死が二人を分かたない世界

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真里編:第4章 願望

ユキの為人

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「今日は場所とメンバーを紹介したらこっちに返すよ」
 伊澄いずみさんがフーッと長めのため息をついてから話しはじめた、まるで緊張を無理やり押さえ込むような声色だ。

「じゃあオレいい頃合いに迎えに行くよー?」
「ルイが来てくれるなら安心だな、頼む」
「任せろよっ!」
 そう言いながらルイさんは伊澄さんの背中をバンバンと叩いた。その横でまだニヤニヤしていたユキは、急に顔を引き締めて僕を見る。

「真里が帰ってきたら俺が行く」
「……うん」
「伊澄」
「あぁ、わかってるよ」

 ユキが伊澄さんに目で合図するように見据えて、それを伊澄さんが承諾したようだ。さっきのやり取りからしても、二人にしか分からない事情があるのだろう……。二人の関係性としては対等と言うより、ユキが上という位置付けの様だ。
 そもそもユキより上は魔王様しか居ないのだけど、ユキは誰とでもフランクに接してるように見えるから意外だった。

 みんなに"いってきます"と手を振り歩みを進めると、後ろからルイさんの声で
「ユキのニヤけ顔が気持ち悪い」
という呟きが聞こえてきた。

 僕としてはあの顔は可愛いと思うのだけど、人によって捉え方というのは違うものなんだなぁ。ユキのふにゃふにゃ顔可愛かったな……二人きりになったらもっと甘やかしてみたいなぁとか考えていると、伊澄さんから声を掛けられた。

「ありがとう真里、助かったよ」
「えっ!? 何がですか!?」
「ユキにあんな風に睨まれると、俺なんかは怖くて動けなくなるよ……あの時ユキを懐柔してくれただろ! まるで猛獣使いみたいで驚いたよ」
「いや、あれは昔からやってたのでつい!」
「……昔から?」
「いや、えっと、クセなんです!」
 ほぼ初対面の伊澄さんに、ユキとの夢の話はするべきではないだろう。
 しかし先程のユキは確かに雰囲気を悪くしたが、別に殺気立ってはいなかった、そんなに怖かっただろうか? 僕は魔王様の方がよほど恐ろしいけどな。

「やはり君はユキにとって特別なんだな、アイツは友人としては良い奴なんだが、人間関係に執着しないところがあるからな」
「そうなんですか?」
「あぁ、必要とあらば自部隊の面子だって消せる、俺の知ってるユキという男はそういう奴だ、普段は面倒見が良くて、誰とでも分け隔てなく喋ってて良い奴なんだけどなぁ」
 僕の知らないユキの一面だ……そういう前提条件があれば、ユキの些細な感情の動きに敏感になってしまうかもしれない。
「アイツとは200年くらいの付き合いになるが、自分からキスしようとしたり、甘えたりしてるのは初めて見たな! いやー驚いた驚いた! あ、ここ曲がるよ」
「はい! ……ユキはあまり人に甘えたりしないんですね」
「そうだね、人に弱みを見せるのは嫌みたいだ」
 うん、分かる……。
 だからその分甘やかしてあげたいと思っているんだ、僕が知ってるユキは冷たい人間なんかじゃない、人のために悲しんだり、心を痛めたりして傷付いてしまうような……そんな優しい子だったから。

 維持部隊の事務所を出てからそこそこ歩いた、どうやら同じ建物の中とはいえ、近いとは言えないくらい距離があるみたいだ。その間伊澄さんは僕が飽きないよう話をしてくれた、明るく気さくで話しやすく、気遣いの人だなぁというイメージだ。
 話の内容としては管理課の事がメインだった、どうやら今居るメンバーは1人を筆頭にしてグループになっているらしく、その筆頭が言う事を聞かないが為全く仕事になってないのだとか……。

「そこが管理課の事務所だ」

 先程から近づくにつれて、ワーワーとうるさい部屋があって……どうやらそこが"情報管理課"の事務所のようだった、本当に大騒ぎしているけど大丈夫だろうか。

「うるさいぞお前ら、外まで丸聞こえだぞ?」
 伊澄さんが扉を開けて声を掛けたが、一向に意に介さないように無視されている、なるほどこれは確かに厄介だ。

 覗いてみると応接用に置かれた机やソファーの辺りで、6人くらいの男たちが"脱ーげ! 脱ーげ!" と一斉にコールしていた……イジメか!? と一瞬焦り、中心にいる人物を目視しようとした。

「アタシを脱がせたいなら、対価を出しな!」
 ギョッとするほど振袖を着崩して、足を露出させた女の子が応接机の上で足を組み替えていた。
 綺麗なブラウンの髪を結い上げて、目鼻立ちははっきりしていてかなり可愛い、少し緑の混じった綺麗な瞳……外人? いや、ハーフ!? 振袖とは離れたイメージの顔立ちに、不思議な妖艶さがある。
 妖艶だけれども、若い……というより幼いと思うほどの見た目年齢の低さが気になる、いや悪魔は見た目と中身の年齢が一致してないのは分かってるんだけど……。
 あと全身なんかキラキラしてる! 光り物を付けている訳ではなく、何となくキラキラした膜のようなものが見える、よく見ると全身に魔力を纏っているようだ、何の為に?



 思わず凝視しているとその子と目が合った、優雅な所作で応接用の机から降りてくる、いくら優雅でも机に乗っているのはお行儀が悪いだろう。

「新人? 可愛い顔してるね」
 低い目線から上目使いで僕の顎を撫でる。さすがにこんな着崩した女の子からそんなことされたら、僕だってドキドキしたりはする! 全然好みのタイプではないけど!!
「見たい?」
 そう言って胸元をガバッと開いてきたので、咄嗟に顔を逸らして目線を外す。
「かーわいいっ! でも残念でしたー!」
「え……?」
 目線を戻すとイタズラ顔をしたその子が、胸を見せつけているが……ない……なにもない! 見事にぺったんこだ!
「アタシ、下に付いてるんだよ」

 男の娘だった!!!
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