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第一部 再興編
縺れた縁(2)
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時苧が紹介された時には既におはたは身重だった。
おはたという娘は、太郎一が許嫁として父親の前に連れてくる以前から、男出入りが激しかった。
当然、おはたの評判は悪かった。
それでも一郎太が望んだ娘であれば、と時苧は許したのだ。
だが祝言当日。
あろうことか一郎太はおはたを惨殺して吉賀の里を逃亡した。
「わしらが駆けつけた時にはまだ、おはたは息があった。
苦しい虫の息の下から、『一郎太に斬られた』と告げられた」
(まさか!)
その知らせを聞いた時苧は、何の冗談かと思った。
戦では勇猛果敢な男であるが、一朗太は穏やかで優しい性格だ。
よもやと思った。駆け付けて検分した、おはたの躰に残されていたのは。
「確かに、太刀筋が彼奴のものであった。わしが検分したゆえ、誤りはない」
時苧が顔を歪めた。
「……忍ぶに、主君もしくは棟梁からの指示以外での殺傷は許されておらぬ。
わしは直ちに一郎太を吉蛾衆に取り押さえるように命じたが、一郎太は吉蛾衆すら切り捨て何処へと消えた」
「……」
草太は初めて聴く話に茫然となった。
忍ぶが冷徹であることは、草太が誰よりも知っている。
任務の為には、人殺しも策略も裏切りも厭わぬ集団。
だが、あくまで任務以外では人を弑してはならぬ、と厳しく戒められている。
任務の為に、己が判断で人を殺めることはある。
だが、普段。
任務についてない時の殺傷は、死罪と定められていた。
無論、私憤であっても考慮はされた。
だが、殺傷能力の高さに、忍ぶではない領民たちよりも刑量は重く設定されていたのだ。
『申し訳ござらぬっ』
時苧は主君に土下座した。
『棟梁の儂が死して、この不始末の詫びを致す処でござる。
が、不肖の息子をこの手で斬り殺さねば、死に切れませぬ。
#彼奴_きゃつ__#もこのような事をしでかし、死を覚悟しているかと。
どうぞ儂を棟梁の任より解き放ち、野に出て彼奴の捕縛』のお許しを賜りたく……!』
棟梁の息子で、次代の棟梁と目されていた男。
誰が犯したよりも厳罰は免れなかった。
が、城主は。
『おけ。あの一郎太が、考えなくあのような事をしでかすとは思わぬ。
仔細あっての事であろう。
探索は許す。だがそれは、訳なく咎を責める為ではない』
幼馴染とはいえ、下人に対しての身に余る厚情であった。
おはたという娘は、太郎一が許嫁として父親の前に連れてくる以前から、男出入りが激しかった。
当然、おはたの評判は悪かった。
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あろうことか一郎太はおはたを惨殺して吉賀の里を逃亡した。
「わしらが駆けつけた時にはまだ、おはたは息があった。
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(まさか!)
その知らせを聞いた時苧は、何の冗談かと思った。
戦では勇猛果敢な男であるが、一朗太は穏やかで優しい性格だ。
よもやと思った。駆け付けて検分した、おはたの躰に残されていたのは。
「確かに、太刀筋が彼奴のものであった。わしが検分したゆえ、誤りはない」
時苧が顔を歪めた。
「……忍ぶに、主君もしくは棟梁からの指示以外での殺傷は許されておらぬ。
わしは直ちに一郎太を吉蛾衆に取り押さえるように命じたが、一郎太は吉蛾衆すら切り捨て何処へと消えた」
「……」
草太は初めて聴く話に茫然となった。
忍ぶが冷徹であることは、草太が誰よりも知っている。
任務の為には、人殺しも策略も裏切りも厭わぬ集団。
だが、あくまで任務以外では人を弑してはならぬ、と厳しく戒められている。
任務の為に、己が判断で人を殺めることはある。
だが、普段。
任務についてない時の殺傷は、死罪と定められていた。
無論、私憤であっても考慮はされた。
だが、殺傷能力の高さに、忍ぶではない領民たちよりも刑量は重く設定されていたのだ。
『申し訳ござらぬっ』
時苧は主君に土下座した。
『棟梁の儂が死して、この不始末の詫びを致す処でござる。
が、不肖の息子をこの手で斬り殺さねば、死に切れませぬ。
#彼奴_きゃつ__#もこのような事をしでかし、死を覚悟しているかと。
どうぞ儂を棟梁の任より解き放ち、野に出て彼奴の捕縛』のお許しを賜りたく……!』
棟梁の息子で、次代の棟梁と目されていた男。
誰が犯したよりも厳罰は免れなかった。
が、城主は。
『おけ。あの一郎太が、考えなくあのような事をしでかすとは思わぬ。
仔細あっての事であろう。
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