魔王軍のゴールデンウィーク

daisuke

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魔王軍のゴールデンウィーク

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「デスキュール様、ちょっとよろしいでしょうか?」

魔王城の「玉座の間」で、私——鈴木タクミ——は魔王軍総司令官デスキュール様に向けて深々と頭を下げた。

「ふむ、何だタクミよ。また何か異世界の知恵を授けてくれるのか?」

デスキュール様は王座に座ったまま、興味深そうに私を見つめていた。

「はい。令和の日本から転生して早三年、魔王軍の雑用係として日々奮闘しておりますが、今日は是非とも導入していただきたいシステムがございます」

「ほう、それは何だ?」

「ゴールデンウィークです!」

「ゴールデン...ウィーク?」

デスキュール様の眉が怪訝に上がる。

私は用意したプレゼン資料を取り出し、魔力で空中に投影した。

「はい!日本では毎年春に連休があり、国民が休息をとることで、その後の生産性が飛躍的に向上するのです!」

「ふむ」

「最近、魔王軍の疲労感が蓄積しており、勇者討伐の効率が下がっていることをご存知でしょうか?データによりますと、過去三ヶ月で勇者撃退率が23%も低下しています」

私は続けた。

「しかし、一週間の休暇を与えれば、モンスター達の士気は回復し、勇者討伐の成功率は推定42%上昇するはずです!」

デスキュール様は黙って私のプレゼンに聞き入っていた。

資料の最後に、私は決め台詞を放った。

「私のいた世界では『働き方改革』が叫ばれていました。魔王軍こそ、モンスターにやさしい職場環境を実現すべきではないでしょうか!」

デスキュール様は立ち上がり、大きく頷いた。

「素晴らしい!我が魔王軍にも『ゴールデンウィーク』を導入しよう!明日から一週間、全軍に休暇を与える!」


⚔️⚔️⚔️⚔️⚔️ ⚔️⚔️⚔️⚔️⚔️


一方その頃——

「勇者様、何か様子がおかしいと思いませんか?」

聖騎士のアルトリアが不安そうに周囲を見回した。

「確かに...」

勇者レオンは頷きながら言った。

「このダンジョンに入って既に三時間経つが、モンスターが一体も出てこないのは奇妙だな」

「罠かもしれませんわ」

魔法使いのメイが警戒心を露わにした。

一行が進むにつれ、ダンジョンは静まり返っていた。

通常なら骸骨兵士やスライムの群れがいるはずの場所に、モンスターの姿はなく、代わりに「休暇中」と書かれた小さな札が至る所に掛けられていた。

「これは一体...」

角を曲がったところで、彼らはようやく一体のオーガと遭遇した。

「おお!モンスター発見!」

盗賊のジンが叫んだ。

しかし、そのオーガは戦闘態勢ではなく、鎧を外し、麦わら帽子をかぶり、手には地図らしきものを持っていた。

「おっ、冒険者か。悪いが今日は戦えねぇよ。ゴールデンウィークでな、海に行く予定なんだ」

「ゴールデン...ウィーク?」

勇者レオンは困惑した様子で尋ねた。

「知らねぇのか?魔王様が導入した新制度さ。魔王軍全体が休暇を取るんだ。じゃあな!」

そう言うとオーガは軽く手を振り、颯爽と彼らの脇を通り過ぎていった。

勇者一行は呆然と立ち尽くしたまま、互いに顔を見合わせた。

「ならば...このままダンジョンの奥へ...?」

彼らは無抵抗のままダンジョンを突破し、ついに最深部へとたどり着いた。

そこには巨大な宝箱が鎮座していたが、その上には大きな貼り紙があった。

『ゴールデンウィークにつき休業中。宝は持ち帰れません。来週以降にお越しください。—魔王軍』

勇者レオンは肩を落とした。

「ここまで来て...何もないとは」

「でも、戦わずに済んだのは良かったのでは?」

聖騎士アルトリアが言った。

「そうね...」

魔法使いのメイが同意する。

「私達も休暇を取りましょうか?」

「おっ、それいいな!」

盗賊ジンが目を輝かせた。

「海、行く?」

勇者一行は笑いながら、何の成果もなく、しかし誰一人傷つくことなくダンジョンを後にした。


⚔️⚔️⚔️⚔️⚔️ ⚔️⚔️⚔️⚔️⚔️


「デスキュール様、ゴールデンウィーク導入の効果報告です」

休暇明け、私は再び魔王の前に立っていた。

「ふむ、どうだった?」

「予想を上回る成果です!モンスター達の満足度は97%向上し、勇者一行もダンジョンを無傷で通過。つまり、我々も彼らも何の損害もなく一週間を過ごせました!」

デスキュール様は満足げに微笑んだ。

「素晴らしい、タクミよ。次は何を提案してくれるのだ?」

私はニヤリと笑った。

「次は『お盆休み』についてご提案したいと思います...」

前世の記憶を活かして、異世界でも働き方改革を推し進める私の冒険は、まだ始まったばかりだった。

【糸冬】
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