普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ

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第6章 誰ガ為ニ

115 蝶の群れ

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『────────────!!!!!!!!』

 アゲハさんが再び甲高い咆哮を上げた。
 するとそれに呼応するように、辺りに突然蒼い鳳蝶が大量に現れた。

 アゲハさんの物と同じ、サファイアブルーの羽をキラキラ輝かせている蝶たち。
 それらがパタパタと優雅に羽ばたいて、一帯を蒼い光で満たした。
 これは一体何なのかと疑問を抱いていると、一羽の蝶が私の方へとやってきた。

 ヒラヒラゆらゆらと踊るように近付いてきた蝶が、私の眼前まできた瞬間────

「アリスちゃん!」

 突如蝶が破裂した。
 瞬間的にその蝶から濃密な魔力が解き放たれて、生ける爆弾のように魔力が炸裂した。

 切羽詰まった氷室さんの叫びをが耳に届いた。
 でもすぐ隣にいた氷室さんすらその手が間に合わない、一瞬の炸裂。
 けれど、私の胸からは氷の華が咲き乱れて私を覆い、間一髪でその爆発を阻んだ。

 安心も束の間。その蝶の爆発に呼応するように、辺りを飛び回っていた他の蝶たちも、蒼い光を撒き散らしながら次々と爆発しだした。
 一箇所に固まっていた私たちは、見事にその蝶たちに取り囲まれていて、周囲で巻き起こる爆発の連鎖の中から逃げ出すことができなかった。

 みんな各々が障壁を張って、立て続けに炸裂する爆発の応酬を何とか防ぐ。
 辺りは蒼い閃光に包まれて、まるで透き通る夏の海の中のように、光景だけは鮮やかだった。
 けれど、一つひとつの爆発の威力は凄まじく、沢山の蝶の数だけ続く爆発を防ぎ続けるのは至難の技だった。

「アタシが突破する! カルマ、手伝え!」
「アイアイサ~!」

 みんなで障壁を張り合って爆発を防ぎ続ける中、カノンさんが声を張り上げた。
 自分が張っていた分の障壁をカルマちゃんに委ねて、カノンさんは強く木刀を握る。
 その木刀に大量の魔力が集結していた。

 次の瞬間、カノンさんはその木刀を勢いよく振り抜いた。
 渾身の魔力を込めて振られた木刀は、その剣圧に魔力と衝撃を乗せ、ほんの僅かに爆発を掻き分けた。
 その隙間に躊躇いなく飛び込んでいくカノンさんへカルマちゃんが手を向けて、何やら補助的な魔法を使う。

 蒼い魔力が炸裂する中、渦中に飛び込んだカノンさんは、何か薄い膜のようなものに覆われていた。
 簡易的な防御のようなものなのか、カノンさんはそれをまとって勢いよく魔力の炸裂の中を駆けた。

 せっかくカノンさんが作ってくれた突破口。
 すぐに他の爆発がその隙間を埋める前に、私はその隙間を切り口にして『真理のつるぎ』を振り回した。
 爆炎を撒き散らす爆発だったら対処しきれなかったかもしれないけれど、これは幸い濃密な魔力の炸裂。
 カノンさんのお陰できっかけができて剣が振るえ、私たちを囲む爆発のほとんどを打ち消すことができた。

「────くたばりやがれ!」
『アンタにはさっきの借り、返さないとね!』

 爆発が晴れた先で、カノンさんが大きく跳び上がって宙に浮かぶアゲハさんに斬りかかってた。
 振り下ろされる木刀を一本の腕で払ったアゲハさんは、空いた残りの三本の腕を一斉に伸ばす。
 一本は咄嗟に振るった片手の拳で何とか弾いたカノンさん。
 けれど異形の身となったアゲハさんには、まだ一対の腕が残っていた。

 白くのっぺりとした硬質的な腕が鋭くカノンさんに伸びる。
 宙に跳び上がっていたカノンさんには、それを避けるすべはなかった。
 けれど、その手が届く前に飛び込む黒い影があった。

「アゲハちゃんおっかな~い! これは、可愛さではカルマちゃんの圧勝かな!?」

 いつの間にか飛び出していたカルマちゃんが、大鎌を構えて二人の間に割り込んだ。
 身の丈以上の大鎌を、飛び込む勢いそのままに振り回すカルマちゃん。
 その巨大な刃がアゲハさんの白い腕めがけて叩き落される。

「ありゃ。ありゃありゃ~???」

 けれど、その鎌がアゲハさんの腕を切り落とすことはなかった。
 刃が白い肌に触れた瞬間、バキンと軽い音と共に刃が砕け散ってしまった。
 鋭く重い鎌よりも、彼女の肌の方が強度が高いということだ。

 攻撃から一転、無防備を晒したカルマちゃんにもアゲハさんの手が伸びる。
 その両手が二人の腕を鷲掴みにし、力の限り振り回した。
 まるで人形のように軽々と持ち上げて、二人をシンバルのように叩き合わせる。

 肉と肉がぶつかる音、そして硬いものが強引に破壊される鈍い音が響く。
 二人は悲鳴をあげる暇もなく息を詰まらせ、抵抗もできないまま上に放り投げられた。

『まずは二人!!』

 大きく開かれた羽の前で、エネルギーの塊のような魔力の球が浮いた。
 それはギュンギュンと力を収縮させ、すぐに弾けて蒼いレーザーのような光線を放った。
 散々振り回された挙句無造作に放り投げられた二人はそれをかわすすべもなく、一直線に向かうレーザーを受けるしかなかった。

「二人とも!!!」

 私は後先考えずに飛び出した。
『真理のつるぎ』を握りしめ、雷をまとってその勢いとスピードで二人の元まで跳ぶ。
 間一髪。なんとかギリギリ二人の前に滑り込んだ私は、迫り来る二本のレーザーに剣を振るって打ち払った。

「すま、ねぇ……」
「そんなのいいから!」

 掠れる声を出すカノンさんに、私は反射的な言葉で返した。
 ただがむしゃらに飛び出した私を、アゲハさんのキラキラした複眼がとらえていたからだ。

『次はアンタだ! アリス!!!』

 その沢山の目で私を見つめるアゲハさんが大きく羽ばたいた。
 大きな体の割にそのスピードは凄まじく、目で追うのがやっとな速さで目の前に迫ってきた。

 眼前に迫ったアゲハさんの巨体は、ますます恐ろしく感じる。
 普通の生活をしていて、自分を覆い尽くすような怪物を目の前にすることなんてありえないから。
 竦みあがる気持ちを必死でこらえて、宙で自由のききにくい中で剣を握りしめる。

『死ねぇ────!!!』

 私に対して放たれた叫びは空気を震わせ、肌をビリビリと突き刺した。
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