普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ

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第0.5章 まほうつかいの国のアリス

17 森のお友達4

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「これでどう、かな?」

 クリアちゃんはヘアゴムで髪をささっとむすぶと、わたしの方にリボンを向けて聞いてきた。
 クリアちゃんの姿はぜんぜん見えないから、リボンが一人でぷかぷか宙に浮いているように見える。

「うん、ばっちりだよ! これでクリアちゃんがいるかどうかすぐわかる!」
「ホントに? よかった。アリスちゃん、ありがとう」

 リボンがぴょこぴょこ動くから、クリアちゃんが喜んでくれてるのがよくわかった。
 そういう意味でも、リボンをあげたのは正解だったみたい。
 普通の服が着られたり、そもそもお顔が見られれば一番いいけれど。
 でもこれだけでもだいぶちがう。

「わたし、人から何かもらったの初めて。だから、すっごくうれしいな」
「クリアちゃんはずっとこの森にいるの? おうちは? お父さんとかお母さんとかは?」
「えーっと……そういうのは、ないんだ」

 あはは、とぎこちなく笑う声が聞こえた。
 悪いこと聞いちゃったんだって思ってすぐ謝ると、あわてた声で「大丈夫だよ」とかえってきた。

「ほら、わたし魔女だからさ。魔女になっちゃった人はみんな、家族のところになんていられないんだよ。それにこんなふうに透明になっちゃって、だれもわたしのこと見つけられなくなちゃったから……」
「クリアちゃん……」

 普通な感じで話すクリアちゃんだけど、なんだかさみしそうだった。
 魔女になっちゃった、ただそれだけなのに家族といられないなんて。
 それに、透明になっちゃったせいでだれにも気付いてもらえなくて。

 クリアちゃんは、今までずっとさみしかったんだろうなぁ。

「おかあさんも、周りの人たちも、わたしがいなくなってホッとしてた。わたしが見えなくなって、いなくなったと思ってホッとしてた。でも仕方ないんだよ。だって、魔女になっちゃったんだもん」

 髪のリボンが上を向いて、クリアちゃんが下を向いたのがわかった。
 わたしはなんて言ってあげればいいのかわからなくて、その見えない手をぎゅっとにぎった。

「でも、だれにも気付いてもらえないのは、つらかったなぁ。わたしはここにいるのに、だれもわたしを認めてくれなくて。とっても息苦しくて、さみしくて、こわかった。けど、今こうやってアリスちゃんとお友達になれて、わたしすっごくうれしいの。だからもう、さみしくないよ」

 クリアちゃんの声はあんまり暗くなくて、『ほがらか』だった。
 無理をしてる感じはなくて、本当に喜んでくれているみたい。
 クリアちゃんがそうならわたしが暗くなっちゃいけないと思って、わたしは笑顔でうなずいた。

『魔女ウィルス』に『かんせん』した人が大変だって話はなんとなくわかってたつもりだけど、わたしが想像していたよりも、もっとずっとかわいそう。
 レイくんがなんとかしたいって思う気持ちがわかった気がした。

 わたしにできること、ないのかなぁ。
 クリアちゃんの友達として、わたしに何かしてあげられることは……。

「そうだ! クリアちゃん、わたしと一緒においでよ!」
「……え!?」

 いいことを思いついたわたしが勢いよく言うと、クリアちゃんはびくっとした。
 リボンがぴくっと震えて、わたしの手をぎゅっと握ったらよくわかる。

「わたしね、今レイくんとクロアさんっていう魔女と、この奥の神殿にいるの。お部屋もベッドもまだあるし、一人ぼっちで行くとこないなら来ない? わたしが二人にお願いするから」

 そう、これは『めいあん』だ!
 レイくんもクロアさんも魔女だから、きっとクリアちゃんの力になってくれる。
 それに、クリアちゃんが透明になっちゃうのも、なんとかしてくれるかもしれない。

 帰るおうちがないなら、わたしみたいに神殿に住んじゃえばいいんだ。
 そうすればずっと一緒にいられるし、ぜんぜんさみしくないはず。

 そう思ってわたしはペラペラと言ってみたけれど、クリアちゃんの反応はイマイチだった。

「えっと、あの……うーん。それは、やめとこうかな」
「え、どうして!? いいことだらけだと思うよ?」
「なんていうか、その、ちょっと怖いし。他の人に会うの……」
「大丈夫だよ。二人ともとってもやさしいから、クリアちゃんのことも絶対助けてくれるよ」

 わたしは必死に『せっとく』してみたけれど、クリアちゃんはうんと言ってくれない。
 本当にこわがっている感じで、手がすこし震えてる。

「ありがとう、ごめんねアリスちゃん。せっかく誘ってくれたのに。でもわたし、一人でいるのになれちゃって、だれかと会うのが怖くなっちゃって。だってわたし透明だから、会っても見つけてもらえないんじゃないかって……」
「そんなことないよ。二人とも魔女だから、きっとなんとかしてくれるよ」
「うん。そうだよね。わかって、るんだけど……」

 クリアちゃんの声はどんどん小さくなってく。
 本当に、だれかに会うのが怖いんだ。
 今までずっとだれにも気付いてもらえなかったから、それが『とらうま』になっちゃってるのかも。

 あんまり無理を言っちゃったら、かわいそうかもしれない。

「わたし、大丈夫だから。だってアリスちゃんがお友達になってくれから、もうさみしくないもん」
「……わかった、わかったよ。じゃあこうしよう!」

 わたしは『かんねん』してうなずいた。
 その代わりのいいことを思いついて、ニコッと笑いかける。

「わたし、これからここにいっぱい遊びにくるよ! そしたらクリアちゃんさみしくないでしょ?」
「いい、の……?」
「当たり前だよ! だってわたしいっぱいクリアちゃんと遊びたいもん。それに、お友達になれてうれしいのは、クリアちゃんだけじゃないんだからね」
「アリスちゃん……」

 両手でクリアちゃんの手をにぎってぶんぶん振る。
 ニコニコ笑いながら言うと、クリアちゃんはぱぁっと明るい声を出した。

「ありがとうアリスちゃん。わたし、とってもうれしい。わたしを見つけてくれたのがアリスちゃんで、本当によかった……!」

 クリアちゃんはリボンをふりふりさせながら、とっても元気よく言った。

「アリスちゃんは、わたしのとってもとっても大事なお友達! ずっとずっと、一緒にいてねアリスちゃん!」
「うん。わたしたちは、ずっと友達だよ!」

 姿は見えないけれど、でも確かにそこにいるクリアちゃん。
 さわれて、声が聞こえて、お話ができる。

 透明なのは不思議だし、ちょっぴりこまっちゃったりするけど。
 でもでも、わたしの友達ってことにはなんの関係もないから。
 一緒にいるのがうれしくて、おしゃべりしたりして遊ぶのが楽しかったら、それで十分。

 わたしたちはあっという間にとっても仲良しになったのでした。
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