死が二人を分かたない世界

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魔界編:第13章

郊外へ

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 目が覚めたらユキの腕の中だった。

「ん? もう起きたのか、早いな」
「ごめん……! 途中だったのに」
 慌ててユキの方へ体を向けて、自分が綺麗にされている事に気付いた。
 確か昨晩は何度も何度もユキを受け止めたから、こんなに綺麗なままのはずなくって……。
 これは結構な時間寝てしまったな、と自覚した。

「どのくらい寝てた?」
「三時間くらいだ、まだ辛いんじゃないか?」
 ユキにおでこを撫でられて、そのまま温かい手が頭を撫でていくのが気持ちいい。

「もう大丈夫だよ、せっかく二人で過ごせる時間なのに、ごめんね」
「本当に、無理してないか?」
「してないよ……それより、その……僕の中の」
 何度も受け止めてきたから、確かめなくても感覚でわかってしまう。
 今僕の中には、ユキの魔力が残っていない……表だけじゃなくて、中まで綺麗にしてもらったんだって。

「不満そうな顔だな」
「だって、ユキの全部受け止めたかったから」
「全部取り込んでたらまた動けなくなるだろ、行かないのか? 街の外に」
「行く!」
 そっか、今日動けなくなったら僕が残念がると思って、綺麗にしてくれたんだ。

「へへっ、ありがと」
 僕からもユキの頭を撫で返すと、気持ち良さそうに、でもちょっとだけ照れくさそうな顔をする。
「今夜はもっと頑張るから」
「もっと……最近俺の為に無理しようとしてないか?」
「無理なんてしてないよ、僕がユキと少しでも長く過ごしたいから! それにすぐにイきすぎるのも、男として格好がつかないというか……」
 ユキとするの気持ちよすぎるから、不可抗力だと思うところはあるけど。

「……真里、最近感じていたんだが」
「ん?」
「俺の事、本気で抱くつもり……だな」
「え、だって僕の初めて貰ってくれるんだよね?」
 ユキの言葉は想定外って感じの言い方で、思わず焦ってしまった。
 もしかしてやっぱり嫌になった? 昨日も僕が攻めるようなことしたから、不安にさせてしまったんだろうか。
「もちろん、誰にも渡したくないし、奪われたくないから……俺が貰う、が」
 ちょっと視線を外して、気まずそうにしているけど、断言してくれるから不覚にも嬉しい。

「俺としては、その……俺が主導権を握るつもりだったんだが、最近の真里を見てると、そうさせてくれそうにないな……と」
「それは……」
 言われた言葉の意味を考える。
 それってユキに全部してもらって卒業するって意味だよね……?

「うん、僕はその時が来たら、ユキの事いっぱい愛したいって思ってるよ」
「うっ」
 体を起こして上からユキをまっすぐに見下ろすと、ユキは真っ赤にした顔を腕で隠してしまった。
 そんな仕草は昨日の最中の事を思い出させるから、僕としてはちょっとクるものがあって……。
「だから、その時は全部僕にさせて」
 顔を隠す腕にキスすると、ユキの顔がさらに赤くなった気がした。
「それは恥ずかしすぎる」
「不安より恥ずかしい方が強いんだ?」
 もっと拒否されたりするかと思ったけど、僕の要望を聞き入れてくれるみたいで嬉しくてたまらない。
 僕が思っているよりずっと早く、僕からユキを愛することができるんじゃないかって気がしてきた。
 むしろこの連休中に少しでも進展出来たら……そう期待してしまう。

 ユキが顔を隠す腕を外して、急に僕の頭を引き寄せた。
 当然深く口付けて、お互いの髪に指を通して、頭を撫でて、お互いを可愛がるようにキスした。
「はぁ……我慢できなくなるな」
「僕も」
 ユキから腰を引き寄せられたら、お互い昂っているのはすぐにわかった。
「ゆっくりしたら……大丈夫じゃない?」
「くくっ、真里のスケベ」
 ユキに言われるのは心外だけど、否定できないところだ。

-----

 ユキといちゃいちゃとゆっくり過ごしてから家を出た、今日はユキが街の郊外に連れて行ってくれるらしい。
 魔界の住人は殆どが街中に住んでいて、人口が増えると魔王様が街を拡張する形で発展させているという。
 僕は街の外に出るのは初めてだから、ちょっとワクワクしている。

「本当に何もないぞ」
「うん、でもこの世界をもっと知りたいから、嬉しい」
 いつものように人気の少ない所までユキの転移にお任せして、遠目から郊外に出るための門を目視した。
 魔王様の直轄領に繋がる黒門は、大きくて禍々しい装飾に、威圧されるような暗い黒色一色だ。
 現世に繋がる白磁の門は、装飾は無く真っ白で綺麗な門だった。
 魂が転生するための転生院の輪廻門は、赤く物々しい雰囲気で、大きくて荘厳だ。
 そして郊外へと繋がるこの門は一番小さく、木造で、人が通る真上の装飾が深緑なだけで、他の門に比べれば地味だった。

 小さいと言っても、人が横に手を繋いで十人くらいは通れる大きさだ。
 ただ、人の出入りはないし、門と同様の模様が刻まれる門扉は固く閉じられたままだった。

 そして僕たちのためにあの門扉が開くこともない、ユキが不在なのを堂々と知らせてしまうようなものだから……。
「このまま外に飛ぶ」
「うん」
 ユキに肩を抱き寄せられて、いつものように転移する心構えをした。なんとなく、いつもよりユキの手に力が入っているような気がしながら。
 そして周りが一瞬真っ白になるほど明るく感じたかと思えば、目を開けた先に広がるのは闇だった。

「——っ!!」
 思わず足がすくむ、怖いと感じる程周囲は真っ暗で、反射的にユキにしがみついた。
 地面さえもない暗闇に放り出されたのではないかと錯覚するほど、明かりもない真っ暗な世界だ。
「怖いか?」
「少し……」
 地面はある、踏みしめている。恐る恐る後ろを振り返れば、少し遠くに塀で囲まれた街の明かりが見えていた。
 街の端は見えないくらいだから、距離としてはそう遠く離れていないはずだ。

「びっくりした、本当に何もない」
「だから言っただろう、何もないって」
 ユキが手を繋いで歩き出したのに、ぴったりとくっつくように歩みを進めた。
「怖いなら抱えてやろうか」
「なっ! そこまで怖がってないよ!」
 ユキに強気で返したけど、一度魔王様に連れ込まれた真っ暗闇の世界に似ていて、正直怖いと思ってしまった。

「このままずっとまっすぐ歩き続けると、どうなると思う?」
「それは、帰ってこれなくなるんじゃない?」
 まさか世界の果てにぶつかるってことは無いよね?
「昔試した奴がいるんだが、気づいたら門の前に帰って来ていたらしいぞ」
「えっ!」
 そんな不思議な現象が起こる事にもびっくりだけど、この真っ暗闇を歩き続ける人が居る事にも驚きだ。

「帰って来てしまうって事は、魔王様がそう細工しているのか……もしくはこの世界も惑星みたいに球体なのかな?」
「気になるのはそこか!」
 ユキがフハハッと楽しそうに笑い飛ばすから、暗闇の怖さなんて吹き飛んでしまった。

「本当に、こんな真っ暗闇の中で過ごしてる人たちがいるの?」
「いる、多くはないがな」
 街中は照明も商店もある、偽物だけど植物も植わっているし、何より人がいる。
 そんな環境を避けてこんな真っ暗闇で生活している人たちは、変人が多いと言われても確かに納得だ。
「暗くてほとんど見えないが、そこそこ建物もある」
「うん、暗すぎて本当に見えないよ……照明とか付けないの?」
「付けても光が闇に吸い込まれて明るくならないらしい」
 なにそれ怖い。普段普通に生活しているけど、この世界の裏側を知ってしまったような気分になった。

「そして真里に見せたかったのはここだ」
「え……?」
 ユキが見上げるような仕草をしたけど、真っ暗で何も見えない。
 微かに、そこに何かあるような雰囲気は感じるけど……。
「見えないか?」
「うん」
「この世界の建物の材料は魔力だ、真里なら見ようと思えば見えるはずだ」
 ユキにそうアドバイスをもらって、目を凝らすように見ると、ハッキリとは見えなくてもそこに建物があるのが分かった。

「入口はここだ、眩しいぞ」
 ユキが戸を開くような仕草をしたかと思えば建物の中に引き込まれて、急に暗闇の中から光が眼に入って、眩しさで目を閉じた。
「わっ……」
「開けてみろ」
 そう言われて恐る恐る目を開くと、思わず言葉を失うほどの青々とした森林が眼前に広がっていた。
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