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蕎麦打ち、陶芸、大人の趣味
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近頃のアニマル村では、老後の趣味を持つことが流行っていた。
今も喫茶店で、ヒョウとタヌキが趣味の話をしていた。
「やっぱり趣味を持たなくちゃね、ボケ防止にもなるし。最近、蕎麦打ちを初めたんだ。すごくいいよ、水回しって言うんだけど、蕎麦粉に水を加えて練り始めると、何とも言えない蕎麦の香りが鼻の奥に抜けていくんだ。俺なんかどうしても肉食獣の性というか、野生の本能が出がちなんだけど、これがみごとに鎮まるんだな。」
と、ヒョウが言った。
「私は陶芸だね。粘土を無心に練るのが良いんだ。瞑想しているのに近いね。世間のことを何もかも忘れて、心を宇宙に浮かべる。」と、タヌキが言った。
ああ、タヌキ寝入りってやつ。とヒョウは思ったが、それは口にせず、代わりにこう言った。
「ほう、蕎麦にも陶芸にも "練り" という共通のものがあるね。どっちも練りという行為が、精神の統一に役立っている。まさに、大人にふさわしい趣味だね。」
「なるほど、大人の趣味ですな」タヌキも笑った。
少し離れたテーブルのウサギのカップルが、その話を聞き耳を立てて聞いていた。
「おっさんたちが、蕎麦打ちや陶芸をやりたがる本当の理由を知ってる?」
「え~、どうして?」
「うちのばあちゃんが言ってたんだけど、心の円熟期に入ってなきゃいけない年齢なのに、全然品格の練れていないオヤジが、品格を練るために焦ってやりたがるんだってさ。」
「本当に練らなきゃいけないのは、蕎麦粉や粘土じゃなくて、品格なのね。」
2匹のウサギは、クスリと笑った。
その時、チリンと鈴の音を立ててドアが開いた 。
「ようよう、待たせたね。」と、アルパカが入ってきて、ヒョウとタヌキのテーブル席に着座した。
「お前たち、最近、粘土だの蕎麦粉だのをこねてるんだって? ジジムサイ趣味してんなあ。」
「じゃあ、お前はどんな趣味持ってるんだよ?」
と、少しむっとしながらタヌキが言った。
「俺はゴルフだね、今日も午前中、1ラウンド回って来たんだ。お前たちもジジムサイこと止めて、ゴルフやろうぜ。」
アルパカは、ゴルフクラブを振る動作をしながら、ガハハと笑った。
「バカヤロー! テメエこそ、ゴルフ場で手首こねてねえで、蕎麦粉をこねて見やがれ。」
ヒョウは声を荒げた。
「全然練れてないね。」
「うん、練れてない。」
3匹の様子を見て、ウサギたちは額を寄せて、小さな声で笑った。
今も喫茶店で、ヒョウとタヌキが趣味の話をしていた。
「やっぱり趣味を持たなくちゃね、ボケ防止にもなるし。最近、蕎麦打ちを初めたんだ。すごくいいよ、水回しって言うんだけど、蕎麦粉に水を加えて練り始めると、何とも言えない蕎麦の香りが鼻の奥に抜けていくんだ。俺なんかどうしても肉食獣の性というか、野生の本能が出がちなんだけど、これがみごとに鎮まるんだな。」
と、ヒョウが言った。
「私は陶芸だね。粘土を無心に練るのが良いんだ。瞑想しているのに近いね。世間のことを何もかも忘れて、心を宇宙に浮かべる。」と、タヌキが言った。
ああ、タヌキ寝入りってやつ。とヒョウは思ったが、それは口にせず、代わりにこう言った。
「ほう、蕎麦にも陶芸にも "練り" という共通のものがあるね。どっちも練りという行為が、精神の統一に役立っている。まさに、大人にふさわしい趣味だね。」
「なるほど、大人の趣味ですな」タヌキも笑った。
少し離れたテーブルのウサギのカップルが、その話を聞き耳を立てて聞いていた。
「おっさんたちが、蕎麦打ちや陶芸をやりたがる本当の理由を知ってる?」
「え~、どうして?」
「うちのばあちゃんが言ってたんだけど、心の円熟期に入ってなきゃいけない年齢なのに、全然品格の練れていないオヤジが、品格を練るために焦ってやりたがるんだってさ。」
「本当に練らなきゃいけないのは、蕎麦粉や粘土じゃなくて、品格なのね。」
2匹のウサギは、クスリと笑った。
その時、チリンと鈴の音を立ててドアが開いた 。
「ようよう、待たせたね。」と、アルパカが入ってきて、ヒョウとタヌキのテーブル席に着座した。
「お前たち、最近、粘土だの蕎麦粉だのをこねてるんだって? ジジムサイ趣味してんなあ。」
「じゃあ、お前はどんな趣味持ってるんだよ?」
と、少しむっとしながらタヌキが言った。
「俺はゴルフだね、今日も午前中、1ラウンド回って来たんだ。お前たちもジジムサイこと止めて、ゴルフやろうぜ。」
アルパカは、ゴルフクラブを振る動作をしながら、ガハハと笑った。
「バカヤロー! テメエこそ、ゴルフ場で手首こねてねえで、蕎麦粉をこねて見やがれ。」
ヒョウは声を荒げた。
「全然練れてないね。」
「うん、練れてない。」
3匹の様子を見て、ウサギたちは額を寄せて、小さな声で笑った。
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