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彼と研究します
「胸の影だが、大抵の者は自然に排斥されるんだが、体内で溜まって相容れないとああいう風に影になるんだ。だが魔素と親和性のある者が長く体内に取り込んでいると魔獣に近くなるらしい。すぐにではないのだが、ぼつぼつ報告が上がっている」
「魔獣……?」
「まあ症状は色々さ。最近分かってきたことなんだし、まあこれからだな、そういうやつを見つける魔道具もあるぞ」
「まあ、そのような魔道具があるのですか」
「この国はかなり進んでいてね、他国からも症例を幾つも送られてくるからな」
「まあ」
「魔炭に魔素があるのは分かるでしょ」
「はい」
「その魔素が魔炭を燃やした時に煙や灰とくっ付いて悪さをするんだ。というか、煙や灰になって飛び散って人の身体に入るとね。大抵は排斥するが、具合が悪くなる者と、そうでない者がいるんだよ」
「それってどういう」
「うーん、魔物に近くなるというか」
「え……、何それ怖い」
「まあ大抵は具合が悪くなって、調べると変なものが映っている訳だ」
「魔炭に頼っている国は気をつけるべきだな」
「そうなのですね」
ぼんやりとアゼルランド王国のことを思う。
◇◇
母はスレーベン連邦国の出身だ。スレーベン連邦国の軸となった二つの国の内のひとつの国王の家系である。この国に遊学した父が母と知り合い恋に落ちた。両親が恋愛結婚だなんて知らなかった。何となく政略結婚だと思っていた。母はのんびりおっとりした性格でグレイスもよく似ている。
こちらの国は勢いがある。魔法を積極的に研究し取り入れている。
グレイスは結局この国に留まって自分の魔力に合った勉強をする事にした。
国で産出する魔炭はこの大陸で多く産出され、エネルギーとして使われるが燃やせば煤や灰が出て空気も汚れる。それで魔炭に含まれる魔力を魔石に変換補充できないかという研究をスレーベンで産官挙げて取り組んでいる。
これが開発できたらアゼルランド王国の汚れた空気も綺麗になるだろう。グレイスは大学に入ってその研究チームの末端に籍を置くことになった。
◇◇
この国に来て学校に入って、魔法の研究をしていると、エドマンド殿下が来た。
「何をしているんだ、グレイス。あんな女では国政は務まらぬと言われた」
傲慢な男の顔を見ながら、あんな女って誰のことかしらと思う。
「さようですか」
「帰って来い。こんな所で何をするのだ」
「わたくしは帰りません」
「何という我が儘な女なんだ」
王太子エドマンドの手が伸びてグレイスの手を掴もうとする。
「やあ君、女性に暴力を振るうのは感心しないな」
エドマンド王子の手を払って、グレイスを抱き寄せてくれる人がいる。
「俺は暴力を振るってはいない。大体何者か知らんが、あんたには関係ない」
「私はグレイスの恋人だ」
「この国では恋人かもしれんが、そんなものに何の束縛もない。俺は彼女の婚約者なんだ」
「婚約破棄したと聞きましたが。アゼルランド王国では破棄した婚約も勝手に蘇らせることが出来るのかな」
彼の皮肉気な発言を聞いて目を瞬かせる。こんな事も言うんだなと。グレイスには優しいばかりの人だけれど。
「私たちは恋人同士で愛し合っている。一緒に暮らしているんだ」
彼が余計なことを暴露する。頬を染めてちょっと彼を睨むけれど威力はない。
「何と君は結婚もせずに、こんな男と一緒に暮らしているというのか!? 見損なったよ、この阿婆擦れが!」
「阿婆擦れは君の方だろう。婚約者がありながら他の女性と付き合うとか」
「恋愛と結婚は別だ」
殿下がそれを言うのですか。
「結婚は至上ではない。それは国の管理や宗教によるものだ。私の心は彼女に捧げているが君は違うだろう。形式に囚われることはないのだ。もちろん子供が出来たら子供の為に形式を整えるよ。親の所為で子供の権利が無くなるのは嫌なんだ」
「わたくしたちは愛し合って幸せですわ。あなたが婚約破棄してわたくしは重荷が取れて身が軽くなってしまいましたの。もう二度と帰りたくはございませんわ」
「俺にひとりで帰れというのか!」
「ひとりじゃ帰れないなら、私が送りかえしてあげよう」
エドマンドの頭上に魔法陣が出現する。転移の魔法陣だ。スッキリと整って綺麗だ。転移先は、アゼルランド王国の王宮、自室のベッドになっている。完璧だ。
魔法陣が作動し王太子の姿が魔法陣に取り込まれる。
「わあ、何だこれはああぁぁーーー!」
「それは転移の魔法陣ですわ。さようなら、ごきげんよう」
「ごめんなさいね、騒がせちゃって」
でも、あの誤解するような言い方はどうなんだろう。もちろん彼は親の認める恋人ではあるけれど、同じ官舎に住んではいるけれど、同じ部屋ではない訳で。
グレイスが引っかかった所をごちゃごちゃと考えていると彼が言うのだ。
「別にいいんだが彼の言う事は分かるんだ。私は君を束縛したくてね。君が頷いてくれたら、そうだな何でも聞いてくれる優しい旦那様が手に入るよ」
これは新手のプロポーズだろうか。身分で言えば彼は大学の研究チームの首席研究員で、このスレーベン連邦の主軸の王国の王族だったりする。
「まあ、それはぜひとも手に入れたいわね」
彼は優しいキスをくれたのだった。
王宮に帰った王太子エドマンドは自室のベッドに堕ちた。丁度、エドマンドの恋人メアリーが、彼が出張中なのをいいことに誰彼なく引き込んでお楽しみの真っ最中だった。
王子は逆上し大騒ぎになった。
おしまい
「魔獣……?」
「まあ症状は色々さ。最近分かってきたことなんだし、まあこれからだな、そういうやつを見つける魔道具もあるぞ」
「まあ、そのような魔道具があるのですか」
「この国はかなり進んでいてね、他国からも症例を幾つも送られてくるからな」
「まあ」
「魔炭に魔素があるのは分かるでしょ」
「はい」
「その魔素が魔炭を燃やした時に煙や灰とくっ付いて悪さをするんだ。というか、煙や灰になって飛び散って人の身体に入るとね。大抵は排斥するが、具合が悪くなる者と、そうでない者がいるんだよ」
「それってどういう」
「うーん、魔物に近くなるというか」
「え……、何それ怖い」
「まあ大抵は具合が悪くなって、調べると変なものが映っている訳だ」
「魔炭に頼っている国は気をつけるべきだな」
「そうなのですね」
ぼんやりとアゼルランド王国のことを思う。
◇◇
母はスレーベン連邦国の出身だ。スレーベン連邦国の軸となった二つの国の内のひとつの国王の家系である。この国に遊学した父が母と知り合い恋に落ちた。両親が恋愛結婚だなんて知らなかった。何となく政略結婚だと思っていた。母はのんびりおっとりした性格でグレイスもよく似ている。
こちらの国は勢いがある。魔法を積極的に研究し取り入れている。
グレイスは結局この国に留まって自分の魔力に合った勉強をする事にした。
国で産出する魔炭はこの大陸で多く産出され、エネルギーとして使われるが燃やせば煤や灰が出て空気も汚れる。それで魔炭に含まれる魔力を魔石に変換補充できないかという研究をスレーベンで産官挙げて取り組んでいる。
これが開発できたらアゼルランド王国の汚れた空気も綺麗になるだろう。グレイスは大学に入ってその研究チームの末端に籍を置くことになった。
◇◇
この国に来て学校に入って、魔法の研究をしていると、エドマンド殿下が来た。
「何をしているんだ、グレイス。あんな女では国政は務まらぬと言われた」
傲慢な男の顔を見ながら、あんな女って誰のことかしらと思う。
「さようですか」
「帰って来い。こんな所で何をするのだ」
「わたくしは帰りません」
「何という我が儘な女なんだ」
王太子エドマンドの手が伸びてグレイスの手を掴もうとする。
「やあ君、女性に暴力を振るうのは感心しないな」
エドマンド王子の手を払って、グレイスを抱き寄せてくれる人がいる。
「俺は暴力を振るってはいない。大体何者か知らんが、あんたには関係ない」
「私はグレイスの恋人だ」
「この国では恋人かもしれんが、そんなものに何の束縛もない。俺は彼女の婚約者なんだ」
「婚約破棄したと聞きましたが。アゼルランド王国では破棄した婚約も勝手に蘇らせることが出来るのかな」
彼の皮肉気な発言を聞いて目を瞬かせる。こんな事も言うんだなと。グレイスには優しいばかりの人だけれど。
「私たちは恋人同士で愛し合っている。一緒に暮らしているんだ」
彼が余計なことを暴露する。頬を染めてちょっと彼を睨むけれど威力はない。
「何と君は結婚もせずに、こんな男と一緒に暮らしているというのか!? 見損なったよ、この阿婆擦れが!」
「阿婆擦れは君の方だろう。婚約者がありながら他の女性と付き合うとか」
「恋愛と結婚は別だ」
殿下がそれを言うのですか。
「結婚は至上ではない。それは国の管理や宗教によるものだ。私の心は彼女に捧げているが君は違うだろう。形式に囚われることはないのだ。もちろん子供が出来たら子供の為に形式を整えるよ。親の所為で子供の権利が無くなるのは嫌なんだ」
「わたくしたちは愛し合って幸せですわ。あなたが婚約破棄してわたくしは重荷が取れて身が軽くなってしまいましたの。もう二度と帰りたくはございませんわ」
「俺にひとりで帰れというのか!」
「ひとりじゃ帰れないなら、私が送りかえしてあげよう」
エドマンドの頭上に魔法陣が出現する。転移の魔法陣だ。スッキリと整って綺麗だ。転移先は、アゼルランド王国の王宮、自室のベッドになっている。完璧だ。
魔法陣が作動し王太子の姿が魔法陣に取り込まれる。
「わあ、何だこれはああぁぁーーー!」
「それは転移の魔法陣ですわ。さようなら、ごきげんよう」
「ごめんなさいね、騒がせちゃって」
でも、あの誤解するような言い方はどうなんだろう。もちろん彼は親の認める恋人ではあるけれど、同じ官舎に住んではいるけれど、同じ部屋ではない訳で。
グレイスが引っかかった所をごちゃごちゃと考えていると彼が言うのだ。
「別にいいんだが彼の言う事は分かるんだ。私は君を束縛したくてね。君が頷いてくれたら、そうだな何でも聞いてくれる優しい旦那様が手に入るよ」
これは新手のプロポーズだろうか。身分で言えば彼は大学の研究チームの首席研究員で、このスレーベン連邦の主軸の王国の王族だったりする。
「まあ、それはぜひとも手に入れたいわね」
彼は優しいキスをくれたのだった。
王宮に帰った王太子エドマンドは自室のベッドに堕ちた。丁度、エドマンドの恋人メアリーが、彼が出張中なのをいいことに誰彼なく引き込んでお楽しみの真っ最中だった。
王子は逆上し大騒ぎになった。
おしまい
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