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幕間 葉月の後悔
しおりを挟むどういう訳か一緒に初詣に行った夕暮れ。
「残念でしたね」と東原が言う。
(残念だった……。渉君の黒い瞳が濡れたように俺を見上げて、あの唇は甘かった。暖斗の唇もあんなに甘いだろうか。……。いや、俺は何を考えているんだ)
葉月は改めて自分は暖斗一筋に行くことを誓った。
「溜まっているんじゃないですか」
「うるさいな。君には関係ない」
(しつこい男だ。はっ、もしかして、俺が逃げるからこうやってしつこくするんだろうか)
反対に言い寄ってみればどうだろうと葉月は軽はずみにも考えてしまったのだ。
「東原。コホン」
葉月は改まった体で東原に向いた。東原が目をぱちぱちして葉月の方を見る。
「何ですか」
「実は俺は君が……」
(言いにくいな、心にも思っていないことを言うのは)
葉月、そんなことで代議士になれるのか。
「東原、俺は君のことが好きなんだ」
東原は一瞬驚いたように目を見開いた。そして、にっこり笑った。
「そうですか。思いが通じたようですね。嬉しいですよ」
葉月の腕をむんずと掴み、言った。
「じゃあ、早速僕の愛を受け入れてください」
「ちょっと待て、大体お前の方が受けるんじゃ……」
「僕はどっちでもいけるんですよ。僕を愛しているのなら受けて下さいますよね」
葉月がいつ愛していると言った、東原。
「わわっ、失言だ。取り消しだ」
「往生際の悪い。男でしょう。男子に二言はないはずです」
「それとこれとは違う!!」
(これは悪夢だ。夢オチにしてくれーー!!)
葉月は心の中で虫のいいオチを願ったが。
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