普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ

文字の大きさ
8 / 984
第1章 神宮 透子のラプソディ

8 私は普通の女の子

しおりを挟む
 ────────────



 私は至って普通の女の子です。
 特別何か取り柄があるわけじゃない、可愛いわけでもないし、人気者でもない。
 極々普通な、どこにでもいる平凡な女の子。

 自分が普通すぎることに悩んでしまう、なんて悩みすらも普通な私は、特に突出することもなく生きてきました。

 そんな自分がつまらないなと思いつつ、だからといって別段の不満もなくて。
 だから私はのうのうと日々を過ごしてきた。
 危機感はなく、ただ毎日を過ごしてきた。

 普通である自分のことを退屈だと思うことはあっても、だからといってそれを不満に思うことはなかった。
 自分はこう言うものなんだからと思っていた。
 あるがままの自分を受け入れていた。

 そんな私が、自分の非力さを悔やむ時が来るなんて思わなかった。
 何もできない自分を恨めしく思うなんて。
 平然と受け入れてきた自分の平凡さが、なんと頼りないものかと辟易する時が来るなんて。

 ヒーローのように私を救ってくれたその人に、私は何もしてあげられなかった。
 私も、守ってあげたかった。力になってあげたかった。

 それでも私には何もない。平凡な私には何もできない。
 その平凡が幸せなことなのか、それとも不幸せなことなのか。
 そんなこと、昼間までの私は考えたこともなかった。

 今はただ、無性に二人に会いたかった。晴香に創。私の幼馴染。
 いつもと変わらぬ平穏な日々。何の変哲も無い普通の生活。
 友達と馬鹿話したり、人間関係に悩んでみたり。
 そんな何気ない時間を過ごしていた、ほんの数時間前のことが、どうしようもなく懐かしく思えた。



 ────────────



「────ねぇ、アリスってば。起きなよ」

 それは今日の昼間の事。
 今までと変わらぬ平凡な日常を送っていた時のこと。

 教室の机に突っ伏して寝ていた私は、揺り起こされて目を覚ました。
 顔を上げてみれば、晴香がその整った顔を少しムッと歪めて私を見下ろしていた。
 決して怒っているわけではないけれど、これは面倒見のいい晴香の、お母さんのような一面だ。

「午前から居眠りなんかしてたらだめじゃん。もうお昼休みだよ」
「なんだか、日差しが暖かくてさぁ」

 欠伸と伸びをしながら答える私に、晴香は困った顔をする。
 十二月のこの寒い時期の日差しは、どうも暖かくて眠くなってしまう。
 私の席は窓際で、光を直接浴びるから余計だった。

「もう二年生も終わろうって時期なんだから、ちゃんと勉強しなきゃ。受験もあるんだし」
「あーそう言う話聞きたくなーい。何か楽しい話してよー」

 耳を塞ぐ私を私に、晴香はやれやれと眉を潜めながらも薄く笑った。

「じゃあじゃあ、アリスのクリスマスのご予定でも聞いちゃおうかなぁ~」
「え、クリスマス?」
「そうクリスマス。もう今月末に迫ってるけど、アリスさんのご予定はいかが?」
「もう、そんなのあるわけないって、知ってて聞いてるでしょ。楽しくない」

 私がジト目で答えると、晴香はケラケラと笑った。
 私も晴香も今まで彼氏はできたことがない。
 晴香の方は、今まで何度か告白されているのを知ってるけれど、どうしてか誰だと付き合わなかった。
 理由を聞いても教えてくれない。
 対する私には、そもそもそんな浮ついた話なんてないんだけど。

「ごめんごめん。じゃあさ、予定ない者同士、クリスマスパーティーでもやろうよ!」
「いいね! やっぱりボッチは嫌だもん」
「じゃあ決定ね。あ、はじめも呼んであげよっか」
「────なんの話してんだ?」

 そこでタイミングよく創がやって来て、首を伸ばしてきた。
 そんな創を見て晴香はニヤリと笑う。

「あ、噂をすれば。アリスとね、クリスマスパーティーしよって話してたの。創もどうせ予定ないでしょ? 一緒にしよ」
「あぁ、まぁいいけど」

 予定がない、というところには特に触れずに創は頷いた。
 まぁ予定がない者同士、そこをあえて突っつくのも野暮だよね。

「あ、ならさ。氷室さん、誘ってもいい?」

 晴香を中心に、どうするかと話し合っている最中に私は言った。
 それを聞いた晴香は、ニヤリと意地悪な笑みを浮かべる。

「お、ここでようやくアタックするってわけだね」
「ちょっと、変な言い方やめてよ。ただ、いい機会だからどうかなって思っただけで」
「アリスは氷室さんにご執心だからねぇ。焼いちゃうなーこのこのー」
「だからそんなんじゃないってばー! やめてよー」

 氷室さんは、今年になって一緒のクラスになった女の子。
 いつも休み時間は一人で本を読んでいる、静かな女の子。
 肩口までの爽やかなショートヘアに、透き通るようなスカイブルーの瞳が魅力的。

 その物静かでミステリアスな雰囲気もさることながら、私が気になっているのは彼女の読書趣味だった。
 実は私も本を読むのが好きで、暇さえあれば何か読んでる。
 正直、晴香や創といない時は、本を読んでばかりいると思う。

 氷室さんは、そんな私が読みたいと思っている本を、大抵いつも先に読んでいる。
 本の好みが似ているってことだし、もしかしたら話してみたら気が合うかもしれない。
 そう思ってずっと話しかけるタイミングを窺ってきたんだけれど、氷室さんの独特の雰囲気に、どうにも踏み込めずにいた。

「まぁ冗談は別にして。私はいいと思うよ。ちょうどいい機会だし、氷室さんと仲良くなるチャンスじゃない?」
「俺も別にいいけど」
「うん。わかった!」

 二人に後押しされて、私は意を決して立ち上がった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...