素直になれない僕は君に恋をする

AliceTaylor

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3話 僕はあの音を忘れない

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謝れなかった。学校が終わり家に帰ったあとでもその後悔で頭が痛い。意気地無し過ぎて自分が嫌いになる。自分で謝ると決めたのに謝れなかった、悔しい。

 そんな思いを抱えながら僕は床に着いた。

 翌朝、俺は憂鬱な気持ちで学校に登校した。何も変わらない、特に誰と話す訳も無い朝。
 ただこいつを除いて

 「おはよう!KA☆N☆ZA☆KI!」

 このよく分からないテンションで話しかけてくる男は西田恭平。少し前初めての英語の小テストの際少し勉強を教えたらなぜか付き纏うようになった変わり者。

 「おはよう、なんでお前は俺に話しかけるんだよ。もっと仲のいい友達も居るだろ?」

 「それはそうだけど、話しかけるのに仲の良さは関係無いだろ!」

 こいつはいつまでもこう言うキャラらしい。良い奴と言うかアホというか。

 「今日のお前どうしちゃったんだよ、なんかいつもと違うぜ?」

 「そんな事は無いだろ、俺はいつも通りだ」

 こいつ、なんで分かるんだよ。俺はいつも通り表情はあまり動かしてないのに。

 「なんかな~目の奥が寂しそうって言うか?いつもと目が違う」

 「お前俺を見つめてるってことか、?変態か?」

 なるほど、目の奥か。表情筋は制御出来ても目の奥には感情が現れてしまうのか。こいつには勝てないな

 「で?何があったんだよ」

 「ちょっと悩み事がな、だが大した問題じゃない」

 「そうなのか?それなら良いんだが、、何かあったら言えよ!」

 そう言って西田は別の人に絡みに行った。

 やはり俺は後悔してるらしい。次いつ謝るタイミングが来るか分からない、そんな焦燥感を抱えながら今日一日が始まる。

 昼休みになった。結局午前の授業は魂が抜けたような状態でほぼ内容を覚えていない。今日こそはそう思い俺は坪内の居る2組を覗きに行った。

 「これパッと見変態だな」

そう思ってしまった。だがそれでいい、そんな事を気にしているようではまた謝る機会を失ってしまう。

 「坪内はどこだ」

 そう思いクラスを見渡す。しかし居ない、廊下を見るも姿は見えない。どこか別の所でご飯を食べるのかと思い学校中を走り回った。学食、図書室、家庭科室、中庭、どこを見ても居ない。

 「もしかして今日休みだったのか?」

 そう思い足を止めてしまった。

 でも、もしそうだとしても居るという可能性がある限り探し続ける、そう決めた。

 15分くらい走り回っただろうか、虱潰しに回ったが見つからない。

 「休みだったのか」

 そう思い教室に戻ろうとした。だが目の前に見覚えのある長い髪、

 「坪内だ、」

 遂に見つけた、これまでの過程を見るとただのストーカーかもしれない。でもそれでいい。ようやく回ってきたチャンスだ。俺は腹に力を入れて声を出した。

 「坪内さん!」

 声が出た。ようやく、情けない俺が。そういう気持ちで胸が一瞬いっぱいになってしまったが違う。本番はここからだ。坪内は俺の事を見ると明らかに動揺していた。だがそんな動揺を他所に俺は言葉を続ける。

 「君に謝りたいんだ。少し話をさせてくれないか!」

 その言葉を坪内が聞いた時、驚きながら彼女は何も言わずに頷いた。

 「ここじゃ場所が悪いから少し移動しよう」

 そう言って僕らは1番近い体育館へ移動した。

 俺は焦りまくっていた。言う機会が与えられたが緊張で口から腸が出そうだ。我慢だ、耐えろ。

 体育館に着いた時俺は開口一番

 「月曜日の事は本当にごめんなさい、盗み聞きした事もその後の心無い言葉も全て!」 

 言えた、言えたんだ俺は。少し安心したが彼女に対してまだ謝らなければならない。そう覚悟していた。

 「なんだ、そんな事か!」

 彼女は少し笑いながらそう言った。俺は理解出来なかった。とてつもなく詰められると踏んでいたから。だが彼女俺の想像とは違った

 「私はあの告白の事を餌に私を貶めようとしてると思ってたの」

 彼女は笑顔でそう言った。

 「別に君に言われた事は気にしてないし、私もそう思うから。身の程知らずだったよね、本当に」

 僕はなんて言えば良いか分からなかった。だが彼女は優しい。それだけは分かった。

 「本当にごめんなさい。絶対に誰にも言わないと約束する」

 「分かったから、お互いもうあの事は忘れよう?お互い苦しむだけだからさ!」

 「坪内さんがそう言うなら僕もそうさせてもらいますね」

 焦りながらも彼女に同意するしか無かった。

 「君名前なんて言うの?せっかくの機会だからお互いの事しっかり覚えておこうよ」

 彼女はそう言い太陽のような笑顔を見せた。

 「神崎…唯人です…」

 普段人に名前を聞かれることが無いので慣れない返事の仕方をしてしまった。

 「神崎くんね!分かった。覚えておくね」

 彼女が言葉を言い終えるとほぼ同時にチャイムが鳴った。

 「あれ!もうお昼休み終わりになっちゃった。職員室行っててお昼ご飯食べ忘れちゃったな。神崎くんはお昼ご飯食べた?」

 「いや、まだです。ずっと坪内さん探してて食べるの忘れてました。ごめんなさい僕に付き合わせてご飯逃して」

 そう僕が言った後に彼女は不敵な笑みを浮かべる。

 「5時間目サボって一緒にお昼食べようか。告白を見てくれた神崎くんになら色々相談とかも出来そうだし!」

 「サボってですか、?」

 やはり陽キャは考えが凄い。俺なら授業をサボるという選択肢すら出てこない。だがなぜか今はその選択肢が最善だと分かる。

 「僕なんかで良ければ一緒に食べましょう」

 「よし!そう来なくちゃ!急いで教室戻ってお弁当取ってきてまた体育館集合ね!」

 彼女はそう言いながら走って教室に戻って行った。なんて明るい人なんだ、なぜか笑みがこぼれてしまった。

 「そうだ俺は言えたんだ。素直な、謝りたいという気持ちを。」

 こんな事している場合では無い、俺もお弁当を取ってこなければ。そう思い駆け出す。チャイムの残響が耳に残る。この音は忘れないだろう。

   "勝利のゴングの音を"
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