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第一部 再興編
縺れた縁(2)
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「殿は御赦しくだされたが。
一族の者を、息子を従い得なかった不甲斐なさでわしは吉蛾の棟梁を辞した。
そして息子たちともども、瘤瀬の里へ蟄居した」
それで合点がいった。
なぜ、病人でも末期の者や異形の者しかいない瘤瀬に、元々時苧一家が暮らしていたのか。
年寄りでも頑健な祖父が、年若い二人の叔父達が。
そして里人の会話の端々から、吉蛾の次期棟梁と目されていたらしい父も。
ましてや異形の者でない、健やかな子供の自分や菜をですら。
里に降りることも許されず、ひっそりとこの里で暮らしていたのか。
瘤瀬での暮らしを満喫していた草太にも、不思議であったのだ。
なにか、科を犯したのであろうかと考えたこともあった。
「伯父貴がそのような大罪を犯していたとは……」
凶行から暫くして。
お館となられた若君と笹や、そして太郎一と小篠の二組の夫婦たちの祝言が挙げられた晩。
一郎太がおはたに嵌められた事実を、太郎一は小篠から聞きだした。
おはたは、巧みに小篠を誘い出し、一郎太との密会を垣間見させるように謀ったのだと。
『いち兄様があんな女と……っ』
小篠が唇を噛んだ。
死して尚、おはたの名は口に出すのも汚らわしいようだった。
それも仕方のないことであった。
おはたという娘の暮らしぶりや性格は、だらしのないものであった。
その評聞は、周囲の娘たちを遠巻きにさせるに充分なものだった。
男達は、彼女を浮かれ女と呼んで遊び女として扱っていたのだから。
しかし太郎一は兄があのような凶行を起こしたことに納得していなかった。
おはたという娘は、一郎太が伴侶に望むような人柄とは、到底思えなかった。ゆえに、二人の祝言には疑問を抱いていたのだ。
里では折々、女達の共同作業がある。機織り場に、おはたはいた。
『おはたさんが、”いち兄様を必ず手に入れてみせる”っていつも言っていたわ』
小篠は忌まわしそうに言った。
武芸に秀で若君の信望厚く、人柄も誠実であった、時苧の息子たち。兄弟は、望めばそれこそ、城下の娘の誰とでも縁組できたのだ。
『私達、おはたさんのような方をいち兄様が相手する筈ないって思っていたから……』
忌々しいと思いながらも、色狂いの女の戯言だと誰も本気になどしてはいなかった、ということだ。
しかし、小篠は、それが誤りだったと痛烈なしっぺ返しを喰うことになる。
一族の者を、息子を従い得なかった不甲斐なさでわしは吉蛾の棟梁を辞した。
そして息子たちともども、瘤瀬の里へ蟄居した」
それで合点がいった。
なぜ、病人でも末期の者や異形の者しかいない瘤瀬に、元々時苧一家が暮らしていたのか。
年寄りでも頑健な祖父が、年若い二人の叔父達が。
そして里人の会話の端々から、吉蛾の次期棟梁と目されていたらしい父も。
ましてや異形の者でない、健やかな子供の自分や菜をですら。
里に降りることも許されず、ひっそりとこの里で暮らしていたのか。
瘤瀬での暮らしを満喫していた草太にも、不思議であったのだ。
なにか、科を犯したのであろうかと考えたこともあった。
「伯父貴がそのような大罪を犯していたとは……」
凶行から暫くして。
お館となられた若君と笹や、そして太郎一と小篠の二組の夫婦たちの祝言が挙げられた晩。
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おはたは、巧みに小篠を誘い出し、一郎太との密会を垣間見させるように謀ったのだと。
『いち兄様があんな女と……っ』
小篠が唇を噛んだ。
死して尚、おはたの名は口に出すのも汚らわしいようだった。
それも仕方のないことであった。
おはたという娘の暮らしぶりや性格は、だらしのないものであった。
その評聞は、周囲の娘たちを遠巻きにさせるに充分なものだった。
男達は、彼女を浮かれ女と呼んで遊び女として扱っていたのだから。
しかし太郎一は兄があのような凶行を起こしたことに納得していなかった。
おはたという娘は、一郎太が伴侶に望むような人柄とは、到底思えなかった。ゆえに、二人の祝言には疑問を抱いていたのだ。
里では折々、女達の共同作業がある。機織り場に、おはたはいた。
『おはたさんが、”いち兄様を必ず手に入れてみせる”っていつも言っていたわ』
小篠は忌まわしそうに言った。
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『私達、おはたさんのような方をいち兄様が相手する筈ないって思っていたから……』
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しかし、小篠は、それが誤りだったと痛烈なしっぺ返しを喰うことになる。
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