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突然の誘い
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およそ優雅さの欠片もない――それこそ突き破ってしまいそうな――勢いで扉が開かれた瞬間、フィオナの斜向かいに立っていたアレンは、ずかずかと踏み入ってきた主人の顔を一瞥すらすることなく、やれやれと大仰に肩を竦めた。やっぱりこうなった、と、まるでそう言いたげな呆れ顔をして。
「来てるなら早々に連絡しろ」
ビロードの貼られた臙脂色のソファにどさりと腰掛けながら、シリウスは鋭い目つきでアレンを睨め付ける。けれども、当の本人はその刺々しい視線など全く意に介した風もなく主人から顔を背けると、ふと目の合ったフィオナに向かって、にこりと微笑んだ。
「待たせてすまなかった」
シリウスの真面目な謝罪に、フィオナは手にしていたティーカップをソーサーの上に戻して、ゆるゆるとかぶりを振る。
「いえ、大丈夫です。アレンさんがたくさんお話しして下さいましたし、それに――」
美味しい紅茶や、ケーキスタンドいっぱいにマカロンやクッキーや、マドレーヌなどのお菓子を用意してくれたから――と続けようとして、しかしフィオナの唇は、唐突に交わった視線によって動きをとめる。奪われた、といった方が正しいのかもしれない。真正面から向けられるアイスブルーの瞳が、あまりにも真剣で。合わさった目を通してその奥を、心の内側を見透かそうとする瞳に、フィオナは思わずたじろぐ。怒っているというより、怪しんでいるというより、多分その瞳に滲んでいるのは憂慮だった。
「――泣いていたのか?」
全く予想外の問いに、フィオナはどきりとして、ソーサーを持つ手に僅かばかり力がこもる。すぐ傍らでアレンが息を呑むような気配がした。ちら、と横目で様子をうかがうと、しかし彼は何も知らない、何もわからない、とった顔で佇んでおり、もしかしたらあの些細な空気の震えは気の所為だったのかも知れない、とフィオナは思う。
「まさか。泣いてなんかいませんよ」
実際それは嘘だった。アレンからハンカチを受け取るまで気付かなかったとはいえ、彼曰く「涙でぐちゃぐちゃ」になるまで泣いたのは事実だったのだから。その後目の腫れを鎮める為に冷やしたタオルを渡され、崩れた化粧は侍女に――アレンの指示で――直してもらった。シリウスの戻りが遅かったのは、だから都合が良かったし、おかげで王城へ来た時と何も変わらない状態に戻った――はず、だったのだけれど。
何故、分かったのだろう。心を落ち着ける為に紅茶を一口飲み、フィオナは小さく息を吐く。何度か鏡で確認をしたけれど、目の腫れも鼻の赤みも引いていたし、化粧だってちゃんと綺麗なままだった。アレンからだって「大丈夫そうですね」と保証をもらっていたはずだというのに。どうしてシリウスは分かったのだろう。
「……そうか」
納得がいった風ではなかったけれど、それでもシリウスはそれ以上追求してくることはせず、侍女の用意したティーカップを手に取り、薄い縁にそっと唇を寄せた。アッサムを淹れたのか、仄かに甘く華やかな香りがする。
「ところで殿下、アメリア嬢はよろしいのですか?」
「とっくに帰ったから、気にする必要はない」
そう言って、シリウスは苦々しく顔を歪めながら、片手を左右に振る。まるでその話はもうお終いだ、とでも言うように。アレンは呆れたように溜息をついたが、それでもシリウスは、苦虫を噛み潰したような顔をやめない。そのかんばせが意外で、フィオナは僅かに目を瞠る。
アメリア嬢といえば、レグナリス王国の二大公爵家の一つであるグランディール公爵家の一人娘だ。美しいブロンドの髪の毛と、ぱっちりとして大きな目、その中心で輝く麗しい琥珀色の瞳。同性ですら見惚れるほどの類稀なる美貌から、社交界では“光麗の至宝”と讃美され、また或いは愛と美の女神の生まれ変わりだと謳われてもいる。
そんな彼女こそ、シリウスとともに中庭を散歩していた女性その人なのだが、しかし絶世の美姫と優雅なひとときを過ごしていたという割には、当のシリウスの反応はあまりにもぞんざいだった。アメリアと散歩をしたい男はこの世に五万といるであろうし、彼らにとってそれは最大の幸福に違いない。だというのに、シリウスはその話題をにべもなく終わらせると、ただ静かに二人の遣り取りを見守っていたフィオナの双眸を真っ直ぐに捉えた。本題に入るつもりなのだろう。そう感じ取ったフィオナの予想通り、彼は長い脚を組み、ひとつ間を置いてから試験薬の話題を切り出した。
「魔獣によって負わされた傷は治りにくいので、可能な限り効果を高めたものと、それから、身体を癒す助けになる効能をプラスしたものを用意してみました」
バスケットの中に入れていた布の包を取り出し、ひとつずつ説明を添えながら、それぞれ小瓶をテーブルに並べてゆく。
「人体に悪影響がないことは、自分で試して確認しているので大丈夫です」
「……は?」
布を丁寧に折り畳み、そうしてにっこりと――少しだけ胸を張って――笑んだフィオナの顔を、しかしシリウスは眉根を寄せながら凝視した。皺の痕がそこに残ってしまうのではないかと思うほど、くっきりと。「嘘だろう?」まるでそう言いたげな目で。それは視界の端に映るアレンもまた同じで、彼はぎょっと目を見開かせたかと思うと、すぐに主人と同じように眉を顰めた。理解出来ない、というより、心配と呆気を滲ませて。
思ってもいなかった二人の反応に、フィオナは困惑しながら小首を傾げる。そんな彼女に、シリウスは深々と溜息をつきながら前髪を掻き上げた。
「頼むから、危険なことはしないでくれ」
呆れを若干滲ませつつも、それでも切実な頼みであるのがはっきりと感じ取れるその声音に、フィオナは一層当惑してしまう。安全の確立されたレシピで調合された薬なら兎も角、試験薬をいきなり他人に飲ませるわけには当然いかない。先ずは自身の身体で試し、副作用などの問題がないことを確かめるのは大事なことであるし、祖母も全く同じことをしていた。有毒の薬草を混ぜていなくとも、成分同士が結合した結果、それが毒となることもまたあるからだ。故に確認をせず他者に飲ませることなど、出来るはずがない。
あれこれと返答を考えてみるけれど、どれも違うような気がして――より彼を怒らせたり呆れさせたりしそうで――まごついていると、不意に傍らから、ふっ、と笑みのこぼれる音が聞こえた。フィオナはぱちりと目を瞬かせ、声の聞こえた方へ顔を向ける。目が合うと、アレンは心做しか愉しげに顔を綻ばせた。
「心配なんですよ、殿下は。フィオナ嬢の身にもしものことがあったら――」
「余計なことは言うな」
アレンの言葉を無理矢理遮り、シリウスは厳しい目つきで彼を一瞥する。そんな主人に、アレンはくつくつと笑って、それから大人しく唇を閉ざした。
そんな二人の、主従関係にありながらあまりそうは見えない雰囲気に、そういえば彼らは幼少の頃からの付き合いだったことをフィオナは思い出す。もちろんアレンは礼儀を弁えているし、従者として主人を敬ってもいるけれど。彼らの関係を一言で表すならば、それは“主人と従者”ではなく、“気の置けない親友”の方がしっくりくる、とフィオナは思う。シリウスもアレンも、互いに対していい意味で遠慮がない。呪いの影響を恐れ、人との付き合いを極力避けていたせいで“友人”を作ることも出来なかったフィオナにとって、故にそんな彼らの心の繋がりが、フィオナはとても羨ましかった。
「ともかく、自分で作った薬を何でも口にするのはやめるように」
何でもかんでも口にしているわけではないのだけれど、と思いつつ、しかしフィオナは大人しく――渋々ではあるが――頷いておく。それを認め、シリウスはあまり信じたふうではなかったけれど、すぐにやさしく口元を綻ばすと、テーブルの上に並べられた小瓶をひとつ手に取った。
「試験薬は、早速試してみることにしよう。負傷した団員が、今も病院で苦しんでいるからな」
シリウスの指示で三つの小瓶を慎重に集めるアレンへ対し、フィオナは医院長宛の言付けを言い添える。服薬している間は、どんな些細なことでもいいので、精神や体調面の記録をつけておいてほしいこと。異常が見られたらすぐに服薬を停止してほしいこと。体調が改善したら、どのような感覚――身体が軽くなっただとか、目覚めがよくなっただとか――があるのかを聞き取りしてほしいこと。それらを今後の調薬に活かすので、と締め括ると、アレンはゆっくりと顔を縦に振り、了承の意を示してくれた。
「それでは、私はそろそろ帰ります」
侍女に淹れてもらった紅茶を全て飲み干し――お菓子はさすがに食べきれなかった――、二、三言交わしてから、フィオナは空っぽのバスケットを片手に立ち上がる。アレンもシリウスも、ここ最近はひどく多忙だと聞いていたので、あまり長居をするつもりは毛頭なかった。この後も彼らにはこなさなければならない仕事が山のようにあるのだろうし、そんな二人を他愛もない話に付き合わせるのは申し訳がない。少しでもそんな時間があるのなら、それは他愛もない会話にではなく、しっかりとした休息にあててほしかった。
「馬車までお送りします」
律儀なアレンが先に出入り口の方へ向かい、両脇に待機していた侍女に目配せをして扉を開かせる。そんな彼の後を追って足を進めようとしたフィオナは、しかし唐突に名前を呼ばれ、片足を踏み出した格好ではたと動きをとめた。驚いてシリウスの方へ目を向ければ、真剣な――少しだけ寂しそうな――アイスブルーの瞳と視線が交わる。すぐに言葉を紡ぐことが出来ずどぎまぎしていると、彼は何故かふっと笑みを漏らし、そうして徐ろに立ち上がった。
「――温室を、観に行かないか?」
「来てるなら早々に連絡しろ」
ビロードの貼られた臙脂色のソファにどさりと腰掛けながら、シリウスは鋭い目つきでアレンを睨め付ける。けれども、当の本人はその刺々しい視線など全く意に介した風もなく主人から顔を背けると、ふと目の合ったフィオナに向かって、にこりと微笑んだ。
「待たせてすまなかった」
シリウスの真面目な謝罪に、フィオナは手にしていたティーカップをソーサーの上に戻して、ゆるゆるとかぶりを振る。
「いえ、大丈夫です。アレンさんがたくさんお話しして下さいましたし、それに――」
美味しい紅茶や、ケーキスタンドいっぱいにマカロンやクッキーや、マドレーヌなどのお菓子を用意してくれたから――と続けようとして、しかしフィオナの唇は、唐突に交わった視線によって動きをとめる。奪われた、といった方が正しいのかもしれない。真正面から向けられるアイスブルーの瞳が、あまりにも真剣で。合わさった目を通してその奥を、心の内側を見透かそうとする瞳に、フィオナは思わずたじろぐ。怒っているというより、怪しんでいるというより、多分その瞳に滲んでいるのは憂慮だった。
「――泣いていたのか?」
全く予想外の問いに、フィオナはどきりとして、ソーサーを持つ手に僅かばかり力がこもる。すぐ傍らでアレンが息を呑むような気配がした。ちら、と横目で様子をうかがうと、しかし彼は何も知らない、何もわからない、とった顔で佇んでおり、もしかしたらあの些細な空気の震えは気の所為だったのかも知れない、とフィオナは思う。
「まさか。泣いてなんかいませんよ」
実際それは嘘だった。アレンからハンカチを受け取るまで気付かなかったとはいえ、彼曰く「涙でぐちゃぐちゃ」になるまで泣いたのは事実だったのだから。その後目の腫れを鎮める為に冷やしたタオルを渡され、崩れた化粧は侍女に――アレンの指示で――直してもらった。シリウスの戻りが遅かったのは、だから都合が良かったし、おかげで王城へ来た時と何も変わらない状態に戻った――はず、だったのだけれど。
何故、分かったのだろう。心を落ち着ける為に紅茶を一口飲み、フィオナは小さく息を吐く。何度か鏡で確認をしたけれど、目の腫れも鼻の赤みも引いていたし、化粧だってちゃんと綺麗なままだった。アレンからだって「大丈夫そうですね」と保証をもらっていたはずだというのに。どうしてシリウスは分かったのだろう。
「……そうか」
納得がいった風ではなかったけれど、それでもシリウスはそれ以上追求してくることはせず、侍女の用意したティーカップを手に取り、薄い縁にそっと唇を寄せた。アッサムを淹れたのか、仄かに甘く華やかな香りがする。
「ところで殿下、アメリア嬢はよろしいのですか?」
「とっくに帰ったから、気にする必要はない」
そう言って、シリウスは苦々しく顔を歪めながら、片手を左右に振る。まるでその話はもうお終いだ、とでも言うように。アレンは呆れたように溜息をついたが、それでもシリウスは、苦虫を噛み潰したような顔をやめない。そのかんばせが意外で、フィオナは僅かに目を瞠る。
アメリア嬢といえば、レグナリス王国の二大公爵家の一つであるグランディール公爵家の一人娘だ。美しいブロンドの髪の毛と、ぱっちりとして大きな目、その中心で輝く麗しい琥珀色の瞳。同性ですら見惚れるほどの類稀なる美貌から、社交界では“光麗の至宝”と讃美され、また或いは愛と美の女神の生まれ変わりだと謳われてもいる。
そんな彼女こそ、シリウスとともに中庭を散歩していた女性その人なのだが、しかし絶世の美姫と優雅なひとときを過ごしていたという割には、当のシリウスの反応はあまりにもぞんざいだった。アメリアと散歩をしたい男はこの世に五万といるであろうし、彼らにとってそれは最大の幸福に違いない。だというのに、シリウスはその話題をにべもなく終わらせると、ただ静かに二人の遣り取りを見守っていたフィオナの双眸を真っ直ぐに捉えた。本題に入るつもりなのだろう。そう感じ取ったフィオナの予想通り、彼は長い脚を組み、ひとつ間を置いてから試験薬の話題を切り出した。
「魔獣によって負わされた傷は治りにくいので、可能な限り効果を高めたものと、それから、身体を癒す助けになる効能をプラスしたものを用意してみました」
バスケットの中に入れていた布の包を取り出し、ひとつずつ説明を添えながら、それぞれ小瓶をテーブルに並べてゆく。
「人体に悪影響がないことは、自分で試して確認しているので大丈夫です」
「……は?」
布を丁寧に折り畳み、そうしてにっこりと――少しだけ胸を張って――笑んだフィオナの顔を、しかしシリウスは眉根を寄せながら凝視した。皺の痕がそこに残ってしまうのではないかと思うほど、くっきりと。「嘘だろう?」まるでそう言いたげな目で。それは視界の端に映るアレンもまた同じで、彼はぎょっと目を見開かせたかと思うと、すぐに主人と同じように眉を顰めた。理解出来ない、というより、心配と呆気を滲ませて。
思ってもいなかった二人の反応に、フィオナは困惑しながら小首を傾げる。そんな彼女に、シリウスは深々と溜息をつきながら前髪を掻き上げた。
「頼むから、危険なことはしないでくれ」
呆れを若干滲ませつつも、それでも切実な頼みであるのがはっきりと感じ取れるその声音に、フィオナは一層当惑してしまう。安全の確立されたレシピで調合された薬なら兎も角、試験薬をいきなり他人に飲ませるわけには当然いかない。先ずは自身の身体で試し、副作用などの問題がないことを確かめるのは大事なことであるし、祖母も全く同じことをしていた。有毒の薬草を混ぜていなくとも、成分同士が結合した結果、それが毒となることもまたあるからだ。故に確認をせず他者に飲ませることなど、出来るはずがない。
あれこれと返答を考えてみるけれど、どれも違うような気がして――より彼を怒らせたり呆れさせたりしそうで――まごついていると、不意に傍らから、ふっ、と笑みのこぼれる音が聞こえた。フィオナはぱちりと目を瞬かせ、声の聞こえた方へ顔を向ける。目が合うと、アレンは心做しか愉しげに顔を綻ばせた。
「心配なんですよ、殿下は。フィオナ嬢の身にもしものことがあったら――」
「余計なことは言うな」
アレンの言葉を無理矢理遮り、シリウスは厳しい目つきで彼を一瞥する。そんな主人に、アレンはくつくつと笑って、それから大人しく唇を閉ざした。
そんな二人の、主従関係にありながらあまりそうは見えない雰囲気に、そういえば彼らは幼少の頃からの付き合いだったことをフィオナは思い出す。もちろんアレンは礼儀を弁えているし、従者として主人を敬ってもいるけれど。彼らの関係を一言で表すならば、それは“主人と従者”ではなく、“気の置けない親友”の方がしっくりくる、とフィオナは思う。シリウスもアレンも、互いに対していい意味で遠慮がない。呪いの影響を恐れ、人との付き合いを極力避けていたせいで“友人”を作ることも出来なかったフィオナにとって、故にそんな彼らの心の繋がりが、フィオナはとても羨ましかった。
「ともかく、自分で作った薬を何でも口にするのはやめるように」
何でもかんでも口にしているわけではないのだけれど、と思いつつ、しかしフィオナは大人しく――渋々ではあるが――頷いておく。それを認め、シリウスはあまり信じたふうではなかったけれど、すぐにやさしく口元を綻ばすと、テーブルの上に並べられた小瓶をひとつ手に取った。
「試験薬は、早速試してみることにしよう。負傷した団員が、今も病院で苦しんでいるからな」
シリウスの指示で三つの小瓶を慎重に集めるアレンへ対し、フィオナは医院長宛の言付けを言い添える。服薬している間は、どんな些細なことでもいいので、精神や体調面の記録をつけておいてほしいこと。異常が見られたらすぐに服薬を停止してほしいこと。体調が改善したら、どのような感覚――身体が軽くなっただとか、目覚めがよくなっただとか――があるのかを聞き取りしてほしいこと。それらを今後の調薬に活かすので、と締め括ると、アレンはゆっくりと顔を縦に振り、了承の意を示してくれた。
「それでは、私はそろそろ帰ります」
侍女に淹れてもらった紅茶を全て飲み干し――お菓子はさすがに食べきれなかった――、二、三言交わしてから、フィオナは空っぽのバスケットを片手に立ち上がる。アレンもシリウスも、ここ最近はひどく多忙だと聞いていたので、あまり長居をするつもりは毛頭なかった。この後も彼らにはこなさなければならない仕事が山のようにあるのだろうし、そんな二人を他愛もない話に付き合わせるのは申し訳がない。少しでもそんな時間があるのなら、それは他愛もない会話にではなく、しっかりとした休息にあててほしかった。
「馬車までお送りします」
律儀なアレンが先に出入り口の方へ向かい、両脇に待機していた侍女に目配せをして扉を開かせる。そんな彼の後を追って足を進めようとしたフィオナは、しかし唐突に名前を呼ばれ、片足を踏み出した格好ではたと動きをとめた。驚いてシリウスの方へ目を向ければ、真剣な――少しだけ寂しそうな――アイスブルーの瞳と視線が交わる。すぐに言葉を紡ぐことが出来ずどぎまぎしていると、彼は何故かふっと笑みを漏らし、そうして徐ろに立ち上がった。
「――温室を、観に行かないか?」
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