ」
どストレートに言われた、複雑な心境なんだけど!
「そいつが、実は真里の配属先に居るんだ」
「は……!?」
なんてこった、職場で修羅場確定じゃないか!
今は割と人が動いている時間なのか、大通りにはそこそこすれ違う人達が見える、男女比でいうと圧倒的に男が多い印象だ。
ざっと見ただけで30人くらいはいると思うんだけど、その内女性は1人だけだ。しかもその1人が男連れにも関わらず、ユキを見て隣の男の袖を掴みながらキャーキャー言っている……他にも周囲の目はかなり自分達に注がれていて、僕についても色々と言われているのが聞こえてきた。
悪口というより『見たことない人物』と、『何者なのか』という内容だ。昨日は抱えられていたせいだと思っていたけど、ユキと一緒にいるだけでも十分目立つのだと悟った。
ユキは魔界で魔王様に次ぐ実力者らしいので、まずその条件だけで人目を引く、人の関心を引く、人を惹きつける。
加えて美人である、本来男性に使う表現では無いはずだけど、濡烏という表現が一番最適だと思うほど綺麗で長い黒髪、長い睫毛、切れ長で真っ黒な瞳、整った顔立ちに真っ白な肌、可愛い犬耳まで付いてる。
先程感じた焦燥感で確信した、彼に言い寄ってくる人は多いに違いない……。
「どうした? さっきから見つめて」
「ユキってさ……」
モテるでしょ? と聞こうとして止めた、それじゃあまるで僻んでいるようだ、僻んでいるんじゃない不安なんだ。ただ不安なのを悟らせるのも嫌だった、それなら冗談っぽく言うのが一番だろう。
「恋人は何人いるの?」
「……えっ」
「……えっ!? まって! 何その反応!」
ユキの顔を見据えて詰め寄ると……逸らした! 今! 目を逸らした!!
「今は真里だけだぞ? 今までのは……恋人じゃないから!」
「それってなかなか最低発言じゃない?」
そりゃね千年以上悪魔やってれば、元恋人の100人や200人は居るだろうとは思っていたけども、今までの誰も恋人じゃないなんて、不誠実にも程があるんじゃないだろか。
「僕も"恋人じゃない"なんて、言われないように頑張る」
「まてまて! 真里なにか勘違いしてないか!?」
僕はなかなか大変な人を好きになってしまったようだ、まぁ何が起きても僕から離れる気は無いけど。ユキから要らないって言われたらどうしよう、それこそトラウマが塗り変わりそうだ……魂が消えて無くなりそうなくらいのダメージを受ける自信がある。
「こんな所で話すのもあれだし、一度部屋に帰らないか?」
苦笑いしたユキが指差した先には自宅が……もう目の前まで戻って来ていた。
「僕の職場、行くんじゃないの?」
「い、行くけど……そんな顔されたまま行かせるのも、離れるのも嫌だなぁと思って」
そんな顔ってどんな顔だよ、眉間にシワが寄ってるだけだよ。
往来でユキとこんなやりとりをしていたせいか、周りが痴話喧嘩だと嬉しそうにざわつきはじめた。なんで男同士なのに痴話喧嘩という言葉が、当然のように飛び交うのか! だんだん外で話してるのが恥ずかしくなって来た。
「わかった、一回帰ろう」
承諾を告げると、僕の肩を抱きながらユキが歩き出した、昨日も平気で僕を抱えたまま連れ帰られたけど、ユキは同性だとか、人目とか全く気にしない。
僕は流石に全く気にしないわけではないから、少しソワソワしてしまう。
「もしかして、俺の気持ち伝わってない?」
玄関入るなり壁ドンだ、まぁドンではなくスッと壁を背に迫られただけだけど。
ユキは怒ってるような感じではなく、どちらかというと悲しそうに言った、ユキの白い手が僕の頬を撫でたので、その手の上に自分の手を重ねた。
「ユキはこの世界で特別な存在なんだって、少し周りを見ただけでも分かった、僕には特別なものなんて何も無いから……君を繋ぎとめておく自信がないよ」
「なんで……! 真里にとっては俺と過ごした時間は十年かもしれない、けど俺が待った時間は千年だ…… 気まぐれや偶然で連れてきたわけじゃない!」
「理解してても不安だよ! だって僕は君を独り占めしたいんだ! 他の人になんて絶対触らせたくない!」
ユキの襟元を掴んで引き寄せてキスした、自分がこんなに独占欲が強いなんて知らなかった。
「面倒くさいだろ、嫌にならない?」
「まさか」
顔を真っ赤にして耳を垂らしたユキが、おでこをコツンと合わせてきた、こんな可愛い顔、他の誰にも見せないでほしい。
「俺は真里の事忘れたことなんて一度もなかった、それでも16年前まで……真里とこうして再会できるなんて思ってなかったんだ」
僕にとってはついこの間まで夢で会っていた相手だけど、ユキからすれば千年も経っているんだ。それは僕にとっては途方も無い時間だ、想像できる長さじゃ無い……その間ずっと覚えていてくれた、見つけ出してくれた、僕は自惚れてもいいんだろうか、ユキにとって特別な存在なんだと。
「だからその……今までちょっと遊び過ぎてたところがあったんだが……」
ん? なんだか話の流れが変わったような? 遊び過ぎたってどういう意味で?
「真里を迎えるにあたりだな……色々と清算をしたんだが」
「うん……?」
「一人関係を切りたくないとゴネてる奴が居て」
「まって! 遊び過ぎたって、その……恋人関係としてって事!?」
「いや、肉体関係としてだ」
どストレートに言われた、複雑な心境なんだけど!
「そいつが、実は真里の配属先に居るんだ」
「は……!?」
なんてこった、職場で修羅場確定じゃないか!
0
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる