普通のJK、実は異世界最強のお姫様でした〜みんなが私を殺したいくらい大好きすぎる〜

セカイ

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第8章 私の一番大切なもの

54 繋がりの行方

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 それから、細かい手順や方策なんかを話し合った。
 と言っても、実際的な部分はロード・スクルドを中心に、シオンさんやネネさんたちが話を進めたから、私は少し蚊帳の外だった。

 組織的に動くとなると、私はベストな案を出すことはできないし、それにお姫様の立場があっても私に取り仕切る能力はない。
 そういったことを頼るためにも魔女狩りに助力をお願いしたのだし、そこは素直に任せることにした。

 そんな彼らの話し合いに耳を傾けながら、私はもう一度クリアちゃんとの心の繋がりを探ってみた。
 友達としての繋がり、心の繋がりは確かに感じるけれど、でもその行先がとても不透明だ。
 わかるのは繋がっているという事実だけで、その繋がりの先は、まるでジャミングでも掛けられているようにはっきりとしない。

 これは、クリアちゃんが意図的に私からの干渉を邪魔してるってことなんだろうか。
 彼女ならなんらかの魔法を使って、私が繋がりを辿ることを阻害できてもおかしくはない。
 それほどまでに彼女は、私に邪魔されたくないってことなんだろう。

「────姫殿下、少しよろしいでしょうか」

 話し合いが一段落した時、ロード・スクルドは改まってそう声をかけてきた。
 何かと思いつつも頷くと、彼はおずおずと立ち上がり、窓の方へと足を向ける。
 込み入った話でもしたいのか、みんなの目を憚っているようで、無言の仕草が私を誘っていた。

 今更彼に警戒心を持っても仕方がないし、私はあまり深い疑問を持たず、続くように立ち上がった。
 けれどレオとアリアは、すぐさま心配そうな目を向けてきた。
 そんな二人の気遣いをありがたく思いながら、私は大丈夫だよと視線で返してロード・スクルドを追いかけた。

「申し訳ありません。少し確認をしたかっただけなのですが。一応、おおっぴらにお伺いできることではないので……」

 私が近寄ると、ロード・スクルドは部屋の隅の窓辺に寄りかかって、みんなに背を向けるようにした。
 広い部屋だから、隅で声を抑えればみんなに会話は届かないだろう。
 私にどんな内緒話があるのだろうと思いつつ身を寄せて見上げると、彼は少し背を丸めた。

「私が聞くなと、そうお思いになるかもしれませんが……ヘイルも、こちらに来ているのでしょうか」
「あぁ……」

 声をひそめてそう尋ねてくる彼に、私に納得がいって、少し淡白な相槌を打ってしまった。
 ヘイル・フリージア。それが氷室さんのこちらの世界での本名だ。
 ロード・スクルドは彼女の実の兄であり、そして一度はその命を狙った魔女狩りなのだから、動向はやぱりきになるんだろう。
 私がここにいれば、彼女の姿を気にするのは当然のことだ。

 なんて答えるべきか、一瞬悩んだ。
 彼は紛れもなく氷室さんのお兄さんだけれど、でもそこに義理立てをする必要はない。
 ただ、私にそう尋ねてくるロード・スクルドの姿は、なんだか悪いような雰囲気はなくて。
 少なくとも、彼女が姿を表すことで家名に傷がつくとか、そういうことを気にしているわけではなさそうだった。

「彼女も、一緒にこちらの世界に来てますよ。一緒に戦ってくれてるって、そう言ってくれたので。ただ、魔女狩りの直中に連れて行くわけにはいかなかったので、今は別行動をしていますけど」
「そう、ですか。ヘイルは、こちらに……」

 正直にただ事実を伝えると、ロード・スクルドはなんとも言えない表情で頷いた。
 喜んでいるわけでも、嫌がっているわけでもない。ただ、何かを考え込んでいるかのような感じだ。

 氷室さんと会いたいとでも、思っているんだろうか。
 彼なりに色々と考えているようだし、そういう気持ちになっていてもおかしくはないかもしれない。
 けれど、今はこうして同じ目的のために力を合わせているけれど、だからといって彼の行いを許したわけじゃない。
 私としては、例え頼まれても引き合わせたくはないと思った。

「……彼女が何か?」
「あぁ、いえ。なんでもありません。今あなたに同行していなかったので、どうしているのかと、少し」
「そうですか……」

 私が尋ねると、ロード・スクルドはすぐに平然とした顔に戻り、あっさりとそう言った。
 何にも気になんてなっていないというように、浮かべた笑みは自然でさりげない。
 さっきのは私の思い違いだったのかな……?
 とりあえず、本人がなんでもないと言うのなら、頷くしかない。

 でも、本当にそれだけのために、わざわざこうして私に聞いてはこないだろうし。
 やっぱり、ロード・スクルドは彼なりに、妹に対して思うところはあるんだとは思う。
 ただ彼としても、いますぐどうこうはできないだろうし、これくらいのことが精一杯なのかもしれない。

 けれど、これから大きく動き出していく以上、氷室さんにだって力を貸してもらわないといけない。
 ワルプルギスの魔女たちの助力には頷いてくれたんだから、彼女がいることにだって文句は言えないはずだ。

 そういえば、あれから氷室さんはレイくんと合流できたのかな?
『魔女の森』に一旦引き返したのか、それとも王都付近にまで来てくれているかな?

 彼女の名前が上がったのもあって、私はその顔を思い浮かべがてら、心の繋がりを辿ってみた。
 ちゃんとレイくんと合流できていていれば、ワルプルギスに渡りをつけるのにも丁度いいし。

「────あれ?」

 けれど、感じられなかった。氷室さんとの繋がりの、その先が。
 これはクリアちゃんとの繋がりの状態ととても似ていて、繋がり自体は感じられるのに、とてもか細くてその在処がわからない。
 いつも強く感じていた氷室さんとの繋がりが、今はとても不鮮明で朧げになっていた。

「姫殿下、どうかなさいましたか?」

 私の顔色を窺って、ロード・スクルドが覗き込んでくる。
 けれど私はそれに応対する余裕なんてなくて、必死で心に繋がる彼女の気配を探った。
 でも、やっぱりわからない。確かに繋がっているはずの私たちの絆が、まるで辿れない。

 繋がりは途切れていないし、その存在は感じられるから、生きてはいるんだろうけれど。
 でもこの状況はとても普通じゃないし、命はあっても何か起きているのかもしれない。

 一気に焦燥が全身を駆け巡った。
 やっぱりあの時、別れるべきじゃなかったのかもしれない……!

「ロード・スクルド……あの、私……!」

 氷室さんを探さなくちゃ。その気持ちでいっぱいになって、私は顔をあげた。
 彼女の状況は全くわからないけれど、わからないからこそ不安が渦巻く。
 これは絶対に放って置ける状況じゃない。

 そう思って、声をあげようとした、その時────

「ロード! 大変です!」

 ノックもそこそこ、執務室の扉が勢いよく開かれて、一人の魔女狩りの男性が飛び込んできた。
 その人は扉を押し開けるなり、血相を変えてロード・スクルドに縋るように声を上げた。

「ロ、ロード・ケインが、離反を……!」

 耳を疑うその言葉に、私を含め全員が、ポカンと口を開いた。
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