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真里編:第4章 願望
誰が一番過保護なのか
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「俺も!」
「ユキは来なくていいよ」
「でも……!」
あたふたするユキを見てルイさんが両頬を膨らましている、多分吹き出すのをこらえているんだろう。
いや少しブフッと漏れている。
「ユキは落ち着いてください、真里 これを」
そういってカズヤさんから渡されたのは、ユキが維持部隊のメンバーと連絡を取り合っていたインカムだった。
「何かあったらこれで連絡して、位置情報も把握できるから」
「ありがとうございます」
「その手があったか!」
ポンとユキが手を打つと、カズヤさんが"しっかりしてください"とたしなめた。
「ウチはお前らみたいに武闘派じゃないからな、そんな物騒なこと起きねぇよ」
伊澄さんは苦笑いである、そりゃそうだ、自部署で何か起こるんじゃないかと疑われているんだから。
「だいたい直血の悪魔に手出ししようなんて奴、ウチには居ないぞ……アイツ以外は」
「そのアイツを案じて渡しているんですよ」
「そうだな、正しい判断だ」
会話が物騒です!
ユキを見ると引きつり笑いである。あぁそうか、言わなくても分かるよ、アイツって言うのは例の人を指しているってわけね、冗談ぽく会話しているのであまり深刻には聞こえないんだけど……。
はぁとユキがため息を吐いてから片手を上げる、その指先に力が集まるのが見えた。ユキのもう片方の空いた手で、フードをパサッと被せられる、なんだろう?
「インカムだけじゃ不安だから、真里に一つ便利な技を伝授しよう」
「えっ! なになに!?」
ちょっとワクワクしてしまう。
「この指先、見えてるんだろう? 同等の魔力量を力の元に流し込んでみて」
「こう?」
同じくらいの質量の魔力をユキの指先に当てると、ポンっと小さく空気がはじけるような音が鳴り、ユキの指先も僕の指先もどちらの魔力も消えて無くなった。
「……なにこれ」
「一発!?」
「……ほぅ、やはり管理課には勿体ないな」
カズヤさんとルイさんが感心してくれてとても嬉しいけど、起こった事象が地味過ぎて感心される所以が分からない。空気弾けただけなんですけど!? これ何かの役に立つ!?
「今のが魔力相殺だ、魔力量が増えても原理は同じだから、単純な魔力の撃ち合いなら大概これでなんとかなる」
「へぇ! 魔力の使い方って結構単純なんだね!」
「まぁ、普通は相手の魔力使用量を正確に把握するのに時間がかかるんだが……真里なら出来ると思ったよ」
フードを剥がして頭をワシワシと撫でられた、大した努力もしてないのに褒められるのはちょっと気恥ずかしい。そしてルイさんがボソッと"わーペアルックかー"と呟いたのがもっと恥ずかしかった。
やっぱりこの耳付きフード恥ずかしいよ!
「少しでも嫌なことがあったら呼んでくれ、飛んでいくからな! あと複数人に囲まれた時は躊躇なく連絡すること!」
「君も人の事言えないくらい過保護だね」
思わず苦笑してしまう。
昨日カズヤさんになんて言ってたっけ? と言おうとしたら、ユキが僕の腰を正面から抱き寄せながら顔を近づけてきた、これ絶対キスする気だ! そう確信して、僕はとっさにユキの口を両手で覆った。
「ふぁに?(なに)」
「こっちのセリフだよ、何してんの!?」
ユキが少し離れたので口元の手を緩めた。
「離れる前にキスしたいと思って」
「僕は人前でそういったことはやらないからね」
しかもこんな周り至近距離で囲まれた中で!? ユキは人目を憚らないにも程がある! しかし、周りの人間はユキのこういった行動を平然として見ている! ユキっていつもこんな事してるの!? これが普通なの!?
「ハハッ、あんまり強引だと嫌われるんじゃないか?」
「お前みたいに手も足も口も出せないような腑抜けの方がどうかと思うけどな」
ええぇ……っ!?
笑い飛ばした伊澄さんに、ユキがケンカをふっかけた。明らかに伊澄さんの表情が曇る、二人は仲が良さそうな印象だったんだけど!? その場が一瞬凍りついたようにシンとした。
「そうだな、俺はヘタレだからな」
「全くだ、そんな顔するくらいなら行動に移せ」
よかった、一瞬喧嘩でも始まるのかとヒヤッとした、何故ユキはわざわざ伊澄さんを怒らせることを言うんだろう……しかも、言われた伊澄さんよりユキの方が不機嫌だ。
千年も悪魔してるのになんとも大人げない、呆れ半分に未だに腰を抱きかかえられたままなので、放して欲しいという意図でユキの腕にポンポンと合図した。
ムスッとした顔のユキが僕の肩口に顔を埋めて、額をグリグリと押し付けてきたので、まぁこのくらいならと今度はその背中をポンポンと叩いた。
そういえばユキは夢の中でも、落ち込んでるとよくこうやってグリグリしてきたんだった。
ふふふっと、ユキが心底嬉しそうに笑いはじめて、周りがびっくりした顔をしてるのに気付いてユキをひっぺがした。
なんでユキがキスしようとしても平然としてるのに、僕がユキをあやしてるだけで引かれなければならないんだ! めちゃくちゃ恥ずかしい!
それでも顔を上げたユキの顔がふにゃふにゃで可愛過ぎたので、恥ずかしさは一瞬で飛んでいった。そんなに喜んでくれるなら僕の羞恥心なんて遥か彼方だ。
「ユキは来なくていいよ」
「でも……!」
あたふたするユキを見てルイさんが両頬を膨らましている、多分吹き出すのをこらえているんだろう。
いや少しブフッと漏れている。
「ユキは落ち着いてください、真里 これを」
そういってカズヤさんから渡されたのは、ユキが維持部隊のメンバーと連絡を取り合っていたインカムだった。
「何かあったらこれで連絡して、位置情報も把握できるから」
「ありがとうございます」
「その手があったか!」
ポンとユキが手を打つと、カズヤさんが"しっかりしてください"とたしなめた。
「ウチはお前らみたいに武闘派じゃないからな、そんな物騒なこと起きねぇよ」
伊澄さんは苦笑いである、そりゃそうだ、自部署で何か起こるんじゃないかと疑われているんだから。
「だいたい直血の悪魔に手出ししようなんて奴、ウチには居ないぞ……アイツ以外は」
「そのアイツを案じて渡しているんですよ」
「そうだな、正しい判断だ」
会話が物騒です!
ユキを見ると引きつり笑いである。あぁそうか、言わなくても分かるよ、アイツって言うのは例の人を指しているってわけね、冗談ぽく会話しているのであまり深刻には聞こえないんだけど……。
はぁとユキがため息を吐いてから片手を上げる、その指先に力が集まるのが見えた。ユキのもう片方の空いた手で、フードをパサッと被せられる、なんだろう?
「インカムだけじゃ不安だから、真里に一つ便利な技を伝授しよう」
「えっ! なになに!?」
ちょっとワクワクしてしまう。
「この指先、見えてるんだろう? 同等の魔力量を力の元に流し込んでみて」
「こう?」
同じくらいの質量の魔力をユキの指先に当てると、ポンっと小さく空気がはじけるような音が鳴り、ユキの指先も僕の指先もどちらの魔力も消えて無くなった。
「……なにこれ」
「一発!?」
「……ほぅ、やはり管理課には勿体ないな」
カズヤさんとルイさんが感心してくれてとても嬉しいけど、起こった事象が地味過ぎて感心される所以が分からない。空気弾けただけなんですけど!? これ何かの役に立つ!?
「今のが魔力相殺だ、魔力量が増えても原理は同じだから、単純な魔力の撃ち合いなら大概これでなんとかなる」
「へぇ! 魔力の使い方って結構単純なんだね!」
「まぁ、普通は相手の魔力使用量を正確に把握するのに時間がかかるんだが……真里なら出来ると思ったよ」
フードを剥がして頭をワシワシと撫でられた、大した努力もしてないのに褒められるのはちょっと気恥ずかしい。そしてルイさんがボソッと"わーペアルックかー"と呟いたのがもっと恥ずかしかった。
やっぱりこの耳付きフード恥ずかしいよ!
「少しでも嫌なことがあったら呼んでくれ、飛んでいくからな! あと複数人に囲まれた時は躊躇なく連絡すること!」
「君も人の事言えないくらい過保護だね」
思わず苦笑してしまう。
昨日カズヤさんになんて言ってたっけ? と言おうとしたら、ユキが僕の腰を正面から抱き寄せながら顔を近づけてきた、これ絶対キスする気だ! そう確信して、僕はとっさにユキの口を両手で覆った。
「ふぁに?(なに)」
「こっちのセリフだよ、何してんの!?」
ユキが少し離れたので口元の手を緩めた。
「離れる前にキスしたいと思って」
「僕は人前でそういったことはやらないからね」
しかもこんな周り至近距離で囲まれた中で!? ユキは人目を憚らないにも程がある! しかし、周りの人間はユキのこういった行動を平然として見ている! ユキっていつもこんな事してるの!? これが普通なの!?
「ハハッ、あんまり強引だと嫌われるんじゃないか?」
「お前みたいに手も足も口も出せないような腑抜けの方がどうかと思うけどな」
ええぇ……っ!?
笑い飛ばした伊澄さんに、ユキがケンカをふっかけた。明らかに伊澄さんの表情が曇る、二人は仲が良さそうな印象だったんだけど!? その場が一瞬凍りついたようにシンとした。
「そうだな、俺はヘタレだからな」
「全くだ、そんな顔するくらいなら行動に移せ」
よかった、一瞬喧嘩でも始まるのかとヒヤッとした、何故ユキはわざわざ伊澄さんを怒らせることを言うんだろう……しかも、言われた伊澄さんよりユキの方が不機嫌だ。
千年も悪魔してるのになんとも大人げない、呆れ半分に未だに腰を抱きかかえられたままなので、放して欲しいという意図でユキの腕にポンポンと合図した。
ムスッとした顔のユキが僕の肩口に顔を埋めて、額をグリグリと押し付けてきたので、まぁこのくらいならと今度はその背中をポンポンと叩いた。
そういえばユキは夢の中でも、落ち込んでるとよくこうやってグリグリしてきたんだった。
ふふふっと、ユキが心底嬉しそうに笑いはじめて、周りがびっくりした顔をしてるのに気付いてユキをひっぺがした。
なんでユキがキスしようとしても平然としてるのに、僕がユキをあやしてるだけで引かれなければならないんだ! めちゃくちゃ恥ずかしい!
それでも顔を上げたユキの顔がふにゃふにゃで可愛過ぎたので、恥ずかしさは一瞬で飛んでいった。そんなに喜んでくれるなら僕の羞恥心なんて遥か彼方だ。
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