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魔界編:第8章 現世へ
離愁
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「お前、そろそろ店に入れよ」
ユキが眉間に深くシワを刻んで、晃臣さんの背中をグイグイと押しやる。
「えっ、もしかして何か地雷踏みました!?」
「黙れ」
正直僕にも今の流れで、ユキが何を不快に感じたのか分からない。
「晃臣さん、お兄様は妹偏愛者ではありませんから、それは嬉しくないと思います」
椿がクスクスと可笑しそうに笑い出した。ユキはシスコンじゃないから、僕と椿が似てるなんて不服だって事!?
「はいはい、ユキさんはカッコつけたがりですからねぇ……」
「ほっとけ!」
店に入って行く晃臣さんを見送りながら、僕は行かなくていいのかとユキを見たら、ユキは店の窓際に視線を送った。
促されるようにそちらを見ると、神様が来なくていいよとジェスチャーしていた。魔王様は相変わらず、神様のことしか見ていない。
「これって護衛してることになるのかな?」
思わず不安になってユキを見上げると、さっきの不機嫌はどこに行ったのか、今度は軽く笑顔を浮かべていた。
「天界、魔界の上位三人が揃ったところに、突っ込んで来れる奴なんてそういないからな」
「……へぇ」
つまり、椿も天界ではNo.3以内ってことだ。晃臣さんと椿はどちらが上なんだろう……と思ったところで、自分が上位に数えられていることに気付いた。
「ちょっと待って! 僕を入れないで!?」
「あら、真里さんの魔力量なら、お兄様も射程圏内でしょう?」
「えっ!? 無理!!」
兄妹おんなじ顔してなんてこと言うんだ!!!
直血の覇戸部さんやハルキさんはもちろん、一般悪魔のカズヤさんにさえ敵わないっていうのに!
まぁ……師匠は魔力量なんて度外視で強いから、別格かもしれないけど。
「千年の知識の蓄積に敵うわけないよ……どれだけ時間が経ってもユキには勝てないと思う」
「じゃあ、わたくしとお兄様ならどちらなんでしょうね?」
「魔力量が違うだろ」
フンッとユキが腕を組んだのを見ると、多分ユキの方が魔力量が多いんだろうな……。
「そういえば二人って何歳差なの?」
見た目だけなら、五、六歳? って感じだけど。
「わたくしとお兄様は十四離れているんです」
「十四っ……!?」
思っていたよりずっと歳の差があった! 今の僕に二歳の妹がいるって事だよね……? そんなの可愛いに決まってる、溺愛確定だ……!
今だからこそ年齢差なんて無いに等しいだろうけど、生前の椿はユキにとって、何をしていても愛らしい存在だっただろう。
ユキの肉体年齢は二十一だと聞いている、悪魔の肉体年齢は享年だ。
つまり椿が六、七歳くらいの頃って事で、それは図らずも、僕がユキと出会った歳の頃に、椿は兄と死別したということになる……。
そんな二人がどうやって再会したのか、ユキは生前どんな様子だったのか、二人の思い出話とか……聞きたいことは山ほどある。
山ほどあるのに、それを今聞くことは出来ないみたいで、この時間を終わらせる言葉は椿から発せられた。
「お兄様の無事を確認したので、わたくしはそろそろお暇いたしますね」
「えっ……もう?」
「ごめんなさい、今は御二方が天界から離れているので、わたくしもこちらに長くは居られないのです」
本来僕たちの目的は神様と魔王様の護衛だし、椿もユキを心配してきただけだから……。
「また別の機会に、ゆっくりお話ししましょうね!」
また両手でぎゅと僕の手を握った椿に、同じくらいぐっと握り返して、ユキにそっくりなその瞳を見つめた。
「必ず……!」
僕が気持ちを込め過ぎたのか、椿がたじろいで、目を逸らした。もしかして、引かれた!?
「あの、真里さん……最後にお願いがあるのですが」
「はいっ……」
なんだろう、少しは遠慮してなんて言われたら、ちょっとショックかも。
「頭を……撫でて頂けませんか?」
「なっ!」
驚くようなユキの声が聞こえたけど、僕も驚いた……だってさっきはそうしたいのを我慢したんだから!
「いいの!?」
思わず遠慮もせずに手を伸ばせば、頭を差し出すように下げてきて軽く感動する……好きな人の妹って、こんなにも可愛いもの!?
つむじの位置や、髪の生え方までユキとそっくりなその頭を撫でると、髪の手触りまでよく似ていて驚いた。
あぁ、こんなにも似ていたら可愛いに決まってる……! 撫で慣れた感触を何度か堪能して手を離すと、少し顔を上げた椿の瞳が潤んでいた。
「えっ……」
「あ、ありがとう……ございます」
「どうしたの!?」
「ごめんなさい、甘やかされたのなんて数百年ぶりで……嬉しくて」
久しぶりというには桁が違う年月に驚くけど!
そんなに喜んでくれるなら、いつでもいくらでも撫でてあげたい……! ユキも甘やかしてあげればいいのに……なんて思いながら見上げたら、たじろぐような仕草を見せた。見えないはずの犬耳が、ペタンとしてるのが目に浮かぶ。
「俺だって、言ってくれればそれくらいしてやる!」
ユキが椿の頭を、僕にするみたいにワシワシ撫でて、女の子になんて雑な……と思ったけど、椿はすごく嬉しそうだった。
「ありがとうございます……すごく幸せです」
椿が両手で頭を押さえながら、嬉しそうに笑ってからくるりと背中を向けた。
「次もして下さいね!」
手を振る無邪気な姿に、つられるようにニコニコしながらその背中を見送った。
「あのな真里、アイツはあんな見た目だが……」
分かってるよ、いくら僕より小さくて、僕より幼い顔つきをしてたって、千歳超えてる君の妹だってことは……。
「六十過ぎまで生きて、天寿を全うしてるからな?」
「!!!!?? 天使って見た目年齢と享年が違うの!?」
「天界の人間は比較的高齢まで生きた奴が多いからな……あちらは見た目の年齢を調整してもらえるらしいぞ」
「あー……なるほどね」
魔王様はそういうのはしなさそうだなぁ……じゃなきゃ、聖華が毎日魔力を浪費して若返ってるわけがない。
「それでも君の妹だから、すごく可愛いって思っちゃったんだよね」
「そうか」
ユキが穏やかに笑ったのだけど、そこに少し寂しそうな表情が混じっていて……。
「ユキ……?」
「あれ? 木春くん帰っちゃった?」
後ろから神様に声をかけられて、振り返ると三人は店から出てきていた。
「一緒に帰ろうと思ってたのに、あの子は本当に真面目だねぇ」
そっか、ユキもそういうところあるから、性格まで兄妹よく似ている。
神様も魔王様も、お店から出たからなのか男の姿に戻っていた。
神様の少し後ろに立っていた魔王様は、『帰る』という言葉に反応したのか、しゅんと寂しそうな顔に見えた……。
普段は口元が笑っているだけで、全然感情が読めない魔王様が、神様の前ではこんなにも表情を見せる。
「あの、もうお帰りなんですか……?」
僕がこんなこと言うのはおこがましいことかもしれないけど、あと少しだけでも魔王様といて欲しいと思ってしまった。
「あぁ、クロはいつだって別れる時はこんなだよ、十分後だって、二日後だって同じさ」
一方神様は表情豊かに、目をキラキラさせて話すのだけど……別れを惜しむ様子は微塵もない。
サッパリしていると言うべきなのか、淡白というか……魔王様の片想いなんじゃないかと思えるほどで、なんだか切ない。
神様が魔王様の手を引きながら、人気の少ない方へと歩いていく。
道中誰も喋らなくなって、いたたまれない雰囲気に、少しだけユキを見上げると、ユキはゆっくり瞬きして合図を送ってきた。
そっか、このままでいいのか……もしかして神様と魔王様は、言葉に出さずに会話してるのかもしれない。
「じゃあ、もう行くよ」
人目がないところまで来て、神様が魔王様に向かい合って両手を握った。すると、するすると手元から擬態を解いくのが分かった。
人としての存在感が薄れて、神様としての力が表に出てくると、魔王様と同じ膨大な魔力量に圧倒される。
魔王様も同じように擬態を解いて、二人は在るべき姿に戻っていく。
怖いと感じる魔王様の強大な魔力と……同じくらい強い魔力なのに、なぜか温かさと包容力を感じる神様の魔力。
そうか、魔王様はその在り方からして、畏怖を感じさせる魔力の質なんだ。
そうであると理解すれば、闇雲に恐怖を感じていた魔王様の魔力も、そういうものなんだと受け入れられる気がした。
それにしても、これだけ強烈な魔力を誇る創造主が二人並ぶと……それだけで畏れ多い気がして直視できない。
視線を外すようにユキを見ると、少し下を向いていたユキと目が合って、その目がフッと笑った。ユキも直視するのは、はばかられるみたいだ。
「クロ……」
そう優しい声で魔王様を呼ぶ声に、最上の愛しさを感じて思わず涙が出そうになった。
離れがたい気持ちが、こちらにまで流れ込んでくるみたいだ……あぁ、よかった、魔王様はとても愛されてたんだ。
「それでは、お先に失礼いたします」
晃臣さんに声をかけられて顔を向けると、神様の強い魔力の端から、優しいけれど凛とした晃臣さんの魔力を感じた。
眩しいくらいの強い魔力と共に、神様と晃臣さんの姿が消えて、強く重い魔王様のプレッシャーだけが、この場に残った。
シン……と静まり返った空気の中、ユキが魔王様に声をかけた。
「お送りしますよ」
「うん、よろしく」
さっきまで寂しそうにしていた背中を見せないように、僕らを振り返った魔王様は、いつもの口元だけ繕った顔で、こちらに笑いかけた。
ユキが眉間に深くシワを刻んで、晃臣さんの背中をグイグイと押しやる。
「えっ、もしかして何か地雷踏みました!?」
「黙れ」
正直僕にも今の流れで、ユキが何を不快に感じたのか分からない。
「晃臣さん、お兄様は妹偏愛者ではありませんから、それは嬉しくないと思います」
椿がクスクスと可笑しそうに笑い出した。ユキはシスコンじゃないから、僕と椿が似てるなんて不服だって事!?
「はいはい、ユキさんはカッコつけたがりですからねぇ……」
「ほっとけ!」
店に入って行く晃臣さんを見送りながら、僕は行かなくていいのかとユキを見たら、ユキは店の窓際に視線を送った。
促されるようにそちらを見ると、神様が来なくていいよとジェスチャーしていた。魔王様は相変わらず、神様のことしか見ていない。
「これって護衛してることになるのかな?」
思わず不安になってユキを見上げると、さっきの不機嫌はどこに行ったのか、今度は軽く笑顔を浮かべていた。
「天界、魔界の上位三人が揃ったところに、突っ込んで来れる奴なんてそういないからな」
「……へぇ」
つまり、椿も天界ではNo.3以内ってことだ。晃臣さんと椿はどちらが上なんだろう……と思ったところで、自分が上位に数えられていることに気付いた。
「ちょっと待って! 僕を入れないで!?」
「あら、真里さんの魔力量なら、お兄様も射程圏内でしょう?」
「えっ!? 無理!!」
兄妹おんなじ顔してなんてこと言うんだ!!!
直血の覇戸部さんやハルキさんはもちろん、一般悪魔のカズヤさんにさえ敵わないっていうのに!
まぁ……師匠は魔力量なんて度外視で強いから、別格かもしれないけど。
「千年の知識の蓄積に敵うわけないよ……どれだけ時間が経ってもユキには勝てないと思う」
「じゃあ、わたくしとお兄様ならどちらなんでしょうね?」
「魔力量が違うだろ」
フンッとユキが腕を組んだのを見ると、多分ユキの方が魔力量が多いんだろうな……。
「そういえば二人って何歳差なの?」
見た目だけなら、五、六歳? って感じだけど。
「わたくしとお兄様は十四離れているんです」
「十四っ……!?」
思っていたよりずっと歳の差があった! 今の僕に二歳の妹がいるって事だよね……? そんなの可愛いに決まってる、溺愛確定だ……!
今だからこそ年齢差なんて無いに等しいだろうけど、生前の椿はユキにとって、何をしていても愛らしい存在だっただろう。
ユキの肉体年齢は二十一だと聞いている、悪魔の肉体年齢は享年だ。
つまり椿が六、七歳くらいの頃って事で、それは図らずも、僕がユキと出会った歳の頃に、椿は兄と死別したということになる……。
そんな二人がどうやって再会したのか、ユキは生前どんな様子だったのか、二人の思い出話とか……聞きたいことは山ほどある。
山ほどあるのに、それを今聞くことは出来ないみたいで、この時間を終わらせる言葉は椿から発せられた。
「お兄様の無事を確認したので、わたくしはそろそろお暇いたしますね」
「えっ……もう?」
「ごめんなさい、今は御二方が天界から離れているので、わたくしもこちらに長くは居られないのです」
本来僕たちの目的は神様と魔王様の護衛だし、椿もユキを心配してきただけだから……。
「また別の機会に、ゆっくりお話ししましょうね!」
また両手でぎゅと僕の手を握った椿に、同じくらいぐっと握り返して、ユキにそっくりなその瞳を見つめた。
「必ず……!」
僕が気持ちを込め過ぎたのか、椿がたじろいで、目を逸らした。もしかして、引かれた!?
「あの、真里さん……最後にお願いがあるのですが」
「はいっ……」
なんだろう、少しは遠慮してなんて言われたら、ちょっとショックかも。
「頭を……撫でて頂けませんか?」
「なっ!」
驚くようなユキの声が聞こえたけど、僕も驚いた……だってさっきはそうしたいのを我慢したんだから!
「いいの!?」
思わず遠慮もせずに手を伸ばせば、頭を差し出すように下げてきて軽く感動する……好きな人の妹って、こんなにも可愛いもの!?
つむじの位置や、髪の生え方までユキとそっくりなその頭を撫でると、髪の手触りまでよく似ていて驚いた。
あぁ、こんなにも似ていたら可愛いに決まってる……! 撫で慣れた感触を何度か堪能して手を離すと、少し顔を上げた椿の瞳が潤んでいた。
「えっ……」
「あ、ありがとう……ございます」
「どうしたの!?」
「ごめんなさい、甘やかされたのなんて数百年ぶりで……嬉しくて」
久しぶりというには桁が違う年月に驚くけど!
そんなに喜んでくれるなら、いつでもいくらでも撫でてあげたい……! ユキも甘やかしてあげればいいのに……なんて思いながら見上げたら、たじろぐような仕草を見せた。見えないはずの犬耳が、ペタンとしてるのが目に浮かぶ。
「俺だって、言ってくれればそれくらいしてやる!」
ユキが椿の頭を、僕にするみたいにワシワシ撫でて、女の子になんて雑な……と思ったけど、椿はすごく嬉しそうだった。
「ありがとうございます……すごく幸せです」
椿が両手で頭を押さえながら、嬉しそうに笑ってからくるりと背中を向けた。
「次もして下さいね!」
手を振る無邪気な姿に、つられるようにニコニコしながらその背中を見送った。
「あのな真里、アイツはあんな見た目だが……」
分かってるよ、いくら僕より小さくて、僕より幼い顔つきをしてたって、千歳超えてる君の妹だってことは……。
「六十過ぎまで生きて、天寿を全うしてるからな?」
「!!!!?? 天使って見た目年齢と享年が違うの!?」
「天界の人間は比較的高齢まで生きた奴が多いからな……あちらは見た目の年齢を調整してもらえるらしいぞ」
「あー……なるほどね」
魔王様はそういうのはしなさそうだなぁ……じゃなきゃ、聖華が毎日魔力を浪費して若返ってるわけがない。
「それでも君の妹だから、すごく可愛いって思っちゃったんだよね」
「そうか」
ユキが穏やかに笑ったのだけど、そこに少し寂しそうな表情が混じっていて……。
「ユキ……?」
「あれ? 木春くん帰っちゃった?」
後ろから神様に声をかけられて、振り返ると三人は店から出てきていた。
「一緒に帰ろうと思ってたのに、あの子は本当に真面目だねぇ」
そっか、ユキもそういうところあるから、性格まで兄妹よく似ている。
神様も魔王様も、お店から出たからなのか男の姿に戻っていた。
神様の少し後ろに立っていた魔王様は、『帰る』という言葉に反応したのか、しゅんと寂しそうな顔に見えた……。
普段は口元が笑っているだけで、全然感情が読めない魔王様が、神様の前ではこんなにも表情を見せる。
「あの、もうお帰りなんですか……?」
僕がこんなこと言うのはおこがましいことかもしれないけど、あと少しだけでも魔王様といて欲しいと思ってしまった。
「あぁ、クロはいつだって別れる時はこんなだよ、十分後だって、二日後だって同じさ」
一方神様は表情豊かに、目をキラキラさせて話すのだけど……別れを惜しむ様子は微塵もない。
サッパリしていると言うべきなのか、淡白というか……魔王様の片想いなんじゃないかと思えるほどで、なんだか切ない。
神様が魔王様の手を引きながら、人気の少ない方へと歩いていく。
道中誰も喋らなくなって、いたたまれない雰囲気に、少しだけユキを見上げると、ユキはゆっくり瞬きして合図を送ってきた。
そっか、このままでいいのか……もしかして神様と魔王様は、言葉に出さずに会話してるのかもしれない。
「じゃあ、もう行くよ」
人目がないところまで来て、神様が魔王様に向かい合って両手を握った。すると、するすると手元から擬態を解いくのが分かった。
人としての存在感が薄れて、神様としての力が表に出てくると、魔王様と同じ膨大な魔力量に圧倒される。
魔王様も同じように擬態を解いて、二人は在るべき姿に戻っていく。
怖いと感じる魔王様の強大な魔力と……同じくらい強い魔力なのに、なぜか温かさと包容力を感じる神様の魔力。
そうか、魔王様はその在り方からして、畏怖を感じさせる魔力の質なんだ。
そうであると理解すれば、闇雲に恐怖を感じていた魔王様の魔力も、そういうものなんだと受け入れられる気がした。
それにしても、これだけ強烈な魔力を誇る創造主が二人並ぶと……それだけで畏れ多い気がして直視できない。
視線を外すようにユキを見ると、少し下を向いていたユキと目が合って、その目がフッと笑った。ユキも直視するのは、はばかられるみたいだ。
「クロ……」
そう優しい声で魔王様を呼ぶ声に、最上の愛しさを感じて思わず涙が出そうになった。
離れがたい気持ちが、こちらにまで流れ込んでくるみたいだ……あぁ、よかった、魔王様はとても愛されてたんだ。
「それでは、お先に失礼いたします」
晃臣さんに声をかけられて顔を向けると、神様の強い魔力の端から、優しいけれど凛とした晃臣さんの魔力を感じた。
眩しいくらいの強い魔力と共に、神様と晃臣さんの姿が消えて、強く重い魔王様のプレッシャーだけが、この場に残った。
シン……と静まり返った空気の中、ユキが魔王様に声をかけた。
「お送りしますよ」
「うん、よろしく」
さっきまで寂しそうにしていた背中を見せないように、僕らを振り返った魔王様は、いつもの口元だけ繕った顔で、こちらに笑いかけた。
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