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赤い唇
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顕聖隊も含む王室師団の駐屯する建物は、王城の北側に設けられている。大きな広場を抱くように馬蹄形をしたその建物は、左側を顕聖隊が、右側を近衛隊が利用し、宿舎はすぐ傍に、まるで巨大な壁のように幾つも屹立している。
早朝、侍女が引き攣った顔をして持ってきた父からの手紙を頭の片隅に思い浮かべながら、リリアは冷たい石造りの回廊をゆっくりと進む。広々とした中庭には、瑞々しい緑色をした芝生がびっしりと茂り、端の方には太く立派な幹をした欅が植わっている。真剣な面持ちで風を切るように素振りをしている者、首にかけたタオルで額に浮かんだ汗を拭っている者、丸太に腰掛けて楽しげに談笑をしている者。薄靄のかかったような青空だけれど、燦々と照りつける陽光はとても眩く、穏やかな風の運んでくる草の青い匂いがとても清々しい。
父からの手紙には、案の定、宮廷舞踏会での失態に対する罵倒が何行にも渡って殴り書かれていた。やはりお前は役立たずだ、と。この状況をどうしてくれるんだ、と。どこまで我々に迷惑をかけるつもりだ、とも。
ただでさえ噂のせいで思惑通りにいっていなかったのだから、一層憤怒が募るのもしかたがないだろう。カトリーヌを王太子妃に推挙するべきだった、と、今頃ひどく後悔しているのかもしれない。確かに世才に優れた彼女であれば、フレデリクの期待にしっかりと、もしかしたら望んだ以上に応えることが出来ただろう。役立たずの娘よりも、カトリーヌの方が王太子妃としてよほど相応しいのは明白だ。
もしかしたら、ルイスも――。ふと脳裏を過ったその思いに、リリアは思わず足をとめる。まるで細い棘が刺さるような、つんとした痛み。それは、風に揺れる草の香りの朗らかさとはまるで違う、どこか切ない感覚だった。馬鹿ね、と、そう自嘲をこぼしてみても、それは少しも薄まらない。それどころか、目を逸らそうとすればするほど痛みは増していき、そのあまりの存在感にたじろぎ、リリアは途方に暮れながら立ち尽くす。
もしかしたらルイスも、カトリーヌの方が良かったと思っているのではないだろうか。彼女の方が王太子妃として相応しかった、と。
もしカトリーヌが選ばれていたら、ルイスは彼女にどう接しただろう。お茶の時間をたくさん作っただろうか。寝室も食事も共にしただろうか。色んなことを語り合っただろうか。舞踏会で一緒にダンスを踊っただろうか――。
「えっ、妃殿下!? こんなところで何してるんですかっ!」
不意に響いた大声に、リリアは忽ち――殆ど強引に――意識の海から引き戻された。瞬きをひとつ、ふたつ。いつの間にか足元に落としていた視線をゆっくり上げると、そこには息を弾ませたテオが、アーモンド型の目をこれでもかと見開かせて立っていた。どうやら鍛錬をしている最中だったようで、薄っすらと日に灼けた首に清潔そうな白いタオルが掛かっている。
「もしかして、殿下をお探しですか?」
心做しか怯えたように、ほんの少しだけ眉根を寄せたテオに、リリアはふっと微笑みながらかぶりを振る。
「ユリウス様にお話ししたいことがあって伺ったのです」
「ああ、ユリウスさんですね。執務室にいると思うので、案内しますよ」
ほっと安堵したように表情を緩めながら、テオは首に掛けていたタオルを外す。ふと、身体に触れる幾つもの視線に気付いて中庭の方へ視線を遣ると、少し離れたところに、数人の若い兵士がこちらを眺めながら佇んでいるのが見えた。目が合うと、彼らはきびきびとした動きで敬礼をとり、その輪はまるで波紋のように、周囲へどんどんと広がってゆく。
そんな彼らへ微笑みとともに挨拶を返し、リリアは先をゆくテオの小さな背中を追うように、再び足を踏み出す。どのみち、誰かしらにユリウスの居所を聞かねばならなかったのだから、偶然にもテオと出会えたのは幸運だった。建物は思っていたよりももっとずっと大きく広々としているようで、彼に会わなければきっとどこかで迷子になっていたことだろう。
回廊を吹き抜ける風が、石壁にやわらかくぶつかりながら流れてゆく。気持ち程度の彩りにと植えられた可憐な青い花が、陽の光をたっぷりと受け止めながら静かに揺れている。どっしりとした白亜色の壁、所々に吊るされた錬鉄製のランプ、年季の入った木製の扉、白縁の質素な上げ下げ窓。
建物の中はその造りのせいか、少しだけひんやりとしていた。飴色の床は歩く度に小さく軋み、こつん、こつんと乾いた靴音を立てる。外壁と同じ色をした壁と窓、それから深茶色の扉だけ延々と続くだけの廊下は、王城のそれと比べて実に簡素で、飾り気がまるでない。
如何にも軍専用の施設然としたその様子を物珍しく眺めながら歩いていると、やがて先をゆくテオが扉の前で足をとめ、そうして肩越しに振り返った。何故か神妙な面持ちをして。
「あのっ……ひとつ、念の為に訊いておきたいんですけど」
そこでひとつ息を吐き、彼は言葉を探すように少し間を置いてから、口元に片手を添えた。まるで内緒話でも始めるみたいに。
「まさか、その……密会、とかじゃ、ないですよね」
ひそひそと囁かれた言葉に、リリアは思わず目を瞬かす。唐突すぎる問いに呆気を取られたものの、しかし次の瞬間には、くすくすと笑みがこぼれてしまった。あまりにも彼が、真剣な顔で尋ねるものだから。
ルイスに内緒で逢引しに来た、と、そう思ったのだろう。もしそうであるなら、事情を知らずとはいえ、道案内をしてしまった自分にも、万が一の時には何かしら罰が下るかもしれない、と不安に思うのも無理はない。
けれど、もし本当に密会であったなら、こんな真昼に堂々と正門を潜ってきたりはしないし、テオに道案内を頼んだりもしない。王城内ではなくとも、ここはルイスの管理下にある場所だ。どこで誰が見ているか分からないのだから、そもそも密会の場所に選ぶには相応しくない。
「大丈夫ですわ。そういったことではありませんから」
「あー……それなら、良かったです」
リリアの穏やかな否定に、テオは胸を撫で下ろすように息を吐く。そうして、決まり悪そうに頭を掻きながら顔を背けた彼は、わざとらしく咳払いをしてゆっくりと唇を開いた。
「それにしても、俺、ちょっと安心しました。妃殿下の笑顔が見れて」
ひとつひとつの言葉を丁寧に選んで紡がれたその呟きに、リリアは僅かに目を瞠る。その気配を察したのか、テオは弾かれたように振り返ると、胸の前で大袈裟に両手を振った。
「あっ、全然変な意味じゃないですからね! ただ、その……宮廷舞踏会でのことは、ここでも噂になってて」
あれは殿下が悪いですよ、と言いながら不満そうに眉を顰めるテオに、リリアはつい口元を綻ばす。
顔を合わせる全ての人間が、みな彼やクラリスのように気遣ってくれるわけではない。王城の端々で交わされる嘲笑は以前よりも増えたような気がするし、中にはあけすけに揶揄する者もいる。それらに一々反応していてはいけない、と、頭では分かっていても、それでも心を突き刺す痛みをどうにか出来るわけではない。
けれど――。むすっとしたコバルトグリーンの瞳を見つめながら、リリアは思う。皆が皆、やさしいわけでは決してない。けれど、ほんの僅かでも寄り添ってくれる人がいるだけで、とても幸せだ、と。
「あんなに頑張ってたのに。ほんと、殿下って人の心がないんですかね、まったく」
ぶつぶつと文句を漏らしながら再び扉へ向き直り、テオの右手がそっとノブへ伸びてゆく。
しかしその手はすぐに、何かを察したようにぴたりととまった。ノブまであと僅かというところで。
どうかしたのだろうか、と、思わずテオの後ろ姿へ目を向けたリリアの視界の端で、今まで微動だにしなかった扉が突然、まるでタイミングを見計らったかのように、内側から音もなく開かれた。
「あら」
開け放たれた扉の奥から姿を現したのは、艷やかな黒髪をした妙齢の女性だった。バッスルスタイルのドレスを美しく着こなした彼女は、扉の真ん前に立つテオを一瞥すると、すぐにリリアへ目を移し、婉然と微笑んだ。
「お会い出来て光栄ですわ」
たおやかに一礼した彼女は、そのまま流れるような所作で、一切の躊躇も気遣いも見せぬままテオの横を素通りすると、リリアの目の前で足を止めた。花のような、或いは砂糖菓子のような甘やかな香りが、ふわりと鼻先を掠める。よくよく見ると、彼女の顔はとても均整がとれていて美しく、実に蠱惑的で、リリアは思わず息を呑む。白磁のように滑らかな肌、きっちりとカーブのかかった濃く長い睫毛、まるで夜空を溶かし込んだかのようなネイビーブルーの瞳。
「……なるほど」
まるで精巧に造られた人形のようなその美貌に見惚れていると、不意に彼女が、何の前触れもなく顔を近付けてきた。吐息が鼻先に触れそうなほど近くまで、ぐっと。そのあまりの近さに驚き、リリアは咄嗟に身を反らす。
けれど彼女は気を悪くしたふうもなく、それどころかどこか満足げに目を細めると、真紅に染められた薄い唇に、艶やかな弧をそっと描いた。
「――私から殿下を奪ったのは、貴女ですのね」
早朝、侍女が引き攣った顔をして持ってきた父からの手紙を頭の片隅に思い浮かべながら、リリアは冷たい石造りの回廊をゆっくりと進む。広々とした中庭には、瑞々しい緑色をした芝生がびっしりと茂り、端の方には太く立派な幹をした欅が植わっている。真剣な面持ちで風を切るように素振りをしている者、首にかけたタオルで額に浮かんだ汗を拭っている者、丸太に腰掛けて楽しげに談笑をしている者。薄靄のかかったような青空だけれど、燦々と照りつける陽光はとても眩く、穏やかな風の運んでくる草の青い匂いがとても清々しい。
父からの手紙には、案の定、宮廷舞踏会での失態に対する罵倒が何行にも渡って殴り書かれていた。やはりお前は役立たずだ、と。この状況をどうしてくれるんだ、と。どこまで我々に迷惑をかけるつもりだ、とも。
ただでさえ噂のせいで思惑通りにいっていなかったのだから、一層憤怒が募るのもしかたがないだろう。カトリーヌを王太子妃に推挙するべきだった、と、今頃ひどく後悔しているのかもしれない。確かに世才に優れた彼女であれば、フレデリクの期待にしっかりと、もしかしたら望んだ以上に応えることが出来ただろう。役立たずの娘よりも、カトリーヌの方が王太子妃としてよほど相応しいのは明白だ。
もしかしたら、ルイスも――。ふと脳裏を過ったその思いに、リリアは思わず足をとめる。まるで細い棘が刺さるような、つんとした痛み。それは、風に揺れる草の香りの朗らかさとはまるで違う、どこか切ない感覚だった。馬鹿ね、と、そう自嘲をこぼしてみても、それは少しも薄まらない。それどころか、目を逸らそうとすればするほど痛みは増していき、そのあまりの存在感にたじろぎ、リリアは途方に暮れながら立ち尽くす。
もしかしたらルイスも、カトリーヌの方が良かったと思っているのではないだろうか。彼女の方が王太子妃として相応しかった、と。
もしカトリーヌが選ばれていたら、ルイスは彼女にどう接しただろう。お茶の時間をたくさん作っただろうか。寝室も食事も共にしただろうか。色んなことを語り合っただろうか。舞踏会で一緒にダンスを踊っただろうか――。
「えっ、妃殿下!? こんなところで何してるんですかっ!」
不意に響いた大声に、リリアは忽ち――殆ど強引に――意識の海から引き戻された。瞬きをひとつ、ふたつ。いつの間にか足元に落としていた視線をゆっくり上げると、そこには息を弾ませたテオが、アーモンド型の目をこれでもかと見開かせて立っていた。どうやら鍛錬をしている最中だったようで、薄っすらと日に灼けた首に清潔そうな白いタオルが掛かっている。
「もしかして、殿下をお探しですか?」
心做しか怯えたように、ほんの少しだけ眉根を寄せたテオに、リリアはふっと微笑みながらかぶりを振る。
「ユリウス様にお話ししたいことがあって伺ったのです」
「ああ、ユリウスさんですね。執務室にいると思うので、案内しますよ」
ほっと安堵したように表情を緩めながら、テオは首に掛けていたタオルを外す。ふと、身体に触れる幾つもの視線に気付いて中庭の方へ視線を遣ると、少し離れたところに、数人の若い兵士がこちらを眺めながら佇んでいるのが見えた。目が合うと、彼らはきびきびとした動きで敬礼をとり、その輪はまるで波紋のように、周囲へどんどんと広がってゆく。
そんな彼らへ微笑みとともに挨拶を返し、リリアは先をゆくテオの小さな背中を追うように、再び足を踏み出す。どのみち、誰かしらにユリウスの居所を聞かねばならなかったのだから、偶然にもテオと出会えたのは幸運だった。建物は思っていたよりももっとずっと大きく広々としているようで、彼に会わなければきっとどこかで迷子になっていたことだろう。
回廊を吹き抜ける風が、石壁にやわらかくぶつかりながら流れてゆく。気持ち程度の彩りにと植えられた可憐な青い花が、陽の光をたっぷりと受け止めながら静かに揺れている。どっしりとした白亜色の壁、所々に吊るされた錬鉄製のランプ、年季の入った木製の扉、白縁の質素な上げ下げ窓。
建物の中はその造りのせいか、少しだけひんやりとしていた。飴色の床は歩く度に小さく軋み、こつん、こつんと乾いた靴音を立てる。外壁と同じ色をした壁と窓、それから深茶色の扉だけ延々と続くだけの廊下は、王城のそれと比べて実に簡素で、飾り気がまるでない。
如何にも軍専用の施設然としたその様子を物珍しく眺めながら歩いていると、やがて先をゆくテオが扉の前で足をとめ、そうして肩越しに振り返った。何故か神妙な面持ちをして。
「あのっ……ひとつ、念の為に訊いておきたいんですけど」
そこでひとつ息を吐き、彼は言葉を探すように少し間を置いてから、口元に片手を添えた。まるで内緒話でも始めるみたいに。
「まさか、その……密会、とかじゃ、ないですよね」
ひそひそと囁かれた言葉に、リリアは思わず目を瞬かす。唐突すぎる問いに呆気を取られたものの、しかし次の瞬間には、くすくすと笑みがこぼれてしまった。あまりにも彼が、真剣な顔で尋ねるものだから。
ルイスに内緒で逢引しに来た、と、そう思ったのだろう。もしそうであるなら、事情を知らずとはいえ、道案内をしてしまった自分にも、万が一の時には何かしら罰が下るかもしれない、と不安に思うのも無理はない。
けれど、もし本当に密会であったなら、こんな真昼に堂々と正門を潜ってきたりはしないし、テオに道案内を頼んだりもしない。王城内ではなくとも、ここはルイスの管理下にある場所だ。どこで誰が見ているか分からないのだから、そもそも密会の場所に選ぶには相応しくない。
「大丈夫ですわ。そういったことではありませんから」
「あー……それなら、良かったです」
リリアの穏やかな否定に、テオは胸を撫で下ろすように息を吐く。そうして、決まり悪そうに頭を掻きながら顔を背けた彼は、わざとらしく咳払いをしてゆっくりと唇を開いた。
「それにしても、俺、ちょっと安心しました。妃殿下の笑顔が見れて」
ひとつひとつの言葉を丁寧に選んで紡がれたその呟きに、リリアは僅かに目を瞠る。その気配を察したのか、テオは弾かれたように振り返ると、胸の前で大袈裟に両手を振った。
「あっ、全然変な意味じゃないですからね! ただ、その……宮廷舞踏会でのことは、ここでも噂になってて」
あれは殿下が悪いですよ、と言いながら不満そうに眉を顰めるテオに、リリアはつい口元を綻ばす。
顔を合わせる全ての人間が、みな彼やクラリスのように気遣ってくれるわけではない。王城の端々で交わされる嘲笑は以前よりも増えたような気がするし、中にはあけすけに揶揄する者もいる。それらに一々反応していてはいけない、と、頭では分かっていても、それでも心を突き刺す痛みをどうにか出来るわけではない。
けれど――。むすっとしたコバルトグリーンの瞳を見つめながら、リリアは思う。皆が皆、やさしいわけでは決してない。けれど、ほんの僅かでも寄り添ってくれる人がいるだけで、とても幸せだ、と。
「あんなに頑張ってたのに。ほんと、殿下って人の心がないんですかね、まったく」
ぶつぶつと文句を漏らしながら再び扉へ向き直り、テオの右手がそっとノブへ伸びてゆく。
しかしその手はすぐに、何かを察したようにぴたりととまった。ノブまであと僅かというところで。
どうかしたのだろうか、と、思わずテオの後ろ姿へ目を向けたリリアの視界の端で、今まで微動だにしなかった扉が突然、まるでタイミングを見計らったかのように、内側から音もなく開かれた。
「あら」
開け放たれた扉の奥から姿を現したのは、艷やかな黒髪をした妙齢の女性だった。バッスルスタイルのドレスを美しく着こなした彼女は、扉の真ん前に立つテオを一瞥すると、すぐにリリアへ目を移し、婉然と微笑んだ。
「お会い出来て光栄ですわ」
たおやかに一礼した彼女は、そのまま流れるような所作で、一切の躊躇も気遣いも見せぬままテオの横を素通りすると、リリアの目の前で足を止めた。花のような、或いは砂糖菓子のような甘やかな香りが、ふわりと鼻先を掠める。よくよく見ると、彼女の顔はとても均整がとれていて美しく、実に蠱惑的で、リリアは思わず息を呑む。白磁のように滑らかな肌、きっちりとカーブのかかった濃く長い睫毛、まるで夜空を溶かし込んだかのようなネイビーブルーの瞳。
「……なるほど」
まるで精巧に造られた人形のようなその美貌に見惚れていると、不意に彼女が、何の前触れもなく顔を近付けてきた。吐息が鼻先に触れそうなほど近くまで、ぐっと。そのあまりの近さに驚き、リリアは咄嗟に身を反らす。
けれど彼女は気を悪くしたふうもなく、それどころかどこか満足げに目を細めると、真紅に染められた薄い唇に、艶やかな弧をそっと描いた。
「――私から殿下を奪ったのは、貴女ですのね」
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