パワハラ女上司からのラッキースケベが止まらない

セカイ

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第12話 利害一致の関係

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 格好つけて計画なんて言ったけれど、俺たちがしたことはとっても単純なことだった。
 桃木さんたちがリスクを感じていた通り、俺が告発する。ただそれだけだ。

 うちの会社は小さいので、大きなところに比べて平社員でも社長との距離は近い。
 だから俺は椿原部長との話し合いから数日後、証拠を携えて社長へ直々に自分の置かれた境遇を告発しにいった。

 とは言え、これまでのあらましを全て丁寧に説明してしてしまうと、それは椿原部長の危惧していた通り管理者の責任を問われるし、もちろん自身のしたことの責めも負うことになる。
 だから俺が告げたのは、桃木さんたちに過剰な陰口をされている、という事実だけだ。

 最初の証拠以外にも、この数日間で俺と椿原部長は彼女たちの陰口の収集をした。
 そしてその中から、俺に対する罵倒や追い出すための画策をしている部分だけをピックアップしたのだ。

 陰口を言われるだけなら、場合によってはある程度仕方のない人間関係の不和と捉えられてしまうかもしれない。
 しかしなかなかに過激な内容の証拠と、そして俺が辞めようか悩んでいるとこぼせば、社長も無視することはできなかった。

 俺が告発した少し後、桃木さんたちは社長に呼び出されヒアリングを受けていた。
 案の定彼女たちは、俺をいじめていたのは自分たちではなく椿原部長だと言ったそうだ。
 しかし改めて話を聞かれた俺は、それをきっぱりと否定した。
 椿原部長は厳しいけれど、適切な指導を受けているとしか感じたことはない、と。

 そして部長自身にもまた、パワハラや嫌がらせはしていないと、確実にそう証言してもらう必要があった。
 桃木さんたちに強要されて自白なんてされてしまっては、そこで一気に全てが破綻する。
 だからこそこれは、椿原部長の協力が必要だった。

 部長からの被害はないと俺が言う以上、先輩たちが揃って何を主張しようが、ただ口裏を合わせて貶めようとしているとしか思われない。
 それに彼女たちの陰口自体は、明確に証拠として残っているのだ。

 結果、俺たちの思惑通りに事は進んだ。
 俺の告発は受理され、桃木さんたちはその責めを負うこととなった。
 椿原部長は管理者として多少の責任は問われてしまうかもしれないが、陰口の現場映像で部長の不在時であることが証明されている。
 本来危惧していたような大きなダメージになる事はないだろう。

 桃木さんたちはといえば、流石に解雇になることはなかったが、厳重注意が言い渡されたようだ。
 社長も決して問題を軽く捉えていたわけではないが、しかし少ない人員の中で四人を一斉に解雇や停職などの厳罰にするのは、会社としてデメリットが大きい。
 厳しく言い聞かせるから今回はそれで穏便に済ませて欲しいと、そう社長からお願いされて、俺はそれを受け入れた。

 確かに裏切られたショックはかなり大きかったが、先輩が四人とも一斉にいなくなっては現実問題俺たちも困る。
 それに例え裏の顔を隠していたとはいえ、俺は今まで見せてくれていた桃木さんたちの表の顔は好きだった。
 今後その表の顔だけでいてくれるのであれば、仲良くしてくれるのであれば、それでいいと思ったのだ。

 幸い社長は、この問題発覚を俺自身からのものではなく、善意の第三者からのもの、のような感じで伝えてくれたようだ。
 だから桃木さんたちは、俺に陰口がバレている事を知らないし、よって俺からの仕返しだとも知らない。
 そうする事で、狭い部署内の空気は表面上これまで通りに保つことができたのだった。

 だからまぁ本人たちからの謝罪なんかはなかったけれど。
 それでも社長直々の指導を受けたという事実で、俺はかなり胸がすいた。

 それに社長は事態を重くみて、社内全体にハラスメントや嫌がらせなどの監視の強化と、もし発覚した時の処罰の厳しさを言い渡した。
 俺の件そのものはもちろん公には言わないが、まぁ桃木さんたち当人は何がきっかけか当然わかるだろう。

 そう大々的に通達されれば、俺に対する陰口だけではなく、椿原部長への虐めもやりにくくなる。
 椿原部長自身が被害を訴えられずとも、誰かが気付いて大問題に発展する可能性がとても大きくなるからだ。

 そうしてこの一件は、とてもスムーズに解決へと向かった。
 俺の思いつきなので、どこかで予想外のことが起きないかとハラハラしたけれど。
 全て俺たちの思った通り、一番責めを負うべき人たちがきちんと罰されてくれた。
 俺たちは、平和な日常を手に入れたのだった。



 ────────────



「草野くん! これどういうこと!?」

 一ヶ月ほど経ったとある朝の日。
 業務を始めてすぐ、俺は背後からの叫び声に飛び上がった。
 慌ててくるりと振り返ると、視界を埋め尽くすほどの巨乳がすぐそこで圧を振り撒いていて、俺は重ねてギョッとしてしまった。

「昨日中って頼んでいたあの入力、私が指示した内容と全然違うわ! あなた、こんな単純なこともできないの!?」

 腰に手を当てこちらを見下ろしながら喚く椿原部長。
 その語気が力を含むたび、目の前の胸がぷるぷると震えて話が全く入ってこない。

「本当にあなたって……! ちょっと来なさい!」

 くどくどと叱責を並べても尚言いたりないらしく、椿原部長はそう放ってツカツカと先に会議室へと向かった。

「ね、ねぇ、草野くん」

 部長が去ってから、桃木さんがおずおずと声をかけてきた。
 いやに低姿勢な感じで、周囲の様子を窺いながらだ。

「大丈夫? あのね、私、やっぱりああいうのよくないと思うんだよね。社長も仰ってたし、私でよかったら力になるよ?」

 その言葉に周りの先輩方もここぞとばかりに身を乗り出し、うんうんと頷いた。
 そんな彼女たちを見やって、俺はしっかりと首を横に振った。

「いいえ、大丈夫です。別に嫌なことだとは思いませんし」
「で、でも、あれってパワハラ……」
「まさか。確かに厳しいですけど、然るべきお叱りかと」

 頑としてその主張を繰り返す俺に、桃木さんは顔を引き攣らせた。
 思惑がうまくいかなかったからか、それともコイツ真性のドMだとドン引きしたのか。
 多分後者な気がするが、仕方ない。その評価を甘んじて受け入れよう。今となっては。

 社長からの厳重注意の後、桃木さんたちの嫌がらせは全くなくなった。
 表面上の関係性も今まで通り仲の良いままだ。
 しかし時折こうして助力を提案しては、自分たちの状況の改善を試みてくる。
 毎回俺が断るたびに浮かべる愕然の表情が、こういってはあれだが少し面白い。

「お気遣いありがとうございます。でも、早く行かないともっと怒られちゃいますんで」

 ぺこりと頭を下げてから、俺は会議室へと急いだ。
 この半年毎朝こなしてきたのと同じ、会議室でのお説教を受けるためだ。

 そう、椿原部長からのパワハラは今も尚続いている。
 何故って、それが俺からのお願いの内容だから。
 告発対象に部長を含まず守ることへの条件。そして今まで俺を虐げてきたことへの謝罪として。
 椿原部長にはこれからも引き続き俺にパワハラをしてもらう。そういう約束をしたのだ。

「遅い!」

 会議室に入るなり椿原部長の怒号が飛んできて、俺は慌てて扉を閉める。
 待ち受けていた部長は椅子に座って大きく脚を組み、脇の机に肘をついて大層不機嫌そうだった。

 これから雷が落ちるのは必定だったが、俺は見逃さない。
 机に寄りかかった椿原部長の片胸が机にぽってりと乗っかり、その大きすぎる膨らみを強調しているのを。
 そして脚を組んでいるせいでタイトスカートが結構捲れていて、ちょうどいい太さの太ももの白い肌が眩しいことを。

 今まで通りのパワハラ。そしてラッキースケベもまた健在なのだ。
 まぁつまりはそういうこと。
 俺はこれからも引き続きラッキースケベを楽しませていただくため、パワハラが続くことを望んだ。

 もちろん椿原部長はそんなことは知らない。
 明確な理由はわからないけれど、ラッキースケベは完全に無自覚、意図していないものだった。
 ならばこれからも是非ともそれを続けていただこうじゃないか。
 それくらいのことをこっそり楽しむ権利はあるはずだ。

「何ボッサとしてるの? 土下座、しなさいよ早く」

 そう静かに、しかし確かな強制力を持って放たれた言葉に、俺は素直に従い足元に正座する。
 さすが堂に入っているというか。半年やり続けてきただけのことはある。
 パワハラをするきっかけは椿原部長自身になくても、どう俺に嫌がらせをしようか考え、実行したのは部長自身。
 これはある意味、隠された一面というやつなのかもしれない。

「早くって言ったでしょ!?」

 俺が頭を下げるよりも早く椿原部長の踵が俺の肩に降ってきて、そこからグイッと強引に姿勢を倒された。
 俺は潰れるように頭を床に擦り付け、声にならない呻きを漏らす。

 あの一件を経た後も、俺たちの関係は全く変わらなかった。
 パワハラをし、される関係というのもそうだが、個人的にも特に何もない。
 これが漫画やドラマなら、恋愛関係に発展したり、主従関係が反転したりとか、そういう結末を迎えるだろう。

 でも、そういったものは全くない。
 椿原部長自身は別に俺のことを嫌っていないとわかったし、パワハラもお願いした上なので、俺が持つ部長への苦手意識はほぼなくなったけど。
 でもそれだけ。特に仲良くすらなっていない。
 それでいい。それがいい。それがちょうどいい。

「あなたって何から何までノロマね。その上仕事もできないし。図体ばかり大きくて何にも役に立たないなんて。男のくせに情けない」

 俺の肩から足を下ろした椿原部長は、今度は俺の目の前にしゃがみ込んでそう嘲るように言った。
 まだ頭を下げた状態の俺だけれど、少しだけ体勢を上げて上方を見やれば、そのスカートの中身をしっかり捉えることができた。

 なかなか拝むことのできないむちっとした太ももの裏側が、しゃがんでいることで潰れ、筋肉のラインが見えるのが妙に背徳的だ。
 その白い肌がぷるんとした臀部へと伸びる丸みもまたよく見える。

 そしてその間に窺えるのは、一切の穢れを感じさせない白いレースのパンツだった。
 かなりのローアングルのお陰で、その布地が椿原部長の秘部にどのように食い込んでいるかまで確認できそうで、かなりハラハラドキドキしてしまう。

「みっともない男。あなたのような男が部下だなんて、本当に恥ずかしいわ」

 椿原部長はそう言うと更に身を屈ませ、俺の耳元に顔を近づけた。
 部長の黒髪がすぐそこに垂れ下がり、シャンプーのいい匂いが間近で香る。
 しかし大事なのは、至近距離でかなりの前傾をとっているせいで、椿原部長の胸がふわりと俺の頭頂部にぶつかっていることだった。

 この暴力的に豊満な胸の柔らかさをいろんなところに押し付けられてきたけれど、これは未知の感覚だった。
 重量感のあるそれはちょっぴり重さがあって、けれど深みのある柔らかさがそれをものともさせない。
 頭という硬い部分だからこそ、対照的に柔らかさの極地であるそれを更にしっかりと感じられる。
 このまま頭を突っ込んで、頭部全体でその柔らかさに埋もれてしまいたかった。

 しかし頭頂部に意識を集中していると、椿原部長は耳元で甘く囁き出した。
 温かな吐息と混ざり合い、ゾクゾクと身が震える。

「目も当てられないクズよ、あなたは。こうして時間を裂いて相手をしてあげることを感謝するのね」

 パワハラを完全になくし、ただ平和な日常を手に入れる選択肢はあった。
 それこそが本来正解で、普通のことだ。
 でも俺は、自分がそれでは物足りなくなってしまったのだと気が付いた。

「何を言っても、何度も言っても、何一つ変わらない。使えない男。それでも権利は一丁前に主張する恥知らず。救えないわ」

 決してパワハラされるのが好きなわけじゃない。
 それに付随するラッキースケベのためだけでもない。
 俺は、椿原部長にパワハラされた上でラッキースケベをしてもらいたいのだ。
 それがなければ、調子が出ない。やる気が出ない。頑張れない。盛り上がらない。

「でも、これがいいんでしょ? これがあなたの望みなんでしょ?」

 それに気付かされてしまったのは、あの夜の震えた肩か。あるいはその後の大人しい姿か。
 いずれにしても、俺にはもうこれが必要だった。

 だからこれからも、せいぜい堪能させてもらおう。
 激しくキツい鞭と、とろけるように甘い飴を。

「何にもわかってないんだから。あなたって本当に、バカな子」



【了】
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