死が二人を分かたない世界

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魔界編:第6章 拠り所

内緒ごと

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 魔王様の現世へ行く理由がデート……しかも魔王様の相手って言ったら、天界の神様だよね!? つまりそれは神様にも会うって事で。

 ユキに追及しようとしたら、掴まれた顎を横に向けられて、耳にチュッとキスされた!
「ひぅっ!?」
「この話は内密にな……それで、どこに行きたい?」
 楽しそうにユキが口元に指を持っていき、内緒のポーズをしてウィンクする。

「なっ、無理!ムリむり! 行き先のリクエストなんて言えないよ!」
 そもそも親の顔見たいとか言える状況じゃ無いじゃないか! もしかして飛翔さんの為にコンビニに寄ることさえ無理なんじゃないか!?

 ユキが飛翔さんへ向けて指を払うと、飛翔さんは再度驚いたように耳から手を離した。
「いきなり耳聞こえなくすんのやめろよ! ビビるだろっ!」
「ハハッ悪いな、内緒話だ」
 一人楽しそうにするユキとは対照的に、僕は突然告げられた事実に頭が混乱している。

 ユキはこっちから聞かなきゃ教えてくれないし、今のうちに事前準備をしておかないと……!
 礼儀作法とか、話し方とか、話題とか!? 相手は何人で来るのか、誰が来るのか、僕は何をしたらいいのか……現世でどこに行きたいとか、何がしたいなんて考える場合じゃないよ!

「真里がすげー混乱してるけど、なにがあったんだ?」
「あははっ、こうやってぐるぐる考えてる姿が可愛いよなぁ」
 誰のせいで混乱してると思ってるんだ。ユキを恨めしく思いつつ眉根を寄せると、ユキは僕の後ろにある事務所の出入り口に視線を移した。

「ただいまーっ! もう、外はじまってたよ!」
 勢いよく事務所の戸が開いて、ルイさんの声が響いた。
「じゃあ、そろそろ行くか」
 ユキがソファーから立ち上がって、飛翔さんもそれに続くように体を起こした。

「どこか行くの?」
「あぁ、巡回にな」
 時計を見れば時間は17時少しすぎた頃だ、夜の巡回にしては早すぎるし、いつもなら夜勤の人を残して帰り始めてもおかしくない時間だ。

「今日は七夕まつりだ」
「えっ……!」

 そうか、今日って……7月7日! 七夕じゃないか!

----

 事務所が入ってる共同の建物を出ると、メインの大通りは鮮やかな七夕飾りで彩られていた。
 大きなくす玉飾りや笹の葉が沢山通りを埋め尽くしていて、所々に置いてあるテーブルで短冊に願い事を書いて楽しそうにしている人達がいる。

「いきなりこんな……! 朝は何も無かったよね!?」
 それこそ今日が七夕だと気付かないほど、いつも通りの平穏な朝だった……って言っても見た目はいつも夜なんだけど。

「現世と違ってこっちは飾り付けも一瞬でできるだろ? 最近は突然祭りが始まったように見せるのが流行りなんだ」
 ユキが説明してくれているのだけど話は右から左だ、周りの飾りに圧倒されて視界が目移りする。

「大きな祭りがある時は何かと事件が起きやすいからな……各自楽しみながら巡回、解散!」
 ユキの号令を合図に飛翔さん、カズヤさんとルイさんが"おつかれー"なんて言いながらバラけていく。
「楽しみながら?」
「せっかくの祭りだからな、有事に動いてくれればそれでいい」

 散ったみんなの背中を視界で追うと、ルイさんがカズヤさんに話しかけている。少し照れ臭そうにしながら話してるところを見ると、一緒に巡回する事を提案しているんだろうか。
 カズヤさんの事だから何も言わなくても一緒に行きそうだけど、ルイさん頑張れ!

「俺たちも行くか」
「……っ、うん!」
 ユキの手が僕の右肩を掴んで抱き寄せる、その手に左手を重ねて見上げると、ユキが優しい表情で笑いかけてくる。

「手……繋ぐ方がいいな」
 思わず口元を緩ませながら伝えると、ユキは空いてる方の手を口元に当てて、少し恥ずかしそうに僕の肩から手を離した。
 さっきまでユキの手の甲に触れて冷たかった僕の左手は、今度は暖かい手のひらと触れ合う。

「このままベッドまで転移したい」
「僕はお祭りに行きたいよ」
「真里は祭り事好きだな」
「だって楽しいじゃないか、みんながワクワクして、楽しい気持ちになってて、幸せがいっぱい集まってるみたい」
 雰囲気に自分の気持ちまで上がっていく、大勢の人と楽しい事を共有できるのは、こういうイベントでしか味わえない。

「腹を満たすのは程々にしてくれよ、俺が我慢できなくなる」
「ぅ……あ、善処します」
 それってまた妬いちゃうって事だよね……正直ユキが嫉妬してくれるのは嬉しくて、少しいたずら心が疼いてしまう。

 ユキと警戒がてらメイン通りを歩く、脇道でも大通りに近いところは露店が出ていたりするけど、奥の方までは店はなく、十字の大通りを中心に祭りが催されている様だ。
 前にもユキと手を繋いで温泉街を散策したけど、今とは人の数が桁違いだ……ユキはそこに居るだけで人目を引くから、注目されて視線がチクチクと刺さってくるような気がする。

 よくは聞き取れないけど、僕を値踏みする様な声も聞こえてくるし、"直血"らしくないなんて言葉が聞こえた時は、やっぱり少し凹む。
 お祭りの雰囲気に釣られて調子に乗りすぎてたかも……繋いだ手を離そうと緩めると、ユキがギュッと僕の手を握って離さなかった。

「恥ずかしいか?」
「恥ずかしくはない……けど」
 ユキは耳がいいから、周りの会話が聞こえてないはずないんだけど……なんでもない事の様に振る舞うユキに、少しだけ心が軽くなった気がした。

 一瞬ユキと僕に空白の間があって……何か話さなくちゃって見上げると、ユキが先に僕の方を見ていて目が合った。
「俺は離れないし、離さないからな」
 真剣な目にドキッとした。そして聖華に堂々としてろって言われたのを思い出した……こんなにも僕を想ってくれているのに、僕は本当に馬鹿だ。

「短冊にでも書こうか?」
「そ、それは恥ずかしいかも……」
 僕からもう一度ユキの手を握りなおすと、ユキはすこぶる嬉しそうに上機嫌になった。

「そもそも、短冊って願い事を書くものだよね?」
「ん? あぁ、そうだな」
「僕もユキの事絶対に離さない、でもこれは願いじゃないよ……誓いだから」
 僕はユキの側にいてユキを幸せにしたい、周りがどう思ってたって、どんな風に見られてたって関係ないよね。

 少し照れ臭そうに頬を赤くしたユキが、僕から目を逸らした。ユキは歯の浮くようなセリフを平気で言うのに、言われるのは慣れてないのか照れが入るらしい。僕はそんなユキが可愛くて、愛しくて仕方なくて……。

 周りに見せ付けるようにイチャついてしまって、そんな可愛いユキの照れ顔を公衆の面前に晒してしまった事に今更気づく。ユキに惚れちゃう人がまた増えちゃうじゃないか! 僕のバカっ!

 そもそもこんな風に僕がデレさせてるから、ユキが舐められてる原因になってるって話だったじゃないか!
 仕事中はキリッと! プライベートではたくさん甘える! さっき心に誓ったばっかりなのに……でも今って限りなくプライベートに近い仕事中だから……。

「まーた、何をぐちゃぐちゃ考えてるんだ?」
「あー……あのね」
 この手は離したくは無かった……でもユキがこの世界で舐められるのは治安的にもよくないし、きっとユキにとっても良い事じゃない。

 考えあぐねて言葉に詰まると、ユキが少し悪戯っぽい顔をして、繋いだ僕の手の甲に長い指をはわせてくる。
 僕の弱点であり敏感なそこは、ユキに触れられると特に過敏に反応してしまう。なんで今、そんな誘うように……!

「……っぁ、ユキ」
 さっきの仕返し!? これ以上艶っぽく触れられたら……! 頭に血が上って耳まで熱くなるような感覚に顔を伏せた瞬間、僕の右足の甲に棒状の淡く光る捕縛具が突き刺さった。

「なっ……!」
「真里!?」
 咄嗟に繋いでいた手を離して、ユキが僕の足と地面を縫い付けるそれを抜こうとした。すると今度は両手に枷状の捕縛具が絡まり、僕の手首はそのまま叩きつけられるように地面に吸い寄せられた。
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