フリー台本製作所

Y.夕空

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きらきら星 男2(変更可能)

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登場人物
・ユウ:男想定・学生・モノローグは彼
・ソラ:男想定・学生




ーーー




暗い。暗い。怯えるほどに暗い。
足元はひんやりとしているのに、頬は生暖かい。
不気味な夜だった。
普段と同じ格好で、同じ時間帯、同じ場所に来ているのに。
どうしてこんなにも波の音に恐れを抱くのか。

ソラ「どーしたの。」

君と二人なら何処へでも行ける気がしていたんだ。
そう、何処へでも。

ユウ「別に、なーんにも。」

嘘吐き。




ーーー




ソラ「トゥインクル トゥインクル リールスター
ハウ アイ ワンダー ワッチュー アー」

静かな教室。午後の蒸し暑い風。カタコトのきらきら星。それを黙って聞いている僕。

ソラ「アッパーバーブ ザ ワールド ソウ ハイ
ライク ア ダイヤモンド イン ザ スカイ
トゥインクル トゥインクル リールスター
ハウ アイ ワンダー ワッチュー アー」

何気ない日常の風景。

ソラ「ユウく~ん。今日のきらきら星は何点でしょうか。」

ユウ「十点。」

ソラ「十点満点中!?」

ユウ「百点満点中。」

ソラ「あっちゃ~。」

放課後の解放感に包まれながら、グダグダと時間を浪費する。

ソラ「その辛口採点、ど~にかなりませんかねえ。」

ユウ「ほら、そろそろ帰ろうぜ。」

ソラ「無視!?無視ですか!?」

ユウ「用意終わったし、もう帰るからな。」

ソラ「早いって~。待って!おいてかないで!」

ユウ「ハイ無視無視。」

ソラ「ちょっと~??」

それだけの日々だ。それだけの日々にとても満足していた。
僕は日常を愛している。




ーーー




ソラ「あつはなついなあ。」

ユウ「午後は紅茶だなあ。」

ソラ「北海道はなついかねえ。」

ユウ「沖縄には行きたくねえ。」

ソラ「激しく同意~。」

部活動もない僕たちは、海沿いの道をゆったりと進む。
潮風が髪に張り付くので決して心地の良いものではなかったが、二人で過ごすこの時間が好きだからあまり気にはならなかった。

ソラ「校長の話長かったね~。」

ユウ「長いわりに内容が薄いんだよなー。」

ソラ「ね~。どうせなら道化にでもなったつもりで十分だけでも面白い校長を演じてほしいよ。話の途中で寝るなっていうなら、聞いてもらえる努力をしてから言ってほしいよね~。」

ユウ「良いこと言うじゃん。」

ソラ「だろ?」

君はにやりと笑って見せる。それに僕も笑い返す。平和な日常だ。

ソラ「夏に飲む炭酸ほど美味しいものはないよね。」

ユウ「夏にわざわざ辛い料理食べに行くの、理解できん。」

ソラ「今この瞬間だけは、冬になってくれって思うんだよね。」

ユウ「そして冬になると、早く夏よ来いと願う。」

ソラ「難儀なものですな~。」

軽口が弾む、弾む。
くるくると変わる話題に、次々に返されるジョーク。
ケラケラと笑う君があまりにも楽しそうだったから。
このまま時間が止まれば良いのに、なんてらしくもないことを考える。

ふと、ぺちゃくちゃと喋っていた彼の足が止まった。
僕も遅れて足を止める。
急にどうしたのだろうかと振り返ろうとしたその時。

ソラ「約束。」

凪いだ声だった。

ソラ「忘れてないよね。」

遠くの方でさわさわと木々が揺れる。動作を止めた首のあたりから、つーっと汗が伝うのを感覚が追った。むわりと夏が臭う。無言が、痛い。

ユウ「もちろん。」

気づけば僕は答えていた。いつも通りの動作、いつも通りの表情、いつも通りの軽い言葉で。視界に映った君はそれこそいつものように、

ソラ「なら良し。」

そう言ってまた歩き出した。遅れて僕もゆっくりと歩き出す。
暑さのせいだろうか。喉が渇く。日差しが、刺さる。




ーーー




ソラ「トゥインクル トゥインクル リールスター
ハウ アイ ワンダー ワッチュー アー」

暗い。暗い。怯えるほどに暗い。
足元はひんやりとしているのに、頬は生暖かい。
不気味な夜だった。
普段と同じ格好で、同じ時間帯、同じ場所に来ているのに。
どうしてこんなにも波の音に恐れを抱くのか。

ソラ「どーしたの。」

分かりきった答えだった。だって、僕は今震えている。
どうにか噛み殺そうとして、素直でいようとして、じっとしていたかった。
そんな僕の意思を嘲笑うかのように、嘘吐きは

ユウ「別に、なーんにも。」

綺麗な横顔で笑うのだ。




ーーー




ちゃぽん。
足の先から確かな感覚が伝わる。温かいのか冷たいのかはよく分からない。

ソラ「う~ん、気持ちい~。」

隣からはしゃいだ声が聞こえる。ばしゃばしゃとうるさい。だけれど、緊張は増すばかりで。
一通りはしゃぎ終えたのだろうか。波が落ち着きを取り戻す。

ソラ「じゃあ、行こっか。」

目の前に左手が差し出される。ああ、来てしまった。
迷う素振りを見せず、ゆっくりと、本当にゆっくりと時間をかけて右手を重ねた。
未だ喉を震わせられずにいる自分が情けなくて、情けなくて。




ーーー




一歩、また一歩。引っ張られるようにして進んでゆく。
少しづつ浸食していく海水。身体が重くなる。冷えていくのが解る。
縋りたい。何かに縋りたい。右側を見ることができない。
はくはくと口を動かす。見られてはいないだろうか。
今自分は何に恐怖しているのだろうか。
分からない。分からない。分からなくて怖い。
腰に到達した。まだ腰か?視線が波に溺れるのはいつだ。
これは永遠か。そんな訳ないだろう。ちょっと待て、もう腰なのか?
焦る。思考が乱される。待ってほしい。嫌だ。
進まないで。おいていかないで。

ユウ「こわい。」

止まる。全てが止まる。
足も、呼吸も、思考も、右手から感じていた君の力も。

ソラ「なに、いってるの。」

止まる。

ソラ「なに、いったの。」

君の足が、止まる。

ソラ「言いなよ。なんて言った?今なんて言った?答えなよ、ねえ。」

ああ、ごめんなさい。

ユウ「かえりたい。」

ばちん。弾かれる。頬が、、右手に。

ソラ「なんで。どうして。」

ユウ「・・・。」

ぐいっと右手が持ち上がる。君は手を振り解こうとする。僕は必死になって繋ぎ止める。

ソラ「離して。」

ユウ「嫌だ。」

ソラ「離せってば。」

ユウ「嫌だ。」

ソラ「離せって言ってんだろ!」

ユウ「嫌だ。嫌だ!嫌だ!!」

無駄な足掻きだ。悪いのは僕だ。分かってる。分かってる。でも。

ユウ「君が死ぬのは嫌だ!!」

ソラ「・・・なんで。」

ばしゃり。彼の右手が海水に浸かった。肩で息をする。
荒い呼吸が邪魔だ。ああ、なんて情けない。

ソラ「信じてたのに。信じてたのに、信じてたのに。」

口に出した言葉は、本当に最低のものだった。

ソラ「綺麗事言って、良い人間のふりして、逃げようとして。僕が死ぬのは嫌だって?馬鹿言うなよ。自分が死にたくないだけのくせに。」

ああ、僕はなんて、なんて。

ソラ「最低。」

狡い。狡いのだ。ここで拒めば君は、少なくとも今日は死ぬことができないと分かっていた。君に二度目を行えるだけの気力はもう無いのだと分かっていた。

ソラ「最悪だよ。三文芝居に踊らされてたって訳だ。僕は全てを伝えて、君に託したのに。運命を預けたのに。騙してたんだ。滑稽だと嘲笑ってたんだ。そうでしょ?」

弁明など、必要とされていない。

ソラ「おまえなんか。おまえなんか、死んじまえ。」

ああ、今日はなんて、なんて素敵な曇り空。




ーーー




ユウ「トゥインクル トゥインクル リールスター
ハウ アイ ワンダー ワッチュー アー」


静かな教室。午後の涼しげな風。わざとらしいカタコトのきらきら星。空白の余韻。

ユウ「アッパーバーブ ザ ワールド ソウ ハイ
ライク ア ダイヤモンド イン ザ スカイ」

何気ない日常の風景。

ユウ「トゥインクル トゥインクル リールスター
ハウ アイ ワンダー ワッチュー アー」

君は、今日も学校に来なかった。
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